ニュージーランドといえば、ソーヴィニヨン・ブランが有名な世界的にも人気のワイン産地ですね。では、現地ではワインばかりが飲まれているのでしょうか。
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ビール天国 ニュージーランド
実はニュージーランドはビール天国でもあります。スーパーのお酒売り場やワインショップ(酒屋)には、たくさん並ぶワインと同様、ビールもかなりの品ぞろえがあります。
そのほとんどが、いわゆるクラフトビール。大手の製品より幅を利かせています。
最近は缶入りも出てきましたが、まだ主流は瓶入り。クラフトビールはラベルデザインもカラフルで個性的なものばかりで、思わずジャケ買いしてしまいそうです。見ているだけで楽しいですね。
国内のビール醸造所(ブルワリー)はわずか7年で3倍
国内でのビール産業の発展と市場の拡大は目覚ましく、最新の情報(2019)では、現在国内のビール醸造所(ブルワリー)は218軒ありますが、2012年にはその数は75軒でした。わずか7年で3倍近くになっています。そしてそのブルワリー数を国民一人あたりになおした数字では、ついにイギリス、オーストラリア、そしてアメリカを抜いたそうです。もっとも人口より羊の方が多いと揶揄されるほど人が少ないニュージーランドならではとも言えますが。
いずれにせよ、日本を含めた世界的なクラフトビールの流行の中でも、その伸びは目覚ましいものがあります。
2大メーカーであるDBとライオンネイサン以外は、全て中小のブティック・ブルワリーです。この構図はやはり9割が中小のブティック・ワイナリーだという、この国のワイン産業とも似ています。そしてビール産業、ワイン産業そのどちらもが、それら中小の生産者によって支えられています。大手が強い日本とは、少し様子が違いますね。
これが様々なキャラクターを持つビールやワインが市場に出回り、楽しまれている要因とも言えるのではないでしょうか。
ちなみに大手であるライオンネイサンという会社は、最近まで日本のキリンの傘下にありました。キリンの下にライオンがいたというのもまた面白いですね。
国内で一番飲まれているのがワインではなくビール
国民一人当たりのビール消費量は、すべてのアルコールドリンクの63%ほどで、国内で一番飲まれているのがワインではなくビールだということがわかります。
国別の順位では2016年の時点で26位。これだけだとちょっとわかりにくいので、主要な国の順位を紹介すると、1位はチェコです。ビールを飲みそうな国である3位オーストリア、4位ドイツ、6位アイルランド。その他上位には結構、旧東側の国が多い印象です。
そしてアメリカが21位、お隣のオーストラリアと、ハイネケンでおなじみオランダが23、24位。イギリスが25位と続き、ここでニュージーランドが来ます。その次は27位ベルギーですので、消費量は特別に多い方というわけではなさそうですが、世界の名だたるビール産出国に囲まれています。ちなみに我が日本は39位で、アジア圏では韓国の37位が最高です。
ホップ産出国 ニュージーランド
もうひとつ特徴的なのは、ニュージーランドがホップ産出国だということです。
クラフトビールをお好きな方ならご存知かもしれませんが、“ネルソン・ソーヴィン”という品種のホップは、ニュージーランド産です。最近は大手のビール会社も使用していたので、耳にしたことがある方も多いかもしれませんね。
ニュージーランド南島の北端、ワイン産地としても名高いネルソンは、国内で唯一ホップの商業栽培がおこなわれている場所です。ホップ産地として世界中からの注目も高まっていて、18種のニュージーランド固有の品種を含む全収穫量の85%を、今では30か国以上に輸出しています。
“クラフトビールの首都”とも言われている首都ウェリントンや、最大都市オークランドの街中や郊外には、たくさんのブリューパブがあります。大体のお店で色々な味を一度に少しずつ楽しめる“テイスティング・パレット”が注文できます。そういったお店を巡るのもまた楽しみのひとつになっていて、今やビール産業はツーリズムにも一役買っています。
残念なのは、日本ではニュージーランドのビールをほとんど見かけないことです。生産の8割以上のホップが海外へ輸出されている一方で、ビールそのものの国外への輸出はまだ1割ほどで、そのほとんどがお隣のオーストラリアへ運ばれています。
日本のクラフトビールとのコラボをしているブルワリーなどもあり、その質も非常に高いニュージーランド・ビール。日本への進出を期待したいところです。