行きつけで常温のお酒を飲むようになった。季節ものももちろん好きだけど、いつ飲んでも変わらない味、安心感というのも良いものである。その中でも試してみるようになったのが、日本酒を寝かした、いわゆる「熟酒」だ。
色、香り、味、全てが普通の日本酒とは違う。今回は、最近飲んだ熟酒をご紹介。これまでと違う日本酒を飲んでみたい方、ぜひお試しあれ。
目次
【1杯目】広島 竹鶴酒造 「秘傳(ひでん)」
竹鶴の定番酒。広島県内で一番最初に純米酒を出したのがこの「秘傳」らしい。まさに純米酒のパイオニア。ラベルには横山大観の「竹に鶴」が描かれている以外は余分な記載は全くなく、至ってシンプル。そこに自信を感じる。
ほんのりと黄色がかっているのが数年経っている証。抑えめの香りが熟酒らしい。
味はやわらかく、コクがあるのに飲み疲れない。思った以上に軽い舌触りでお米の旨みが広がったあと、若干の酸味によって後味がすっきり。まさにずっと飲んでいられる食中酒。
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日本酒は主に、香りと味で「薫酒(くんしゅ)」「爽酒(そうしゅ)」「醇酒(じゅんしゅ)」「熟酒(じゅくしゅ)」4つのタイプに分類する事が出来るが、熟酒は熟成による独特の色味(黄色や褐色)と、深い香味が特徴。
フルーツや花のような華やかな香りは非常に少なく、もっとまろやかで複雑な香りが強め。味わいはどっしりした甘みと旨味のバランスがよく、ふくよかな味わいだ。
ポイントは、料理との相性。
熟酒タイプの日本酒は、力強い香りと豊醇な味わいをもつので、料理も濃い味付けのものと合う。
和食なら豚の角煮や辛めのもつ煮、洋食ならビーフシチューやラムチョップといったものが挙げられるだろう。
ちなみに、相性の悪い組合わせは、生の魚介類。刺身などは、素材のもつ味わいを消してしまうので注意が必要だ。
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【2杯目】福井県 南部酒造場 「花垣 BLEND純米」
多数の熟成古酒をもつ花垣。蔵に眠っている3年から10年物の古酒をセレクトし、古酒の魅力を損なわず、なおかつ飲みやすい酒質バランスを持つブレンドを実現した。
お酒の色はやや淡い黄色を思わせるキレイでクリアな琥珀色で、古酒らしい複雑な香りが立ちのぼる。
少量口に含んで味を確かめると、まずは甘さがほんのりとしたアクセントに感じられる。中盤以降は穀物を思わせるコクが、舌の奥でしっかりと広がっていく、その奥行が面白い。
お惣菜との相性が良い、食中向けの気軽な晩酌酒として楽しめる。ライトな熟成酒。
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熟酒は熟酒なりの良さがあり、それを感じられるのも他の日本酒を知っているから。色々な種類を飲みつつ、これを書いている6月頭現在早くも数多く登場し始めている夏酒も楽しんでいく。