12月中旬となり、都内では少人数での忘年会の声をよく聞くようになった。
対策は十分にしつつ、とはいえ一年を労っていく。1年の締めのようなイベントに、お店も活気づいている。
この時期の日本酒といえば燗酒が代表的だが、実はにごり酒も冬が旬。今回はこの雪のように真っ白な酒にスポットを当てて飲んでいく。
目次
【1杯目】
石川 車多酒造「天狗舞 にごり」
昭和の時代、吟醸酒の産地として北陸が注目を集めたときから急激に人気になったと言われている日本酒。この「天狗舞」が、その後長く続く吟醸酒ブームを起こす原動力となった、と評す声もある。
度数13度を感じさせない乳酸っぽさ。飲むヨーグルトのようなテイストで、かなり飲みやすい味わいになっている。口当たりはすっきりかと思いきや、口の中でほのかな甘味が顔を覗かせるのも飲みやすい理由だろう。
***
にごり酒の造り方は、途中までは通常の日本酒と全く一緒である。
製造過程の中で、米をアルコール発酵させた 醪
と呼ばれる液体を専用の袋に入れ、これに圧力をかけて搾ることで、酒粕と液体を分離させる。このとき、抽出した液体をろ過することで、透明感のある色に仕上がるのだ。
しかしにごり酒は、醪を入れる袋の目を粗くしている。そうすることで、あえて液体中に 澱
を残している。この酒の中に沈む澱によって、白濁した色のにごり酒ができあがる。
似たようなお酒に「どぶろく」があるが、両者の違いは「 濾
すかどうか」である。にごり酒は目が粗い袋で濾しているが、どぶろくは濾していない。そのため、にごり酒は「清酒」という区分だが、どぶろくは「その他醸造酒」という扱いになり、法律上も明確に区分けされている。
飲みくらべてみると、色やとろみから想像がつく通り、普通の日本酒に比べて濃厚でしっかりした味が特徴。米本来の芳醇な香りも、よりはっきりと感じることができる。
***
【2杯目】
三重 木屋正酒造 「 而今
にごり」
2000年代後半~2010年代に東京や大阪の地酒専門店で支持を得て、今や同県の 作
と並んで全国の酒処に置かれる人気のお酒。
注ぐと柑橘系の香りが漂う。一口飲んでみると、乳酸らしい旨味が口の中で爆発する。とはいえ、単純な旨味だけで終わらず、よく探してみるとヨーグルトのホエイのような酸味があるのも奥行きを持たせていて面白い。
***
このエッセイが公開される頃には年も明け、正月に 託
けて色々なお酒に浸っていることだろう。
自分も読者の皆様も良い1年になりますように、と少し早い挨拶を込めて。