電車に揺られて、千葉外房へのんびり酒蔵訪問
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デイ・トリッパー
有給消化でまとまった休みを頂いてしまい、宿泊を伴う旅行でもと思っていたが、日頃からたまっている雑用をこなしているうちに、泊りがけの旅行おなんて行けそうもなくなってきてしまった。しかし、やはりどこかに行きたい!というわけで、東京からほど近い千葉は外房の酒蔵にデイ・トリップすることにした。
目指したのは木戸泉酒造。私の求める日本酒のテーマが、食事に寄り添ってくれるしっかりした酸味を持ち、しかも甘くないお酒。これを切り口に普段から色々なお酒を探していて、気になっていた酒蔵である。
最寄りは外房にあるJR大原駅。そしてこの駅はどうやらいすみ鉄道の駅でもある。
鉄道がお好きな方ならご存じであろう、いすみ鉄道は房総半島を走る第3セクターのローカル鉄道路線である。弱小ローカル線ゆえ、経営資金を捻出するために、様々なアイデアを実施し、度々メディアなどにも紹介されたりしている。
私も気になっていたので、もちろんこのデイ・トリップに含めることにした。
意外に遠い外房
時刻表をしっかりチェックし、朝も早くに自宅を出発。行きはJRのみで外房を目指す。しかし自宅のある東京23区西側からは思ったより遠い。車では何度も訪れたことがあるが、いざ電車で行くともっと遠い印象。総武線や内房線、外房線を乗り継いで、4時間近くかかった。おそらく山梨のワイナリー巡りの方が自宅から近いな。
さてこの大原という所、古くからの漁港の町らしい。駅から近くの漁港まで1キロくらいなので、まずは歩いてそこを目指す。
11時もまわっていたので、すでに港は静か。釣り客を乗せた釣り船が、何隻か戻ってきているくらい。でも潮の香りというのは良いもんだ。
近くの定食屋で早めの昼ごはん。漁港の定食屋といえばやはり刺身。水揚げされたばかりの刺身3種盛り。やはり鮮度は抜群。
自然醸造による「旨き良き酒」造り
今回のお目当て木戸泉酒造は大原駅のすぐ近く、歩いて5分ほどと非常に訪ねやすい場所にある。
酒蔵見学は実施していないが、蔵併設の売店があり、そちらで色々お話しながらお酒を品定めすることができる。
こちらの酒造りのモットーは、自然醸造による「旨き良き酒」造り。天然の生の乳酸菌を用いて仕込む、高温山廃酛というこの蔵独特の酒母造りで、麹菌・乳酸菌・酵母菌の3つがのびのび発酵する酒母造りを50年以上守り続けているのに加え、原料米から無農薬の自然農法米を100%使用したお酒なども造っている。
さらに古酒にも早い時期から取り組み、一番古いもので40年を超す酒が、今も熟成を重ねているそう。
食中酒として対応できる酸がしっかりした「AFS(アフス)」という代表銘柄もあるそうだが、お話を聞くとこちらは甘みもしっかりあるということで、私の好みに対してお勧めしていただいた2本をチョイス。1本は山田錦から造られる「純米醍醐」、もう1本は6年熟成酒。
醍醐の方は乳酸菌由来の酸をもつが、それほどのボリュームではない。軽やかな甘みがあり、ハーゲンダッツのアイスサンドと合わせてみたらなかなか良かった。アイスと日本酒合うね。そして熟成酒の方は濃い色調で、より好ましい酸味と厚みを持ち、こちらは食中からつまみまで、色々合わせられそう。
ほぼ電車に乗りっぱなし旅。
さて帰路に着こう。大原駅に戻り、今度はいすみ鉄道に乗車。1両編成のディーゼルカーが、ガタゴトとローカルな風景の中を走る。やはりこれを目当てに来ている観光客もチラホラ。周辺にはこれといった観光名所もなく、本当に乗っているだけ。ビール片手にのんびりと揺られる。
鉄道は房総半島を東西に突っ切るルート。半島のちょうど真ん中あたりで、東側を受け持ついすみ鉄道から、西の内房側を受け持つ京成グループの小湊鉄道にバトンタッチする。こちらもいすみ鉄道と似たような風情だが、印象的にはいすみ鉄道よりワイルドな感じ。森の中を抜けていく際、長い木の枝などが否応なしに車両にぶつかってくる。内房沿岸部に近づくにつれ普通の街並みになってくるが、内陸部は森のトンネルみたいな感じが多い。
これらの房総半島横断鉄道だけで3時間近くかかり、帰りは行きの4割増しくらいの時間をかけて帰宅。結局、ほぼ鉄道に揺られていただけの酒蔵旅でした。