サトウキビに由来する原料としているラムというお酒は大きく3つに分類されています
砂糖を作った時の副産物としての「糖蜜」から作られる「トラディショナルラム」
ヴェスーやヴェソウと呼ばれる、サトウキビを絞ったジュースを原料とする「アグリコールラム」
サトウキビジュースをシロップ化したものを使う「ハイテストモラセスラム」
今回はフランス海外県マルティニークで、サトウキビジュースから作られる「アグリコールラム」をご紹介したいと思います
目次
鮮烈な風味
ラムといえばバカルディを思い出す方が多いのではないかと思います
お菓子作りにもよく使われているジャマイカ産のマイヤーズというラムも日本では有名です
これらは糖蜜を原料とするトラディショナルラムになります
どちらも非常に美味しいラムなのですが、今回ご紹介させていただくアグリコールラムは、味の方向性が全く違うものとなっています
トラディショナルに分類されるラムは、サトウキビに由来するもので味を表現するのなら、熟成の有無に関わらず「黒蜜」のような柔らかい甘みがあると私は感じています
一方、アグリコールラムはサトウキビが「植物」であることを思い出させるような鮮烈な風味で、これはトラディショナルラムでは感じられることはほとんどないと言ってもいいと思います
まさにサトウキビを丸かじりしたかのような強い風味。現代ではあまりサトウキビをかじったり、絞ったジュースを飲む機会というのが、生産地である沖縄などに行かないとあまりないかもしれませんね。他のもので例えるならセロリなどの香味野菜のような風味が感じられます
セロリが苦手な人、意外と多いと思います
なので、アグリコールラムを初めて飲むと、その強い風味に面食らってしまう人も多いようです
さらにアグリコールラムはアルコール度数50%前後のもの(特に熟成していない透明なラム)が多く、その度数の高さでも飲みづらさを感じてしまうかもしれません
しかし度数の高さや香味野菜のような鮮烈な風味に慣れると、ミネラルたっぷりの黒糖の甘みやボタニカル的な苦味や酸味など、たくさんの魅力が詰まっていることに気づくことでしょう
AOCによる品質の高さ
フランスではAOCと呼ばれる原産地統制呼称制度を農畜産物で採用している
AOCとはAppellation d'Origine Contrôléeの略で、日本語ではアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレと発音する事が多いようです
ワインで有名かもしれませんね。他にもチーズや野菜なども付与の対象となっています
アペラシオンとコントロレの間に地名を入れることで、この地域で適切な工程やルールを守って作られているという証明になるものです
例えばワインの産地で有名なボルドーならAppellation Bordeaux Contrôléeと表記されます
フランス海外県マルティニーク島で作られるアグリコールラムは、1996年11月5日にフランス海外県で初めてAOCを取得した、非常にクオリティの高いラムです
そもそもアグリコールラムはラムの世界生産量の5%に満たないとされており、さらにそのアグリコールラムの80%がマルティニーク島で作られているのです
マルティニーク島のアグリコールラムは世界のアグリコールラムを牽引している存在と言ってもいいでしょう
AOC取得には生産物によって様々な規定があり、それをクリアしなければなりません
例えば原料となるサトウキビの収穫は1月1日から8月31日までの間におこなう、蒸留にはクレオールコラムと呼ばれる、一部が銅製(もしくは完全に銅製の)小型の連続式蒸留器を使う、などといった細かい規定が数多くあります
つまり簡単に考えれば「AOCを取得している=品質が高い」と言ってもいいとは思うのですが、私としてはどちらかというと品質の高さを賞賛するよりも、一定の品質が約束されているという認識の方が良いのではないかと考えています
もっと噛み砕いていうと、「丁寧に作られていることが確約されている商品」だという事です
透明な、樽で熟成していないタイプのアグリコールラムはすでに述べた通りサトウキビの鮮烈な風味、そして透き通った甘さ、海を感じさせるミネラル感やみずみずしさが特徴的です
度数が高いものが多く、飲み慣れないとストレートではアルコールのキツさを感じてしまいますが、ゆっくりと時間をかけて飲むと樽で熟成したものとは一味違う、味や香りの複雑さを感じられます
また、暑い時期にはソーダ割りがとっても美味しいです
柑橘を添えるならレモンではなくライムがおすすめですよ
樽で熟成されている、色のついたタイプのアグリコールラムは、サトウキビの鮮烈な風味は残りつつも、木の甘い風味や香り、それぞれを感じつつも複雑に絡み合う、実に贅沢な味わいとなっています
ぜひストレートで、ゆっくりと味わっていただきたいです
少しクセの強いアグリコールラム。初めは苦手だと感じても、だんだんと深みにハマっていく人が多いと聞きます
新しいお酒に挑戦してみたいという方、アグリコールラムという未知の味に出会ってみませんか?