北海道に桜の開花が追いついた4月27日、まだ少し肌寒い北海道小樽市を訪れました。今回は3日間に渡り、小樽市周辺のアルコール醸造所3箇所を回ります。
小樽と言えば、小樽駅から徒歩20分程で小樽一の観光名所、小樽運河に突き当たります。初日はその一角にある「小樽倉庫No.1」というビアホールへ立ち寄りました。
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侮れない無料見学。貸切同然で見られる小樽ビールの裏側
「小樽倉庫No.1」は小樽ビール醸造所が運営する小樽の地ビール「小樽ビール」と小樽ビールに縁の深いドイツ料理を提供する飲食店で、店内には小樽ビールの麦酒醸造所を併設しています。
運河沿いで見かけたこんな看板に釣られて、まだ酔いどれには早い午前のうちに小樽ビール醸造所を訪れました。
訪れた午前11時のタイミングは客入りも疎らで、店内の様子を覗きに訪れる観光客の姿が目立ちます。しかし、入り口に近いテーブルには開店から無料見学の文字が掲げられており、コアタイムの18時頃まで20分に一度、希望客は無料で醸造所見学が可能だそう。見学回ごとにスタッフが1人付き、醸造所内を案内するシステムです。
今回は時間帯も早かった為か他の見学者もおらず、貸切状態で醸造の説明を聞くことが出来ました。そんな小樽ビール醸造所の醸造所見学で知った、小樽ビールが出来るまでの過程と魅力をご紹介します。
ビールに欠かせない「麦とホップ」って?焙煎麦芽を食べ比べよう
ビールと言えば「麦」と「ホップ」。テレビCMでもよく耳にするこの麦とホップが、まさしくビールの原材料です。麦とホップの「麦」とは大麦の種子を発芽させた麦芽のことで、麦芽からはビールを飲んだ時に感じる甘み、糖が発生します。「ピルスナー」「ドンケル」などドイツビールのフレーバーはこの麦芽の焙煎具合が関係しますが、小樽ビールも同様にこの麦芽の炒り具合によって風味や飲みやすさが異なります。どうぞ食べてみて下さい、と案内スタッフに促され、炒り具合の異なる麦芽を試食しました。風味は香ばしく、煎り大豆を食べているようなイメージ。見学スタッフ曰く、「この焙煎麦をつまみにビールが飲めるというお客様もいらっしゃいます」とのこと。
焙煎麦の次に欠かせないのは、やはりホップの存在です。ホップとはつる性の多年草で、こちらもビールの苦みの元になる他、ビールの香りや泡を興す原料にもなります。雑菌の繁殖を防ぐ性質から保存料の役目も果たしているのですが、臭いは鼻に「うっ」と来る汗っぽく蒸れて籠った臭い。経験するのはこの1回のみで結構、という感じでしたが、小樽ビールの魅力の一つには、これら原材料の醸造をドイツビールの製造方法を定める法律「純粋令」に準じており、「麦芽・ホップ・水・酵母」のみでビールを生成している、という点があります。
店内の巨大タンクにはビールがいっぱい?樽一杯のビール泡を覗き込め
厳選された麦とホップは、同じく小樽ビール醸造所が拘った水とあわせることでビールの素である麦汁に変わります。小樽倉庫No.1の店内中央には銅製の巨大タンクが天井まで伸びていますが、このタンクはただの店内オブジェではなく、小樽ビールの仕込み樽として実際に使用されています。麦芽の澱粉を糖に変え、生まれた糖分にホップを加えたものをこのタンク内で煮沸しているそう。天井に伸びるパイプは煮沸した麦汁を客席とガラスを一枚挟んだ隣の発酵室へと運びます。
発酵室ではホップが加えられ、煮沸された後の発酵樽を覗き見ることが出来ました。表面に浮かぶ泡の下には麦汁が並々と溜まっているそう。
醸造見学では仕込み樽がある中央カウンターの内側に入ることが出来、泡いっぱいの発酵樽を触れる程の位置で覗き込むことが出来るので、ビール作りの迫力を感じることも出来ます。
ミネラルたっぷり!オーガニック麦汁を試飲しよう
発酵を終えた麦汁はその後、隣室の熟成室で「寝かせる」段階に入ります。熟成室は品質を保つため、低温管理が徹底されており、中はひんやりと冷蔵庫さながらの室温です。一定温を保たれた熟成室では、先ほど発酵室で生成された麦汁の熟成が行われます。
こちらの樽の「DKL」とは小樽ビール「ドンケル」を示しています。日付はこの樽でドンケルの熟成を始めた日付を記載しているそう。熟成具合によって樽の中の麦汁も徐々にビールらしい黄金色になっていきます。
また、熟成室では店内中央の樽で糖とホップをあわせ、発酵室で発酵させる前の麦汁を試飲することが出来ます。発酵前の麦汁なのでアルコールは発生しておらず、子供でも飲むことが出来るそう。
味は甘くとろりとしていて、プリンのカラメルのようなイメージ。甘すぎる風味が苦手、という意見はありそうですが、ミネラル豊富でもちろんオーガニック。調子の悪いスタッフは良く飲んでますよ、と言う案内スタッフの言葉を聞くと、一気に飲んでしまいました。
知って飲むから格別。本当は小樽でしか旨くない小樽ビール
現在はインターネットやテレビでよく見かける為か、案外知られていませんが、実は小樽ビールの正規販売ルートは小樽市内から半径100km圏内のみと決まっています。
小樽ビールには酵母菌が含まれており、生きた菌である酵母を生かしたまま提供するにはこの圏内での輸送が限界だそう。それ故、小樽ビールの賞味期限は数週間とも言われています。
観光客がお土産に持って帰って飲む分には自由ですが、本当に美味しいのはこの圏内で飲める期間だけです、との案内スタッフの言葉に、何だか飲まずにはいられないプレミアム感を感じさせられました。
他にも醸造見学では店内で保管している麦袋の保管庫を見られる他、店内で小樽ビールを楽しむ際のフレーバーの選び方、フレーバーごとのお勧めのグラスの選び方などを聞くことも出来ます。20分ごとに希望者がいれば開催されている醸造見学ですので、時間が限られる観光で訪れた際も、気軽に参加しやすいという点がお勧めの一つでもあります。
今後小樽市へ訪れる際は、小樽ビール醸造所で無料見学に参加し、旅の思い出に美味しい小樽ビールを味わってみることをお勧めします。