例年以上に期末が忙しく、開花が早かったこともあり、今年は桜が十分に見られなかった。いつもは会社の帰りに上野や中目黒、千鳥ヶ淵などに見に行くのだが、咲いてすぐに雨が降るなどの不運も重なって、通勤途中に自転車で眺めるのが精いっぱい。散った後に家の近くの川で見た花筏がとても綺麗だった。
桜を見られないまま春に突入したので、春酒で春を満喫する。今回は最近飲んだ日本酒をご紹介。
目次
【1杯目】栃木 せんきん 「千禽 さくら」
使用している米は全て、蔵の地下水・仕込み水の水脈上にある自社の田んぼに限定するという、ワインで言うところの「ドメーヌ」を打ち出している千禽の春酒。会社がさくら市にあるのも、何かの縁を感じてしまう。
ほんのりうすにごりの「さくら」。摘み立ての果実のようにフレッシュな香りがお猪口から広がる。
一口飲むと、フワリと軽い旨みのある口当たり。その後、爽快な酸味が口中に広がり、若干のぴりっとしたアクセントが来る。飲み込むとすぐに味が消えるキレも素晴らしい。春酒の王道という印象のお酒。
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春酒とは、春季限定の日本酒。以前は四季に合わせて三月から五月に出荷されていたように思うけど、最近はシーズン先取りで二月下旬には居酒屋でお目にかかることもある。
春酒はデザインが素敵なのも特徴の一つ。ピンク色のラベルのものや、花見酒など桜をデザインしたものがたくさんある。うすにごりやおりがらみ、にごり酒も多いため、色味が分かりやすいよう透明瓶のものも何種類も見かける。秋冬のお酒が暗色系の落ち着いたラベルやデザインのものが多いのと比べると、全体的に春らしい明るいデザインの商品が多く、門出や旅立ちの季節である春の酒席を華やかに演出してくれる。
【2杯目】千葉 飯沼本家 「甲子(きのえね) 春酒 香(か)んばし」
酒名である「甲子」は、十干十二支の六十ある組み合わせの一番最初にあたり、物事の始まりを意味する事から、縁起の良い名称となっている、
目標の一つとして、「和食とのマリアージュ」を考えた酒造りに努め、どの種類も食中酒へのこだわりを感じる。そんな甲子の、春限定の純米大吟醸、生原酒。
注いだ瞬間立ち上る吟醸香は、りんごや梨を彷彿とさせるフルーティーさ。
生原酒ならではの奥行きのある味わいと、微発泡のガス感による軽やかでフレッシュな口当たり。しっかり厚みがあるのに軽い、バランスが取れた酒。
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花見はできなかったけど、ラベルでたくさん桜を見たし、春らしいメニューを肴で食べて春を満喫することができた。でも五、六月には夏酒が登場するだろう。季節の移り変わりは早いと毎年驚かされながら、いつまでスーツのジャケットを着て出社するか悩む四月下旬。