爽やかでアロマティックな香りのマスカットワイン。
私は子供の頃から生食用のマスカットが大好きで、日本で旬を迎える時期には、冷蔵庫を開けるたびに摘まみ食いをしていた懐かしい思い出が、この芳しい香りを嗅ぐと蘇ります。
ミュスカ、モスカート、ムスカテラーなどなど様々な呼び名がありますが、共通してアロマティックで芳しい魅力があります。
そして、結構聞こえてくるのが、食事と合わないんじゃないかという声。
家飲みで敬遠されがちですが、実は意外と相性良く楽しめるので、相性の良い料理も一緒に紹介します。
目次
マスカットとは?主な種類と産地
マスカットとは、麝香の香り=ムスクの香りがすることから名付けられたブドウです。
古くから栽培されていた古代品種で、起源は地中海沿岸とされていて、確かではありませんが、ギリシャが有力とされています。
ローマ人によってガリアに持ち込まれたものと考えられています。
マスカットから造られたワインは、ブドウ本来の香りや、味わいがしっかりと感じられる独特な特徴があります。
歴史が長いので、マスカットから派生したブドウも数多く存在します。
マスカットのグループも数多くあり、白っぽい色、ピンク色、黄金色など様々な果皮の色や種類が200種以上存在します。
ワイン用のみならず、レーズンや、生食用としても人気があります。
〇 最も高貴で、最も古い始祖のマスカットがミュスカ・ブラン・プティ・グランだと言われています。
これはフランスでの呼び名ですが、アルザスでは、ミュスカ・ダルザスと呼ばれます。
南フランスのクレレット・ド・ディ、ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ、ミュスカ・ド・サンジャン・ミネルヴォワ、ミュスカ・ド・リヴザルド、コルシカ島のミュスカ・ド・カップ・コルスでも栽培されています。
イタリアではモスカート・ビアンコ、モスカート・ダスティ、スペインでは、モスカテルなど各地の呼び方があります。
南アフリカでは、フランスのミュスカ・ド・フロンティニャンから取り寄せた苗が植えられ、品種名としてミュスカ・ド・フロンティニャンと呼ばれています。
サモス島、パトラ島、ケフェロニア島などギリシャの島々では、標高300m以上の北向き斜面の畑から素晴らしい品質のワインが造られています。
このブドウは小粒で、マスカットの甘やかな香りに、洋梨やハーブの香調が爽やかでエレガントなワインを生み出します。
〇 ブラウン・マスカットは変種の一つで、オーストラリアのラグザレンで素晴らしい酒精強化ワインが生み出されています。
〇 マスカット・オブ・アレキサンドリアは、エジプトを中心に紀元前から栽培されています。王妃クレオパトラの大好物だったそうです。
ブドウ名は、『アレキサンドリアのマスカット』という意味で、ローマ帝国時代に、エジプトのアレキサンドリア港から世界中へ広がったことに由来します。
果実が大きく、オレンジブロッサムのような力強い香りがあります。スペインで、モスカテル・ゴルドの名でマラガなどで、広く栽培されています。
イタリア南部とシチリア島と、周辺のパンテレッリア島では、ジビッボと呼ばれ、広く栽培されています。
ポルトガルのセトゥーバルでは、モスカテル・デ・セトゥーバル、フランスのルーション地方、ミュスカ・ド・リヴザルドでは、マスカット・ロマンと呼ばれ栽培されています。
〇 ミュスカ・オットネルは、シャスラとミュスカ・ド・ソーミュールの交配種で、1852年にロワールで湿地でも良く育つように開発されたと言われています。香りは穏やかな特徴があります。主にオーストリア、アルザス、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニアなどで栽培されています。
相性料理
マスカットワインと相性の良い料理を紹介します。
辛口のタイプ
アルザスに多いタイプで、みずみずしい味わいで、ホワイトアスパラガスと良く合います。
爽やかな香りで、ハーブ系の料理や、レモンを絞った料理とも相性が良く、生春巻きや、ミント味のタブレ、鮭の香草焼き、コトリヤード、チキンのレモンハーブ焼きなどと素晴らしい相性をみせてくれます。
優しい甘さのあるタイプ
辛口のものより、少し粘度が上がります。
