カリフォルニアワイン協会(CWI)は、2025年3月4日に東京・丸の内のパレスホテル東京、同月6日に大阪市北区のヒルトン大阪で、「カリフォルニアワインAliveテイスティング 2025」を開催しました。
今年のテーマ産地は、カリフォルニア南部にあるサンタバーバラAVAです。会場では、サンタバーバラ・カウンティ 〜2000万年の時が織りなすワイン産地〜」と題されたセミナーが開催されました。今回は、ブリュワー・クリフトンのパートをご紹介します。
登壇したのは、ブリュワー・クリフトンの創設者であり、ジャクソン・ファミリー・ワインズのワインメーカーでもでもあるグレッグ・クリフトンさんです。
目次
ブリュワー・クリフトンとは
ブリュワー・クリフトン(Brewer-Clifton)は、サンタバーバラを代表するワイナリーのひとつです。1996年、当時25歳だったグレッグ・ブリュワーさんとスティーブ・クリフトンさんが立ち上げました。当時持っていた資金は1万2000ドルだけ。「私たちは全人生を、このサンタ・リタ・ヒルズにかける気持ちでスタートしたわけです」と、グレッグさんは当時を振り返ります。
そんな彼らを支えてくれたのが、サンタバーバラの先輩たちだったそうです。前回ご紹介した、フェス・パーカーを営むスペンサー家は、彼らが駆け出しでお金がなかった頃、10個の古い樽を非常に安く分けてくれたそうです。また、マージュラム・ワイン・カンパニーのダグ・マージュラムさんが当時経営していたワインショップも、グレッグさんにインスピレーションを与えてくれました。現在、ブリュワー・クリフトンのボトルに描かれているロゴマークは、彼が経営していたレストランの天井をモチーフにしたものです。
さらに、オー・ボン・クリマのジム・クレンデネンさんに対して、「私たち全員のキャリアを合わせたよりも多くの貢献を、世界中にシャルドネとピノ・ノワールを広めるためにしてくれました」と感謝されていました。「サンタバーバラには、私には感謝してもしきれない人がたくさんいるんです」と、お話しされていた姿が印象に残っています。
テイスティングされたワイン
今回、テイスティングされたワインは、「ブリュワー・クリフトン サンタ・リタ・ヒルズ ピノ・ノワール 2023」です。
Brewer-Clifton, Pinot Noir, Sta. Rita Hills 2023
生産者:ブリュワー・クリフトン
産地:サンタ・リタ・ヒルズ
品種:ピノ・ノワール
参考小売価格:11000円(税別)
このワインでは、サンタ・リタ・ヒルズにある4つの自社畑のブドウを使用しています。サンタ・リタ・ヒルズは、サンタバーバラで最も海に近い生産地です。冷涼な気候で、日中にカリフォルニアの太陽を浴びたブドウは、夕方に海から吹き込む強い風によって冷やされます。寒暖差の影響で、ブドウがゆっくりと酸を蓄えたまま成熟できる環境です。
“全房発酵”されたピノ・ノワールを、平均10~25年使用した樽で10ヵ月熟成しています。
キーとなる全房発酵
ワイン造りのキーとなるのが、果実だけでなく茎も一緒に発酵させる“全房発酵”です。サンタ・リタ・ヒルズのブドウから造られるワインを、グレッグさんは「非常に濃くて丸みを帯びており、官能的かつ豊かな性質がある」と表現します。果実と茎を一緒に発酵することで、まろやかで丸みの中心にある果実味を、しっかりとしたフレームの中に閉じ込めることができるそうです。また、「茎は濃厚な果実味を高めて引き立て、美しい植物性のニュアンスをもたらします」と説明されていました。
熟成には、10年から30年ほど使われた非常に古い樽を使用しています。そのため、樽がワインに味わいの骨格を与えることはなく、全房発酵こそがタンニンやストラクチャーをワインに与えているそうです。
ワイン造りへのこだわり
「私たちのワインの口当たりは香ばしく、紅茶や醤油のようです。口の奥でその骨格を感じます。日本のさまざま料理に共通している味わいです」と、グレッグさんはワインについて解説します。
ブリュワー・クリフトンでは、その土地に敬意を払い、忠誠を誓い、気持ちを捧げてワインを造るということをコンセプトに、ワイン造りを続けているそうです。
自身のワイン造りを和食に例え、「魚を少しあぶったり、少しだけ醤油を垂らしたり海苔を使ったり…、少しだけ手を加えて、味わいにフレームや深みを与えるわけです。そういったひと手間が、もう一口食べたい、もう一口飲みたいという気持ちにさせます。日本の皆さんにもきっとご理解いただけると思いますが、これこそ私が考える調和です」と、ワイン造りへのこだわりを説明されていました。
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