「ビール」は世界各国で愛されているお酒です。しかし日本で当たり前と感じているビール事情と、世界各国のビール事情はまた違うものです。今回は「ドイツ」をテーマに、ドイツのビール事情について詳しく見ていきましょう。
目次
ドイツのビールの成り立ちについて
ビールにおいて、世界でもっとも知られた国のうちのひとつが「ドイツ」でしょう。ドイツのビールは非常に有名であり、日本でも「ドイツといえばビール、ビールといえばドイツ」と考えている人もいることでしょう。日本では実際には10月ではない季節に行われていることもある「オクトーバーフェス」でドイツのビールを飲んだことのある人もいるかもしれません。
ドイツのビールがここまで有名になった理由のひとつとして、「ドイツのビールは品質が良いこと」が挙げられます。これは決して感覚的なものではありません。
ドイツのビールの歴史は非常に古いのですが、中世の昔から、ドイツでは「品質の良いビールを作ること」が条例で定められていました。
今から900年ほども昔、アウクスブルクではすでにビールについての条例が出されていたのです。アウクスブルクはドイツで最古の都市法を持っている土地ですが、その「ドイツ最古の都市法」において、すでにビールについての定めがなされているのです。その内容は、「品質の悪いビールを作るものや、量を偽るものには罰を与える」というものでした。
これ以降も、ドイツのビールは厳格な法律によって守られていきます。1516年の4月に公布された「ビール純粋令」は非常に有名で、それから500年以上が経った現在でも依然としてドイツのビールを守り続けています。この「ビール純粋令」では、ビールは「水・麦芽・ホップだけで作るように」と定められていました(後になってこのなかに「酵母」が加わります)。
現在では数多くの種類のビール・数多くの味のビールが生産されるようになってきましたが、それでも、ドイツのビールにはこのような遵法精神が息づいています。確認できる最古の条例から864年、現在も引き継がれているビールの法律の制定から503年が経った今でも、ドイツのビールはドイツ人の誇りと法律によってその品質が守られているといえます。
現在のドイツのビール事情~日本との違いについて
ビールはドイツを愛し、またドイツはビールを愛します。現在はドイツのビール離れもささやかれていますが、2018年のデータでは、ドイツのビール消費量は世界で5位につけています。なお、1位は中国、2位はアメリカ、3位はブラジル、4位はメキシコでした。
ちなみに日本は7位にランクインしています。なおこれは「国別の消費量」ですが、「1人あたりのビール消費量」で見た場合は、ドイツは3位に入っています(1位はチェコで2位はオーストリア。日本は52位です)。
ドイツのビールでもっとも特徴的なポイントは、「ドイツではビールは常温で飲む」ということでしょう。
日本では常温どころかマイナス2度まで冷やしたビールを提供していることからもわかる通り、日本では「ビール=冷やして飲むもの」という感覚を持っている人が多いといえます。このため、日本の感覚でドイツでビールを注文するとかなり面食らうでしょう。
もっともこれは、ドイツのビールに限った話ではありません。ベルギーなどでも常温でビールを楽しむことが多く、冷やしたビールは一般的ではない国も多くみられます。またヨーロッパ各国では、コーヒーも「アイスコーヒー」として飲むことが少ないので、飲料を冷やして飲むという感覚自体がそれほど強くはないのかもしれません(なお海外で「アイスコーヒー」と頼むと、アイスクリームがのったコーヒーが出てくることもよくあります)、
ドイツではグラスに注がれた状態でビールが出てくるのが一般的ですが、瓶に入れられたビールがまったくないわけではありません。
なお、醸造所などでビールを飲む場合、「グラスに入っているビールの量が500ミリリットル」となっていることも多く、量がとても多いことがあるので注意も必要です。度数は日本のそれと変らず5パーセント程度のものが多いのですが、それでも飲みすぎには要注意です。
加えて、レストランによっては「もう飲まない」と意思表示をしない限り、グラスが空になるたびにビールが入れられるというお店もあります。このあたりも日本との大きな違いだといえるでしょう。水を飲むようにビールを飲む人も多くみられます。
ドイツのビールでは、「ピルス(ピルスナー)」が非常に人気を博していますが、南ドイツに行くのであれば、ぜひヴァイツェンを飲んでみてください。南ドイツで伝統的に飲まれているビールであり、小麦を原材料としています。
海外旅行の楽しみのひとつが「食事」ですが、ビールひとつをとってもこのような違いがあります。
出展:キリン「2018年 世界主要国のビール消費量」
https://www.kirinholdings.co.jp/news/2019/1224_01.html