乱痴気騒ぎをする人、パーティーピーポー、いわゆる「パリピ」などがショットグラスで一気に飲んで楽しむお酒のアイテムは、時代とともに変化しています。ハーブ系リキュールのイエーガーマイスターやコカレロ、イチジクのリキュールであるクライナーファイグリングなど、さまざまな種類がありますが、やはり【テキーラ】が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか?
一気飲みして酔うための酒というイメージが強いテキーラですが、その歴史や本来の価値が徐々に認知されつつあります。今回は、日本でも最も有名なブランドである【サウザ】を取り上げ、テキーラとは何なのかを紹介したいと思います。
テキーラについての説明が少々長くなりますがお付き合いいただけると幸いです。
目次
テキーラの生産地、原材料、製法
まずテキーラはどこで作られているお酒かというと、ご存知の方も多いとは思いますが【メキシコ】で作られています
次に原材料はアロエに似た多肉植物で、現地では【アガベ】や【マゲイ】と呼ばれている、【リュウゼツラン】を原材料としています
メキシコといってもメキシコ国内であればどこでも良いというわけではなく、【タマウリパス州】【ナヤリット州】【ハリスコ州】【グアナファト州】【ミチョアカン州】の5州に限られます
さらにアガベは200を超える品種が存在しますが、その中で【アガベ・アスール・テキラーナウェーバー】と呼ばれる品種を原材料としなければなりません
下の写真は日本の江ノ島、サムエルコッキング苑で見る事ができるアガベです
品種は【アガベ・アメリカーナ】ですので、テキーラ生産に使われるものではありませんが、外観は似ています
次に製法
テキーラはラムやウイスキーと同じ蒸留酒になります
蒸留酒とは簡単に説明すると
まず原料(穀物や果物など)を発酵させ、酵母の働きで糖をアルコールと二酸化炭素に変換します。発酵が完了した後、発酵液を蒸留器で加熱し、アルコールを含む蒸気を冷却して液体として集めます。この過程で、アルコールが他の成分から分離され、濃度が高くなります。最後に、抽出したアルコールを水で希釈し、必要に応じて熟成や調整を行って完成するのが蒸留酒です
原料であるブルーアガベをどのように使うかというと、アガベの中心にある球茎【ピニャ】を使います
アガベは生涯に一度だけ花を咲かせますが、開花には自身に含まれる糖が大量に消費されてしまいます
早咲きなどを防ぐため【ヒマドール】と呼ばれる栽培職人が適切で完璧なタイミングで収穫をします
収穫されたピニャは蒸し焼きにします
蒸し焼きにすることで、複合炭水化物が小さな糖に分解され、発酵が容易になる為です
蒸し焼きの方法は、地中に円錐形の石窯を作る伝統的な方法や、金属製の加圧滅菌機で加熱する現代的な方法など様々です
石窯を使う伝統的な方法では生産地特有の木で作った薪が使われる事が多く、スモーキーな香りや、特有木の個性的な香りが、出来上がるテキーラに良い影響を与えます
蒸し焼きにされたピニャは圧搾、水洗い、濾過を経てシロップとなります
現代では圧搾機が使われることが殆どですが、タオナと呼ばれる大きな石臼を家畜に曳かせたり、木槌で叩き潰したりする伝統的な方法もあります
圧搾が終わると【バガーソ】と呼ばれる搾りカスを除去し、木製やステンレス製の容器に入れて発酵をしていきます
発酵の期間は容器のサイズや素材によって変わりますが、1日〜7日の期間になるようです
大量生産をする大規模蒸留所では香りや味の均一化をするため、厳選された酵母を使う事が多く、伝統的な方法では天然酵母によって自然発酵をします。殆どの場合【サッカロマイシス・セレビシエ】という天然酵母によって発酵が進んでいきます
発酵を終えるとアルコール度数4%〜5%の糖液が出来上がります。これを【ウォート】や【モスト】と呼びます
糖液が完成するといよいよ蒸留が始まります
NOM(Norma Oficial Mexicana)というメキシコ公式規格によって、蒸留回数は2回以上と規定されています
1回目の蒸留でモストを約95℃で100分間加熱し、度数を25%まで上げます
この1回目の蒸留で抽出されるものを【オルディナリオ】と呼びます
