皆さんビールの種類を聞かれて、どんなものが出てきますか?
「えーと一番搾り、スーパードライ、黒ラベル、プレミアムモルツ!」と日本の大手各社の代表銘柄を答える方はいるでしょうか。このところのクラフトビールの盛り上がりもあり、さまざまなビールが紹介されて、さすがにこの様に答える方はいないかもしれませんが、そういったクラフトビールを好んで飲まれる方々以外は、まだまだどう答えてよいかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうです、これは銘柄の話ではなく、ビールの種類、スタイルのお話です。
目次
ラガー?エール?発酵による分類
ビールは大まかに二つに分類できると言えます。発酵に使う酵母の種類によるものです。発酵の終わりに酵母が下に沈む下面発酵酵母を使用したものと、同じく発酵途中に酵母が液面に浮かび上がる上面発酵酵母を使用したものです。前者を「ラガー」と呼び、後者を「エール」と言います。もうひとつベルギーの「ランビック」に代表される自然発酵系のビールもありますが、世界のほとんどのビールはラガー系かエール系に大別できます。
「ラガー」という名前は「貯蔵・熟成させる」という意味のドイツ語からきていて、実際にある程度貯蔵・熟成してから出荷されます。日本では「貯蔵工程で熟成させたビールでなければラガービールと表示してはならない。」というものだけがラガービールの規定であり、また商品名にも広く「ラガー」が使われているのが、そもそもラガーというのが商品名なのか種類名なのか、またどういったタイプのビールなのかというのをわかりにくくしている気もします。
味わいの違いは、一般的にラガーはスッキリした爽快な飲み心地、エールは豊かな香りと深い味わいの物が多いと言えます。
より細かく分類―ビアスタイル
そして上記の分類を、原材料の違い、発酵・熟成の方法などによりさらに細分化することができ、これをビアスタイルと言います。その数は100種類以上と言われています。
代表的なものを挙げてみましょう。まずは上面発酵酵母を使ったエール系ビール。ペールエール、インディア・ペールエール(IPA)、アメリカン・ペールエール(APA)、スタウト、バーレーワイン、ヴァイツェン、アルト、ポーター、トラピストなど。
そして下面発酵酵母を使ったラガー系は、ピルスナー、デュンケル、シュヴァルツ、ボック、メルツェン、ドルトムンダーなど。
さらにどちらの系統にも属さないものとして前述のランビックやその派生酒であるともいえるグーズやクリーク、フルーツビールといったものがあります。
なんとなくでも耳にしたことがある名前があったのではないでしょうか。
世界のビールの約7割を占めるピルスナー
ビール史においてエール系はイギリスで、ラガー系はドイツやチェコで発展してきたと言えます。低温で発酵させなければいけないラガー系のビールは製造に手間がかかるため、昔は濃色のエール系ビールが主流でしたが、1800年代半ば、チェコで誕生したピルスナーは、世界初の黄金色のラガービールと呼ばれるようにその透き通った美しい色合いとシャープな飲み口で瞬く間に世界を席巻しました。冷蔵技術の進化により低温発酵を容易にしたこともラガー系の発展を促し、今では世界で生産されるビールの約7割がピルスナーだと言われています。有名なハイネケンやバドワイザー、そして日本の大手各社の銘柄も実はすべてピルスナーなわけです。中にはスタウト然とした黒いピルスナーも日本には存在します。各社の製法や材料の配合により微妙な味の違いはあったにしても、今まで私たちは、ほぼ1種類のビールを飲んで満足していたわけですね。
最近のクラフトビール熱は、ビールへのさらなる理解を促し、さまざまなビールとの出会いを提供してくれます。大手各社も色々なタイプのビールをリリースしてくるようになりました。日本のビール文化の転換期なのかもしれませんね。