みなさん、“ヴィーガンワイン”というのを聞いたことがありますでしょうか?
ヴィーガンの方でも飲めるワイン、ヴィーガンのポリシーに則って造られたワインのことですが、日本ではまだまだあまり聞かないですよね。まったく別のものですが、一つの志向性を持ったワインとして“オーガニックワイン”は、既に市民権を得た感がありますが、ヴィーガンワインに関しては、実際売られているのはほぼ見たことがありません。
ということは、今のところあまり需要が無いということでしょうか。
確かに“ヴィーガン”という言葉自体、欧米諸国と比べてまだまだ日本では馴染みのないものですね。
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その前にヴィーガンってなんだ?
ヴィーガンがなんであるかを知っている人は、ベジタリアンなどの話題にアンテナを立てている人、周りにそういう方がいる人、または海外でそれに関する文化に触れたことがある方なのではないでしょうか。
簡単に言うとヴィーガンは完全菜食主義者とも訳され、動物由来の食品を一切摂らない人のことを指します。これだけだとベジタリアンとどのように違うのかわかりませんね。
一般的にベジタリアンと呼ばれる人たちは、肉類は食べませんが、例えばチーズやミルク、卵、ハチミツなどは口にします。完全に動物由来の食品を断っているわけではないのです。
しかしヴィーガンの人たちは、これらすら口にしません。というわけで、完全菜食主義とされています。
もっともこれだけだとヴィーガンの説明としては不十分で、元々は1944年にイギリスで起こった「ヴィーガニズム」という概念に由来しています。これは「人間は可能な限り、食べ物・衣服・その他の目的のために、あらゆる動物への残虐行為、動物の搾取を取り入れないようにする生き方」というものです。
ストイックにヴィーガンを貫く人は、食べ物だけでなく、衣服や化粧品その他、動物由来の物を一切受け付けません。これらは動物愛護的な観点に拠るものですが、ヴィーガンの中には畜産業が土壌や河川の汚染を招き、環境破壊をしているという、持続可能な環境づくりを求めた概念なども存在します。
ベジタリアンがどちらかというと、ヘルシーなイメージから入るのに対し、ヴィーガンは「環境に目を向ける」というのが根底にあります。
それらの概念が発達している国々では、あらゆる飲食店のメニューに必ず対応メニューがあり、それを明記しています。筆者はイギリス系の国のレストランで調理師として働いていたことがありますが、メニューには「ベジタリアン」「ヴィーガン」「グルテンフリー」「デイリー(乳製品など)フリー」の印がちりばめられ、かなりの確率でそれらが様々な組み合わせで注文されるので、非常に対応が難しかったのを覚えています。現在の一般的な日本の調理場からは考えられませんね。
ワインはブドウだけで造られている?
答えは“Yes”です。ワインは原料に水すら使っていません。ワインの液体がブドウそのものなのです。
そうなるとわざわざヴィーガン対応のワインを造らなくてもよさそうなものですが、実は原料ではなく醸造過程で使われるものに問題があります。
瓶詰前のワインからポリフェノールやたんぱく質など不純物を取り除き、クリアな液体にする「清澄(コラージュ)」という作業があります。
これに清澄剤として使われるのが、ゼラチンや卵白といった動物由来の物質なのです。そのためヴィーガンの人たちは通常のワインは口に出来ません。
ヨーロッパの文化とも密接な関係があるワイン、やはり呑みたかったのでしょうか。
ヴィーガンワインは、これら動物由来の清澄剤の代わりに、鉱物由来の粘土や珪藻土などで清澄したり、無清澄で瓶詰めされたりしています。清澄されているものは味や見た目に、通常のワインと比べて変化はないはずですが、無清澄のものに関しては、若干濁っていたり、取り除かれないタンニンなどが、味の要素として感じられるかもしれません。もちろんそれらはなんら害のあるものではありません。
ヴィーガンワインには、それであることが必ず明記されています。ご興味のある方は探してみてくださいね。