世界各国で作られている蒸留酒であるウイスキー
日本で作られるウイスキーは【ジャパニーズウイスキー】と呼ばれ、国内外で高い評価を得ています
現在日本各地で地酒をもじった【地ウイスキー】や【クラフトウイスキー】などと称されるウイスキーがたくさんありますが、大手3社【ニッカウイスキー】【サントリー】【キリン】のウイスキーが有名ですね
今回はサントリーから【響 JAPANESE HARMONY】をご紹介します
目次
響を構成する原酒
誰もが名前を聞いたことがある、【山崎】【白州】【知多】
サントリーが製造販売するモルトウイスキーとグレーンウイスキーですが、響はこの3つの原酒をブレンドして作られています
日本のウイスキーはスコッチウイスキーの製法を踏襲しており、味わいの傾向自体は似たものになりますが、スコッチと比べて口当たりの良さや優しさ、上品の舌触りのものが多いように感じます
響そのものはもちろん、響を構成する原酒3種類も個性はしっかりとありつつも、馴染みやすい味わいになっています
なお、3種類と書きましたが、ブレンドする際はモルト原酒は30種類以上、グレーン原酒も何種類か使われており、その味わいは複雑で、商品名の通り【ハーモニー】を奏でるかの味わいです
またジャパニーズハーモニーは年数表記のない【ノンエイジ】の商品になりますが、原酒の平均熟成年数は10年のようです
その味わいは
さて実際に飲んでみましょう
色はかなり明るいゴールドですが、注いで香りを嗅いでみると思いの外しっかりとした強い香りを感じます。刺激もありますが、ピートの香りやさらりとしたハチミツを感じることができて、早く口に含みたくなります
口に含むと、鼻で感じた香りの通りのピート感とハチミツの甘さを感じ、さらに心地よい樽香、日本のウイスキーらしいミズナラ由来のオリエンタルな風味も感じられます
と、複雑な味わいは見事なのですが、正直なところ全体的に【薄味】な印象
この薄味というのは実に難しいもので、ウイスキーをはじめとした樽で熟成した蒸留酒は、2024年現在、酒販店で勤務している肌感ですが、【味が濃い方が人気】という現状があります
中でもシェリー樽で熟成したものは無条件でと言っていいほど人気がありますね
味も独特なドライフルーツ感が備わって甘味を感じやすいですし、色も赤みを帯びて、魅力的に見えますからね
少し脱線してしまいますが、多くの生物は赤い色の食べ物を本能的に好むそうです
というのも、生物が生命を維持するために必要な栄養素である【糖】は【熟した果実】に多く含まれており、熟した果実は赤色をはじめとした暖色であることが多いため、そういった色の食べ物が魅力的に見える、との事です
閑話休題
各メーカー、ブランドが目指すところが、【濃厚】一点であるということは決してなく、上品な味わいを目指すブランドもあります
その為、流行りの対局にある【薄い】印象を受けてしまうお酒は評価が難しくなると、個人的に感じています
話を響に戻しましょう。そういった現状、難易度の高さを踏まえてですが、ジャパニーズハーモニーは香りも良く、複雑味も感じることが出来て、後味もキレが良く、実に日本らしいブレンデッドウイスキーです
しかし余韻が短すぎるのか、どうしても淡白な印象を受けてしまいます
価格も決して安価ではないので、この価格(定価)でこの味……?という感想も抱いてしまいますね
響を取り巻く現状
私個人の評価は低めでしたが、実に素晴らしいジャパニーズウイスキーである事に違いはありません
しかし見て見ぬ振りをできない問題を抱えています
転売問題です
昨今、流通が限られている商品を買い占め、フリマアプリ等で転売する行為が問題となっています。転売の対象は、トレーディングカードやプラモデル、アーティストの限定グッズ、ライブチケットなど多岐にわたりますが、ウイスキーもその一つです。
特にジャパニーズウイスキーは転売の対象となりやすく、転売屋と呼ばれる人々が各地の酒販店を巡回し、希少なウイスキーが陳列されていると仲間に連絡を入れます。多くの酒販店では転売対策として1人1点までの購入制限を設けていますが、転売グループはこの制限をかいくぐるため、複数人で買い占めを行います。
これらの購入者たちはウイスキーそのものにほとんど興味がなく、転売のために購入するか、グループのリーダーから報酬を受け取るために行動しています。転売屋たちの行動は苛烈で、時には数十人が一気に押し寄せ、一般の客を無視して商品を奪い合います。購入を制限しようとすると、大声で威嚇したり、脅迫を行ったりすることもあります。
それだけにとどまらず、店舗のバックヤードに押し入り、ジャパニーズウイスキーがあると知れば、販売を強要し、暴れることさえあります。このように、現状は非常に深刻です。
先述の通り、対策を講じている酒販店が増えたおかげで、目立った被害は少なくなりました。しかし、それでもネットでの販売価格を見ると、定価とかけ離れた金額で出品されているものが多く見受けられます。
なぜこんなことが罷り通るのでしょうか?
この空前のジャパニーズウイスキーブームの中で、多くの人が響や山崎、白州を飲んでみたいと考えてしまうのでしょう。しかし、実際にはどうでしょうか。本当にその中の液体を味わいたいのでしょうか?
もしかすると、多くの人は【響や山崎や白州を飲んだ人】になりたいだけではないでしょうか。響は「美味しい」と評判ですが、ウイスキーそのものには詳しくなくても、その評判のウイスキーを飲むことで、ある種のステータスを得ようとしているのではないでしょうか。
知人が自慢げに話すことについていくためだけに、そのウイスキーを飲んだという事実だけが欲しいのではないでしょうか。有名人に会ったとか、高級ホテルに泊まったとか、流行りのものを手に入れたとか、そういったことに似た、どうしようもない虚栄心を満たすために、転売品を定価以上の金額で購入しているのではないでしょうか
響が買えないという嘆き、響を出せという怒号、響を所有している人への怨嗟の声。このウイスキーは、世界にどのような音を響かせているのでしょうか?
ただ、「美味しい」という喜びの声だけが響き渡って欲しいと願うばかりです。