ジャガイモのグラタンにハーブを振るったものに良く合います。しっとりした食感と、ワインの粘度が合い、ハーブの風味がマスカットの爽やかな香りと合い、余韻に爽やかなハーブの香りが蘇ります。
日本のカレーにも合います。今流行りの塩レモンコンフィを隠し味に入れても相性良く楽しめます。レモンコンフィのタジンや、パスティーリャといったモロッコ料理とも抜群の相性です。
凝縮感のある甘口タイプ
鴨に蜂蜜を塗って焼き上げたロースト、甘い味噌を使ったお料理、桃や洋梨、メロンのデザート、マロングラッセ、ホワイトチョコレートのムース、フォアグラ、ブルーチーズなど。
ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ / ドメーヌ・デ・ベルナルダン
ローマ時代からマスカットによる酒精強化ワイン造りを行なってきたローヌの
ボーム・ド・ヴニーズに所在し、ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズをAOCとして認めさせた立役者。
ミュスカ・ブラン・プティ・グランとミュスカ・ブラン・プティ・グラン・ノワールを使用した酒精強化ワインです。
白桃のコンポート、かりん、バタースコッチ、アールグレイティーの芳しい香り、力強いリッチな甘口ワインですが、抜栓直後は驚くほどフレッシュ!時間経過とともに味わいの変化が楽しめます。20年以上の熟成が可能な素晴らしいワインです。
私は、桃のキャラメリゼにバニラアイスを添えたデザートとこのワインを合わせていただきましたが、フレッシュさがありつつもバタースコッチのようなリッチな香りや味わいをもつこのワインが完璧に同調し、至福のペアリングでした。
ミュスカ・ゴルデール・グラン・クリュ / ツィント・フンブレヒト
アルザスを代表するドメーヌで、ビオディナミ栽培に取り組み、テロワールを反映させた素晴らしいワイン造りをしています。
ゴルデールの海洋性石灰質豊かな泥炭土畑で、ミュスカ・アルザス80%とミュスカ・オットネル20%を栽培しています。
シュール・リーにより旨味を引き出されたミュスカは、豊かなミネラル、豊かで繊細な果実味を愉しむことができます。エビやサーモンの生春巻き、エビと香草のソテー、鮭の香草焼きなど魚介との相性が特にいいです。
ローズウッド・ヴィンヤーズ・ラザグレン・マスカット / チェンバース
オーストラリアのラザグレンは、ミュスカ・ブラン・プティ・グランの変種ブラウン・マスカットによる酒精強化ワインが有名です。
ソレラシステムで、酸化熟成の香りのついたワインは、複雑な香り、味わいです。
ブランデーのような琥珀色で、マーマレード、マスカットのレーズン、ヘーゼルナッツ、キャラメル、カカオ、紅茶など複雑な香り、トロッとした質感で、凝縮した甘味がありつつも、マスカットと柑橘の香りが余韻に爽やかさを与えます。
オランジェット、マロングラッセなどをつまんで夜のひとときに最適なワインです。
クルタキス・マスカット・オブ・サモス / クルタキス
クルタキスはギリシャの島々にワイナリーを所有しています。
サモス島で伝統的なホワイト・マスカット(ミュスカ・ブラン・プティ・グラン)の甘口ワインです。
オレンジピール、オレンジの花の香り、口当たり柔らかで、凝縮した果実味を味わえます。余韻にシナモンや、ナツメグのスパイスの香りが心地よく広がります。
相性料理は、鴨ローストのオレンジソースなど。
ヴァン・ド・コンスタンス / クレイン・コンスタンシア
1685年設立の歴史があり、南アフリカで最も有名なワインです。
セントヘレナ島に亡命したナポレオンを癒し、かつての王を魅了し、19世紀の文作家の作品にも登場する歴史の詰まったワインです。
フィロキセラの影響により19世紀後半に生産が止まってしまいましたが、継承され、1985年より再びヴァン・ド・コンスタンスが復活しました。
ドライアプリコット、ドライイチジク、蜂蜜、コーヒー、カラメルの香り、凝縮した果実味に、豊かな酸とミネラルがあ南アフリカらしさを感じさせ、長い余韻が至福のひとときになります。こってり甘い味噌カツや、モンブランと相性が良いです。
今でもこのワインは、神様からの素晴らしい贈り物であることに間違いありません。
アロマティックなマスカットのワインに癒されてみてください。
楽しいワインライフをお過ごし下さい。