ジュニパーベリーをはじめとした、薬草やフルーツなど、さまざまなボタニカルのフレッシュでフローラルで爽やかな香りが魅力の蒸留酒【ジン】
そんな中で今回は異色な特徴を持つジン【ジンスパイア】をご紹介いたしましょう
目次
ウイスキーとジンの共通点
さて今回ご紹介するジンスパイアはウイスキーで有名な【ニッカウイスキー】から販売されています
ジンスパイアを理解するにはウイスキーについての知識が少しだけあると分かりやすいので、軽く触れていきたいと思います
まずジンもウイスキーも共通点として原料には穀物が使われているという点があります
ご存知の方も多いかと思いますが、ウイスキーの原料は大麦麦芽(モルト)をメインとして使われています。その他コーンなどの穀物(グレーン)から作られるグレーン原酒とブレンドされれば【ブレンデッドウイスキー】となり、モルト原酒のみなら【モルトウイスキー】になるわけです
対してジンは穀物をベースとした中性スピリッツ(際立った特徴のない純度の高い蒸留酒)に蒸留の過程でボタニカルを浸漬したり蒸気を当てたりして、香気成分をベーススピリッツに付与していきます
蒸留酒というのは発酵している原料から【蒸留】という過程を経て、アルコールを抽出することで出来上がるお酒になります
その為、原料である穀物を発酵させる必要があります
アルコールは酵母が糖を食べると二酸化炭素とアルコールに分解します
この一連の流れを一般的に発酵と呼びます
ウイスキーの場合、原料の大麦を発酵させなければならないのですが、大麦と酵母を組み合わせただけでは発酵が始まりません
というのも、大麦はそのままの状態では発酵に必要な【糖】がほとんどありません
大麦から糖を得るためには、まず水に浸漬して【発芽】させます
発芽させる事で初めて【モルト】や【モルテッドバーレイ】などと呼ばれます
発芽すると大麦のほとんどを占めていた【デンプン】が成長するために【マルトース】や【グルコース】などの糖に変わっていきます
しかしこのままでは大麦は成長するための栄養としてどんどん糖を消費していってしまいます
そこで蒸留業者はちょうど良いところで成長を止めるために、【ピート】と呼ばれる泥炭を焚き、その煙でモルトを乾燥させました
この工程を経たウイスキーはスモーキーな風味を纏います
と、これがモルトを原料とするための流れです
こうしてデンプンから変化した糖を使って酵母がアルコールを生み出していくわけです
さて、軽くと言いながらずいぶん遠回りをしましたが、これでジンスパイアがどのようなジンか説明する準備が整いました!
スモーキーなジン
ジンとは上記の通り、際立った個性の無い中性スピリッツに、ボタニカルの香りを付与し、その香りや味わいを楽しむ蒸留酒です
ではジンスパイアはどんな個性があるのでしょうか
早速飲んでみましょう
注いだグラスからはハーバルな清涼感のある香りと穀物由来の馴染みのある甘い香り、そしてなんといってもスモーキーなピート香が感じられます
改めて口に含むとジュニパーの爽やかさとモルトの甘い味わいを感じられます
そして直後に、他のジンではそうそう味わえないスモーキーさが広がります
このスモーキーさはメインのボタニカルに【ヘビーピートモルト】が使われている事に由来します
ニッカウイスキーでは【余市】など、ピートの香りが特徴のウイスキーもいくつかあります
そういったウイスキー作りで使われるヘビーピートモルトをベーススピリッツに浸漬し、しっかりとフレーバーを抽出します
ここが面白いところで、ウイスキーの作り方がなんとなく頭に入っていると、このモルトからウイスキーの原酒を作って、それをベースにしても良いのでは?という考えがよぎったりしますが、モルトをボタニカルとして浸漬するという、ジンスパイアはあくまでもジンだという、メーカーの強いこだわりを感じます
ジュニパーの爽やかさとピーテッドモルトのスモーキーさ、穀物由来の旨みや甘み、コクや塩気が調和した、この価格帯ではかなり複雑みを感じる逸品となっています
複雑、と書きましたが、ジュニパーとピートと穀物の甘みはハッキリと分かれており、蒸留酒を飲み慣れていなくても難しいと感じることなく楽しめると思いますよ
少し加水すると穀物の甘みが目立つような印象です
ウイスキーに似た、ピート由来のスモーキーさが特徴ですが、ウイスキーと違って樽熟成をしていないので、樽由来のバニラなどのスパイスのような甘さは感じません
しかしニューメイクやニューポットなどと呼ばれるウイスキーの原酒とも違う味わいで、本当に興味深いジンです
オススメの飲み方
強いピートの風味を存分に楽しみたい方はストレートで
水と1:1のトワイスアップにするとアルコールの灼熱感が和らぎ、穀物のふくよかな甘みを楽しむことができます
ロックにするとジュニパーの清涼感が増すような感じがして爽やかに飲むことができます
ソーダ割りにすると爽快感が生まれて食事に合わせやすくなりますよ
スモーキーさを生かして、燻製したものと合わせるとさらに美味しいと思います
ウインナーやベーコン、燻製チーズもいいですね
まとめ
ハーバル、モルティ、スモーキーが三位一体となった、かなり珍しい味わいのジンスパイア
それなりの金額を出すと、複雑みを感じられる蒸留酒は色々とありますが、このジンスパイアは¥2,000以下で買えるにも関わらず、かなり面白みのある味わいとなっています
贅沢、ともまた違う感じではありますが、普段と違う味わいのジンを手軽に楽しめるのは評価が高いポイントですね
日々の晩酌にもオススメなのでぜひ試してみてください!