スペインの赤ワイン、特に熟成タイプと言えば、テンプラニーリョ種のワインが有名です。DOCa.リオハ、DO.リベラ・デル・ドゥエロを中心に高品質な高級ワインも数々あります。スペイン各地で昔から栽培されるため、同じテンプラニーリョでも、地方によって呼び方が異なるほど。なんと38ものDO.で認証されるスペインワインの代表的な品種です。
目次
地方によって呼び方が違う“テンプラニーリョ”
(色づく前のテンプラニーリョ)
呼び方は、カタルーニャ地方では、カタルーニャ語で“ウル・デ・リェブレ”(うさぎの目)と呼ばれ、カスティーリャ・イ・レオン地方のDO.トロでは、ティンタ・デ・トロ、同じくDO.リベラ・デル・ドゥエロでは、“ティント・フィノ”または“ティンタ・デル・パイス”、カスティーリャ・ラマンチャ地方のDO.ラマンチャでは“センシベル”。ポルトガルでも栽培されている品種ですが、ポルトガルでも地方によって“アラゴネス”“ティンタ・ロリス”などと呼ばれています。
スペインでテンプラニーリョが多く栽培されている理由
なぜこんなに様々な地方で栽培されているかというと、理由は3つ。ひとつは、様々な気候に適応しやすい強い品種だから。特に寒さに強いのが特徴です。ふたつめは、エレガントに熟成する品種だから。ワイナリー、醸造家にとっては、熟成に向くと分かっている品種のぶどうでトップカテゴリーのワインを作りたいはずです。みっつめは、木樽での熟成に適した品種でありながら、熟成なしの早飲みタイプでもフレッシュでいきいきとしたワインになるから。
さまざまな気候に対応でき、いろんなタイプのワインが作れるということで、各地で栽培されています。また地域によってまるで別の品種のワインのように雰囲気が異なります。テンプラニーリョワインの有名どころの3つのDO.ごとにその特徴をご紹介します。
DOCa.リオハのテンプラニーリョ
(DOCa.リオハのワイナリー)
DOCa.リオハは、サブゾーンによって気候も土壌もかなり異なります。リオハ・アルタは海抜500メートル、最も高いところでは700メートルにも及びますが、リオハ・オリエンタルは250メートル。DOCa.リオハの西部のリオハ・アルタは大西洋の気候の影響を受け、東部のリオハ・オリエンタルは地中海の影響を受けた温暖な気候です。高地の畑のブドウは酸味が高く、温かい風の影響もあり、フレッシュな果実の風味を特徴とするワインになります。北部にあるリオハ・アラベサのワインは、デリケートで香り高いと言われます。リオハ・アルタはフルボディ、リオハ・オリエンタルは、ガルナチャ種とブレンドしたワインが特徴です。
DOCa.リオハの熟成ワインは、伝統的にアメリカンオークで熟成させます。そのためココナッツやバニラのような風味がすると言われています。
DO.リベラ・デル・ドゥエロのテンプラニーリョ
(DO.リベラ・デル・ドゥエロのブドウ畑)
DO.リベラ・デル・ドゥエロは、海抜850メートル。夏は40度を超える暑さ、冬はマイナス20℃になることも。この寒暖の差が素晴らしい品質のワインを生むと言われています。
DOCa.リベラ・デル・ドゥエロのワインは、カベルネ・ソーヴィニョンやメルロー、マルベックを少しブレンドすることもあります。
熟成はフレンチオークが主流で、バニラやチョコレートの風味がすると言われます。DOCa.リオハと比べると果実味が、しっかり熟した果実の風味がします。
DO.トロのテンプラニーリョ
(DO.トロのブドウ畑)
海抜600メートルから700メートル。とても暑い気候です。岩や石、粘土質の土を含む沖積層の土壌。個の土壌のおかげで水分を蓄えられます。激しい大陸性気候に少し大西洋気候の影響を受けています。などは40度を超え、冬はマイナス10℃、日照時間は2500時間を超えます。トロのテンプラニーリョワインは、アルコール度が高く酸味は低く、濃い色をしています。
おすすめのDOCa.リオハワインは?
このように同じテンプラニーリョのワインでもDOによってかなり異なります。
スペイン人にとってなじみのある典型的な熟成赤ワインは、例えばリオハ・アルタの「ロペス・デ・アロ」。鉄道の開通とともにリオハワインのメッカとして栄えたアロの街のワイナリーのものです。ほどよい酸味を保ちながら、しっかりしたボディでありながら、酸味とアルコールのバランスがいいワインです。