2回目の蒸留では3〜4時間かけ度数を約55%まで上げます
この2回目の蒸留で出来上がったものを【プラタ】または【ブランコ】と呼びます
プラタ、ブランコを脱塩素水で、最低35%最高50%まで希釈します
現地では38%ものが多く消費され、40%以上のものは主に輸出用として生産されています
大手の大規模蒸留所は連続式蒸留で作られる事が多く、小規模生産の蒸留所は単式蒸留や回分式蒸留機を使ったりします
熟成による分類
テキーラはNOMによって色や熟成度合いで5種類に分類されています
①ブランコ/プラタ
②ホヴェン/オロ
③レポサド
④アネホ
⑤エクストラアネホ
①のブランコ/プラタは未熟成、もしくは2ヶ月未満の熟成で作られているもの
熟成はステンレスタンクやオーク樽などが利用されます
②のホヴェン/オロはカラメルやオークチップで着色をしている、もしくは後述のレポサド以上の熟成品をブレンドしているもの
③のレポサドは2万リットル以下の樽で2ヶ月〜12ヶ月熟成したもの
④のアネホは200〜600リットルの政府承認樽で1年以上熟成したもの
⑤のエクストラアネホは200〜600リットルの政府承認樽で3年以上熟成したもの
メキシコ国内で流通しているテキーラは60%がレポサドと言われています
また、熟成に関してですが、理論的には数十年熟成が可能であるものの、温暖な気候であるため、スコッチウイスキーなどと違い4年〜5年の熟成が最高の風味を出すと評する人が多いようです
また上記5つの分類とは別に、アガベ100%で作られているか否かでも分類される事があります
アガベ100%のものは一般的に【プレミアムテキーラ】や【100% de Agave Tequila】と呼ばれます
そうでないものは、原料のうちアガベの糖を51%以上使用し、残りの49%は別の糖(グルコースやコーンシュガーなど)を使用した通称【ミクスト】です
このミクストに関しては法的な定義はありませんが、プレミアムテキーラと区別するために使われることのある呼称です
ミクストはメキシコ国内では殆ど消費されず、輸出用の大量生産品とされていますが、蒸留所、生産者が目指す味のために意図して作られるミクストのテキーラも存在するようです
以上がテキーラの生産地、原材料、製法についての簡単なまとめです
長くなってしまいましたが、いよいよ【サウザブルー プラタ】を試していきたいと思います
サウザ ブルー プラタの味わい、飲み方
グラスに注ぐと、その色は無色透明で、液体はさらりとしており、粘度はほとんど感じられません。香りはアガベスピリッツ特有のもので、他の何かに例えにくい、表現が難しい香りです。しかし、甘く温かみがあり、異国情緒あふれる魅力があります。
口に含むと、香りから期待を裏切らない優しい甘さが口いっぱいに広がります。ハーバルな冷涼感やほのかな柑橘の風味も感じられます。熟成されていないスピリッツにもかかわらず、コクがあり、まろやかな口当たりで飲みやすいです。
味わいがしっかりしているので、ストレート以外でも楽しめます。ソーダ割は食事と一緒に爽やかに楽しめますし、グレープフルーツジュースとソーダで割ったミクストドリンク【パロマ】も、このスピリッツの持つ柑橘の香りと非常に相性が良いでしょう。
テキーラの特徴と言えるかもしれませんが、樽熟成をしていないタイプにしては、甘みやコクがしっかりと感じられるため、個人的にはやや飲み飽きしてしまう感もありました。しかし、2,000円台で購入できるスピリッツとしては非常に贅沢な味わいで、100%アガベのテキーラは比較的高価なものが多い中、コストパフォーマンスに優れていると感じます。
流通も安定しており、初めてテキーラを試す方にはぜひおすすめしたいアイテムです
まとめ
テキーラはその独特な風味と多様な飲み方で、世界中で愛されているスピリッツです。熟成の有無やブランドによって幅広い異なる個性を楽しむことができます。ストレートで味わうのも良し、カクテルでアレンジするのも良し、テキーラはシーンに応じて様々な楽しみ方ができるお酒です。初めてテキーラを飲む方も、その奥深い味わいに魅了されることでしょう。
ぜひお試しください。