「酒精強化ワイン」という単語を耳にしたことのある人も多いでしょう。
ただ、「なんとなくはわかるけれど、結局どういうものかは把握しきれていない」と首をかしげる人もいるかもしれません。
今回はそんな人のために、「酒精強化ワインとは何か」「酒精強化ワインの種類」「酒精強化ワインの楽しみ方」について取り上げていきます。
目次
酒精強化ワインとは度数の極めて高いワインに仕上がる
酒精強化ワインのもっとも大きな特徴は、「他のワインに比べて度数が高いこと」にあります。一般的なワインは11パーセント~14パーセント程度ですが、酒精強化ワインの場合、15~22パーセント程度が一般的です。
アルコールが強く利いているのが特徴であるため、味わいも非常に個性的なものになりがちです。また、この「強いアルコール度数」は、ワイン自体に特別な味を付け加えるとともに、ワインを痛みにくいものにするという性質も持っています。
スペインとポルトガルでよく作られているのですが、味も方向性もさまざまです。
代表的なものとして、以下のようなものがあります。
シェリー
スペインのアンダルシアでよく作られます。「マンサーリャ」などが特に有名で、ブドウ品種「パロミノ」からよく作られています。
酒精強化ワインとしては度数が低く、15パーセント前後に収まることがあります。甘口と辛口の両方が存在しています。現在ではそれほど流通量は多くはなくなりましたが、ヨーロッパではお酒の選択肢の一つとして提示されます。
ポート
酒精強化ワインのなかでも非常に知名度の高いものです。ポルトガルで作られる甘口のワインです(辛口が「まったくない」というわけではありません)。
なお、文献上、これを日本で一番初めに飲んだのは織田信長という説があります。その頃は、「珍陀酒」と呼ばれていたのだとか。
一応白のポートもありますが、一般的に「ポート」というと、甘口の赤ワインタイプを指します。
マデイラ
これもポルトガルの酒精強化ワインです。高いものの寿命は半永久的ともいわれており、非常に長く「飲める状態」を維持できるのが特徴です。大きな倉庫で、気温と湿度を挙げた状態で作られるのが特徴です。辛口から注辛口、甘口まであります。
ちなみにマデイラワインができたのは、18世紀の中頃。航海中に、お酒が赤道付近で加熱熟成され、すばらしい味わいになったことが注目されたのが理由とされています。
また、これ以外にもさまざまな酒精強化ワインがあります。酒精強化ワインは、甘口が多いためか「デザートワイン」に分類されることもよくあります。たとえば、ピノ・デ・シャラントーなどがそれです。ワインによっては、「酒精強化ワインであり、デザートワインである」というものが珍しくありません。
酒精強化ワインは物によって味が異なる
酒精強化ワインはとても面白いものです。「酒精強化ワインは甘口が中心である」とされていますが、非常に辛口のものもあります。つまり、「酒精強化ワイン=甘口」と思い込むことは間違いです。
たとえば、上で挙げた「ピノ・デ・シャラントー」などは非常に強い甘味を持っています。ユニブランを使って作られるこの酒精強化ワインは、デザートワインの代表ともいえるものであり、なめらかな舌触りが特徴です。特に40年物などは、味の角がとれて、まろやかな甘みを出しています。
対して、スペインアンダルシア地方でゴンザレス・ビアスによって作られた「アルフォンソ オロロソ」などは、苦さを含む味わいに仕上がっています。紹興酒にも似た独特の風味が特徴で、参加から来る香りやスパイシーなカレーのような風味をまとっています。なおこれは、「パロミノ」100パーセントで作られています。
また、強い甘味と酸味の両方をまとった酒精強化ワインもあります。このように、同じ「酒精強化ワイン」であっても、その味の方向性は大きく変わります。このため、買い求めるときは必ず「辛口か甘口か」を聞いて買うべきです。