“黄桜”と言えば、テレビCMでもおなじみの大手酒造メーカーですね。もちろん造っているのは日本酒ですが、最近はビールも造っているのをご存知でしょうか。
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京都初の地ビール
黄桜は酒どころとして有名な京都は伏見区にある酒造メーカー。1925年の創業以来、成長を続け、今では大手に数えられています。筆者の世代にはカッパのキャラクターが出てくるテレビCMが、その音楽と共に強烈に脳裏にすりこまれており、日本酒しか造っていない会社だと思っていましたが、意外にもビール造りの歴史は長く、1995年に京都初の地ビールとして誕生して以来、今日に至るまで続いています。昨今のクラフトビール・ブームを予見していたかの様ですね。
ビール製造をするようになった経緯は不明ですが、清酒メーカーが造る地ビールとして、清酒の製造技術を生かした商品企画を多くしており、清酒用の発酵酵母を使用したもの、酒造好適米の山田錦を副原料として使用したものなどもあります。仕込み水にはご当地の酒造用水として知られる“伏水”が使用されています。
他にもユニークなラインナップがあり、古代小麦や研究室の保存庫から蘇らせた“謎の小麦”を使用したもの、ゆずや黒豆、抹茶、チェリーなどを副材料に使用し、発泡酒のカテゴリーでリリースされているものなど。全体としては主に上面発酵系のビールを造っている様です。ちなみに前述の京都初の地ビールとして生まれたものは、「京都麦酒」として現在でも販売されています。
「Lucky Cat」や「Lucky Dog」などの“Luckyシリーズ”は、ポップな絵柄のラベルで、最近はスーパーなどでもたまに見かけます。
このビール製造やレストラン経営など、酒造以外も幅広く手掛けるようになったからか、2006年には社名から“酒造”の文字が消え、「黄桜株式会社」となっています。
For your Dream ゴールデンエール
名前の通り、綺麗な黄金色をしたエール・ビールです。ゆるやか「ろ過」製法により酵母が残されているため、ヘイジーな曇った色調です。
副材料に酒造好適米の山田錦が使用されており、スッキリした味わいに仕上がっています。
軽くさわやかなハーブ系の香りを感じますが、香味はそれほど強くありません。泡立ちはよく、味は極めてドライ、甘みは極低温だとほぼ感じず、穏やか且つしっかりした苦みと酸味に支配されます。少し高めの温度で飲んだ方が、香り立ちも味のバランスも良いかもしれません。
Japanese Spirit ペールエール
麦芽に一部国内産サチホゴールデンを使用した、麦100%ビールです。これが名前の由来なのでしょうか。ホップにはシトラス香を持つアメリカ産シトラホップが使用されています。
色調はヘイジーな濃い目のゴールデン、落ち着いた感じです。泡立ちは中程度、香りは華やかな甘いキャンディ香、ほこりっぽいニュアンスもあります。香り立ちは非常に良いです。
商品説明にインパクトとキレのある苦みと書いてある通り、アタックから余韻まで一貫して、線は細いがボリュームのある強烈な苦みが味の骨格となっています。奥の方にはしっかりした酸味や、余韻には甘みも感じ、味わいに厚みがあります。
国内ビール製造大手も最近は様々なスタイルをリリースするようになってきましたが、この黄桜ビールの様に他分野から違ったアプローチでの参入というのも、またビール大手ではなかなか成し得ないような試みなどもあり、我々消費者にとっては楽しみの幅が広がりますね。