寒造りの時期を終え、今年のお酒の出来が気になる時期になりました。寒い冬に造り終えた今年のお酒を、酒造メーカーは春先から各所にお披露目します。その催しものの1つが酒蔵開放です。
酒蔵開放とは酒造メーカーが酒蔵を開放し、今年のお酒の出来の披露を兼ねて、普段見られない酒造りの現場を公開することで日本酒をより多くの人に知ってもらうためのイベントです。全国には酒造開放や即売イベントを行っている酒蔵が数多ありますが、今回は今月4月7(土)・8日(日)と開催された愛知県江南市にある酒造メーカー「勲碧酒造」(くんぺきしゅぞう)の酒蔵開放を訪れました。
「勲碧」で有名な勲碧酒造では自社の酒蔵からほど近い桜の名所、五条川に咲く桜の花から採った酵母で造るお酒「あらばしり」が話題になりました。今回の酒蔵開放ではこの「あらばしり」の無料試飲の他、日本酒と酒製品の即売会を行っていました。来場者の多くは年配の男性客ですが、近年の日本酒ブームに乗って女性客同士の来場や、小さな子供連れで訪れる近隣住民の姿もあり、雰囲気は大変フランクで地元のお祭りのような賑わいです。
そんな日本酒初心者でも気軽に楽しめそうな酒蔵開放に、まだ行ったことがないという日本酒好きの為のお勧めポイントを5撰ご紹介します。
目次
ススメ1.普段飲めない仕込み水。日本酒の原点で舌を試そう
そもそも日本酒は米と麹、酒造ごとにこだわる清水「仕込み水」の3要素のみで造られています。構成要素が少ない為その1つ1つの味が日本酒の味を大きく左右しています。
勳碧酒造では醪(もろみ)の四段仕込み作業を公開していた他、受付を済ませてすぐに仕込み水を試飲出来るコーナーがありました。
勲碧酒造は地下100メートルからくみ上げた自然水を仕込み水として使用しています。余程舌の肥えた人でなければ水の味の違いを感じるのは難しいところですが、蔵へ入ってすぐに試飲出来るとあって、仕込み水の前で足を止める人は多く、仕込み水自体を味わえる機会も酒蔵開放ならではです。舌に自信がある方は普段の飲料水や地元の清水の味と比べてみるのも面白いかもしれません。
ススメ2.専門用語が分からなくても大丈夫! 開放日は初心者に優しい工夫がいっぱい
日本酒好きの中には「日本酒を飲むのは好きだけど、お酒が出来る過程や専門的なことは分からない…」という方も多いでしょう。そんな日本酒ビギナーならば酒蔵開放日は尚更足を運んでほしいイベントです。何故なら、開放日の来場者にはお祭り気分で訪れる地元の方や、遠方から来る年配の団体さん、小さい子供連れもいらっしゃるので、日本酒への取っ付きにくさを解消する為に、初心者にも分かりやすい工夫が酒蔵内にたくさん施されています。
こちらは勲碧酒造の酒樽の前に掲示してある、日本酒の醸成過程です。樽の側には酒蔵スタッフの方が立っていて、直接お話を伺うことも可能です。
また、今回は酒樽の側まで上がり、醪を覗くことも可能でした。このような催しは工場見学の要領で子供連れや年配の女性客に好評のようです。
勳碧酒造では受付時に醪樽見学用の防菌キャップを配っており、来場者は希望すれば誰でも醪樽を覗けます。普段見られない場所を見られるのも、酒蔵が開放されている期間中のみですので、訪れた際は是非一度見学してみることをお勧めします。
ススメ3.やっぱり日本酒が飲みたい!酒蔵開放でタダ酒を飲む?
酒造開放のメインイベントはやはり酒蔵で味わう日本酒の試飲です。どのように造られているのか一通り見学した後での試飲は格別。勲碧酒造の今回の無料試飲は桜酵母で出来た「あらばしり」と無濾過生原酒2種の計3種類でした。
受付で受け取る無料試飲券を各コーナーで渡し、お猪口の半分程のカップに注いでいただきます。一口に無濾過生原酒と言っても2種類とも口に入れた風味や辛味が違い驚きます。また、話題のあらばしりは春らしさを感じる丸い口当たりで、試飲コーナーも綺麗な女性のスタッフに注いで頂く一興でした。
ススメ4.帰る前にちょっと待って!酒蔵開放のお土産は日本酒と…?
無料試飲でタダ酒を飲んでほろ酔い、も良いですが酒蔵開放で最も人気なのは実は「有料試飲コーナー」とおつまみ・お土産の購入です。
勲碧酒造では8枚綴りの有料試飲券が400円で10種類近い日本酒が試飲出来ます。試飲して気に入った日本酒はその場で購入出来ますし、ギフト配送することも可能です。
また、有料試飲コーナーのある酒蔵内に食べ物の持ち込みは禁止ですが、酒蔵の扉を全開放した中庭では焼き鳥・おでん・巻き寿司などのおつまみが売られており、購入した日本酒を持ち込んで仮設テーブルでの飲食が可能です。
また、お土産として仕込み水や酒粕、日本酒を織り込んで造られたスフレケーキなどを購入することも可能です。こちらでは甘酒も無料で試飲出来ました。開放が始まった午前の時点でお祭りのような賑わいだった為、仮設テーブルはすでに満席。宴会希望の団体さんは開放時間の午前10時と同時に訪れるのをおすすめします。
ススメ5.日本酒の味は年に4回楽しめる?まずは今年の味を効きに行こう
勲碧酒造を初め、酒造メーカーは春と夏の2回酒蔵を開放するところが一般的です。何故なら、春に飲む日本酒と夏に飲む日本酒ではその味・表情が違うからです。
実は、日本酒には日本酒の「旬」があります。冬に新しいお酒を仕込む寒造りを終えて出来た「新酒」をこの春の時期に飲むことを「春酒」と言います。常温でも楽しめるこの時期を過ぎると、夏頃には冷やして美味しい「夏酒」が出回ります。同じ酒造メーカーでもこの出回る時期によってお酒の味に差が出ます。そして、秋には新酒に火入れをした「ひやおろし」が出回ります。
この春の酒蔵開放でお気に入りの酒造メーカー、日本酒を探しておけば、その美味しさを通年通して楽しめるのです。
勲碧酒造では、次回7月に有料試飲会を予定しているそうです。
まだお気に入りの日本酒に巡り会っていない、という方は是非この機会に酒蔵を訪れ、その製法や味を直接体感し、「今年の1本」を探してみましょう。余すところなく酒蔵開放を楽しむススメとしてご提案します。
今回取材レポートした「勲碧酒造」
勲碧酒造株式会社
〒483-8128 愛知県江南市小折本町柳橋88番地
電話番号:0587-56-2138
名鉄犬山線 布袋駅・石仏駅下車 徒歩約20分