バーボンウイスキーを知っていますか?
多分、知っていると思います
居酒屋でもバーボンの代表格【ジム・ビーム】のハイボールを提供しているところが多いですし、スーパーやコンビニでも缶入りのハイボールを見かけたことがある人も多いと思います
しかし代表格であるジム・ビームがウイスキーである事を知っていても、詳しくは知らない……そもそもバーボンって何?という人、意外と多いのです
それではバーボンについて詳しくご紹介していきたいと思います
目次
アメリカのウイスキー
そもそもウイスキーとは、という話なのですが、簡単に説明しますと「樽で熟成した穀物の蒸留酒」といったところでしょうか
蒸留方法などの生産過程、使われる穀物、その比率などは生産する国々によって定義されていますが、共通しているのは「樽で熟成」していることですね
使われる穀物の代表例は「麦芽」いわゆる「モルト」と呼ばれるものですね
モルトという言葉はビールでも使われますね。他にもお酢でもモルトビネガーがあります。
麦ではなく麦芽、ここは重要なポイントです
日本語では似ている言葉ですが、海外の言葉では麦(大麦)はバーレイ、麦芽がモルトとなり全く別物になります
この芽が出ることで原料が発酵するようになるのですが、生産方法については今回は割愛しましょう
さてアメリカで作られるウイスキーですが、説明した通り穀物を原料とした蒸留酒になります
使われる穀物はトウモロコシがメインになります。次にライ麦、そしてモルトですね
トウモロコシが使われる理由はアメリカの歴史そのものに直結します
アメリカの産業の発展
アメリカはご存知の通り世界中から様々な人種が集まってできた国です
国の発展は産業の発展、ということで色々な産業が生まれました
工業や農業、畜産などなど……
独立戦争以来ジョージ・ワシントンの右腕であった2人の人物、アメリカ初代財務長官「アレクサンダー・ハミルトン」と、のちに第3代アメリカ大統領となる「トーマス・ジェファーソン」という二人の人物が全く違う考え方で産業の発展を進めていきました
簡単に説明するとジェファーソンは小規模な家内産業を支持し、反対にハミルトンは規模の大きな産業を支持していました
どちらが良いか、良かったのかという話はここではしない事にしましょう
政治的になってしまいそうですし、ウイスキーの話とは関係がなくなってしまいますから
しかしこの二人がいたから、衝突があったからこそウイスキーを含めた産業の発展、国の発展に繋がっていたのかなと個人的には思います
ジェファーソンは1779年にヴァージニア州の知事になっていました。ジェファーソンはヴァージニアの土地に人を呼び込むため(産業を発展させるため)にトウモロコシを育てるためなら無償で土地を分け与えると誘い込みました。
もともとこの大陸はトウモロコシがよく育ち、原住民たちが主食にしていました
初期に入植した人々はトウモロコシをあまり好みませんでしたが、一部の人が食べるだけでなく、故郷の酒であるウイスキーを作れないかと考えたのです。
今でこそ蒸留酒は嗜好品ですが、当時は嗜好品というよりは必需品でした。なぜならアルコールは性質上「腐りづらい」もしくは「腐らなかった」からです。
食料を長期保存する冷蔵庫などは当然ありませんでしたし、自然から採れる水は非衛生的でした。加えて消毒のためにも使われていました。これが蒸留酒が各地で「命の水」と呼ばれる所以です。
衛生観念だけではありません。膨大な量の穀物を蒸留酒にする事によって体積を小さくすることが出来たのです。長期保存できるようになった穀物、つまりウイスキーで人々は物々交換をしていました。通貨として使っていたのですね。
ジェファーソンの呼びかけをきっかけに「エライジャ・クレイグ」「エライジャ・ペッパー」「ヘンリー・ワッセン」「ジェイコブ・ビーム」などバーボンファンなら聞いたことのある名前の人々が次々とやってきました
その結果、当時ヴァージニア州の一部だったケンタッキー州はバーボンウイスキーのメッカとされるようになりました
バーボンウイスキーの定義
アメリカでバーボンウイスキーを名乗るためには以下の法を守らなければなりません
・アメリカ合衆国で生産されていること
・原料の比率がトウモロコシが51%以上であること
・新品の内側を焦がしたオーク樽で最低2年間熟成すること
・80%以下の度数で蒸留されていること
・樽詰め前の度数が62.5%以下であること
・瓶詰めの際には度数が40%以上であること
・アルコールに着色をしていないこと
これらをクリアすることでバーボンウイスキーを名乗ることができます
ちなみにこれらをクリアしてもバーボンウイスキーを名乗る必要はありません
有名どころでいうとテネシー州で作られている「ジャックダニエル」があります
ジャックダニエルを始めとしたテネシー州で作られるウイスキーは「テネシーウイスキー」として世間では認知されていますね。
また日本においてはバーボンウイスキーの定義というのはないので、全てまとめて「ウイスキー」に区分されています
幽霊の正体見たり枯れ尾花 -バーボンウイスキーの原料-
バーボンウイスキーはトウモロコシが原料の半分以上を占めていて、かつ内側を焦がした樽で熟成をしているので甘さと焦がしたビター感が特徴です
良くバーボンは日本のものやスコッチと比べて癖があると言われることが多いですが、癖があるのではなく何が原料でどんな製法なのか知らないからそう感じるだけだと思います
日本人がウイスキーと聞いて思い浮かべるのは大体が角瓶、トリス、ブラックニッカなどでしょう
ところが今の3つはスコッチウイスキーの製法を踏襲しているため、バーボンとは味の傾向が全く違います
バーボン「ウイスキー」と名前がついているため同じウイスキーの括りで考えてしまいがちですが、それはもはやコーラとサイダーを比較しているようなもので、考え方を改めた方がそれぞれを楽しめると思います
さて、バーボンは原料の51%がトウモロコシですが、残りの49%は何かというと、基本的にライ麦と大麦麦芽(モルト)になります。この3つの分量のレシピをマッシュビルと呼びます
原料は製造の過程で潰されます。だからマッシュとつくんですね
バーボンと呼ばれるものでも、マッシュビルの比率の違いで味わいが変わってくるので、少し意識して飲んでみると楽しいですよ
トウモロコシからは親しみやすい甘みを感じることが出来ますが、ではもう一つの主原料のライ麦の役割はというと、トウモロコシの甘さを引き締めるスパイシーな味わいをもたらすことで、フレーバーグレーンと呼ばれたりもしますね。ライ麦の他にもフレーバーグレーンとして小麦やオーツ麦やソバなど様々ありますが、どれも価格が比較的高かったり、扱いが難しかったことなどから選ばれづらかったようです
ちなみに日本でもすっかりメジャーな「メーカーズマーク」はフレーバーグレーンに小麦が使われています
このトウモロコシ、ライ麦の特徴的なフレーバーにモルトの風味が加わり、さらに焦がした樽で熟成することによりバーボンウイスキーの甘さとスパイシーさと香ばしさが生まれるのですね
またケンタッキー州やテネシー州という場所は石灰で濾過された滑らかな硬水、【ライムストーンウォーター】が湧き出る地で、ウイスキー作りにも大いに活用されることになりました
硬水で作られているバーボンウイスキー、水で割るときは硬水で割ると相性が良いですよ
味の複雑さと高品質の源 -サワーマッシュ-
もう一つ、バーボンの製法の特徴的なものがあります
それがサワーマッシュです
ウイスキーはラムなどの他のスピリッツ、ハードリカーと同じくスチルと呼ばれる蒸留器で蒸留されます
原料が蒸留された後、スチルにはアルコールと糖分の抜けた液体がいくらか残ります
バーボン製造においてはこの残留物をスティレージュと呼びます
スティレージュを次回の原料発酵の際、仕込み水と一緒に混ぜ込みます
それによって得られるものが大きく二つ
まずスティレージュは非常に酸度が高く、液体中の微生物の働きが抑制され、品質が安定すること
バーボンをはじめとした全てのお酒というのは発酵というプロセスを経て完成します
発酵というのは酵母が糖分を食べ、二酸化炭素とアルコールに分解することを指します
つまりこの微生物達をどう制するかが要になっているのです
次にこの残留物は、煮詰まって成分が凝縮されているもので、それを混ぜることにより出来上がるウイスキーの香りや味わいに複雑さをもたらします
これがいわゆる「バーボンは癖がある」とよく言われる理由なのではないかと私は考えています
ちなみにジャマイカで生産されるラムにも同じような工程があり、そちらでは残留物を「ダンダー」と呼んでいます
まとめ
原料や独特な製法により他のウイスキーとは全く別の味わいを持つバーボンウイスキー
現在、いえ随分前からですが日本ではウイスキーを評価する時にスコッチウイスキーを基準とする傾向があります
日本で作られている、いわゆるジャパニーズウイスキーと呼ばれるものが、スコッチウイスキーの製法を踏襲しているからと言われています
ですのでシングルモルト至上主義であったり、長期熟成崇拝というのが根強くありますが、バーボンはそういったウイスキーとは違う次元にいます
力強い味わいは広大なアメリカを想像させ、ウイスキーが農業とも結びついていることを思いださせます
もちろん力強いだけでなく、滑らかさや繊細さも持ち合わせています
バーボンは焦らず、ゆっくりと味わうものです
今夜はバーボンをいかがですか?