皆さんは紹興酒を飲んだことがありますか?
日本では中国酒と言えば紹興酒というくらい、中国酒の代名詞みたいに捉えられています。
スーパーや酒販店では大体1~2種類、日本の酒類大手が輸入しているものが、比較的リーズナブルな価格で売られているのを目にします。中華料理のレシピにもよく登場するので、その部分では馴染みのあるものだとも言えますね。大体の中華料理店にも置いてあるとは思いますが、いろんなお酒が簡単に手に入る日本においては、飲用するという部分において、どちらかというとまだまだマイナーな部類なのではないでしょうか。小売店の品ぞろえなどにそれが表れているように感じます。
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紹興酒ってどんなお酒?
紹興酒とは中国浙江省紹興市で造られる「黄酒(ホアンチュウ)」、すなわち醸造酒のことです。ちなみに中国では蒸留酒は「白酒(パイチュウ)」と呼ばれます。
ここまで書いてお気づきかと思いますが、紹興酒は中国において数ある黄酒の中の代表的な種類のひとつにすぎず、「紹興酒」というのが「シャンパーニュ」の様な原産地呼称なのですね。いまでは周辺地域において同様の方法で造られたお酒も紹興酒と呼ばれますが、伝統的には紹興市において鑑湖というところの水で仕込まれたものの様です。「陳年」という名称がつけられているものもありますが、これは台湾において長期熟成されたものをこう呼びます。「老酒(ラオチュウ)」という言葉もよく耳にしますが、これは長期熟成された黄酒を指します。
紹興酒はお米を使って造られる醸造酒です。日本酒と同じですね。しかし日本酒がうるち米を使うのに対して、紹興酒はもち米から造られます。醸造工程も「並行複発酵」により醸される日本酒と似ています。もっともこの技術は中国から伝わったのではないかとも言われています。これによりアルコール度数も日本酒と14~18度とだいたい同程度になっています。
日本酒との相違点は麦麹を使うこと(日本酒は米麹)、そして日本酒の様に米を磨かないというところです。そのため旨味成分であるアミノ酸が豊富で、良い意味での雑味も味に作用していると言えるでしょう。一般的に熟成させてから出荷されるという点も、大きく違うところです。
紹興酒の種類は大きく分けて4つあります。まずすべての製法の基本となる「元紅酒」。こちらは中国では最も一般的に飲まれているタイプの様で、1~2年の熟成のあと出荷されます。それに対して「加飯酒」は日本で一般的に売られているタイプで、もち米と麹を1割ほど多くして醸され、3年以上熟成されてから出荷されます。
「善醸酒」は水の代わりに元紅酒を使って造られる贅沢なタイプ。濃厚で芳醇な風味になります。そして「香雪酒」は元紅酒に麹を追加し、さらに紹興酒の酒粕から造った焼酎を加えて造られます。最も甘みが強く、アルコールも20度になります。フォーティワイド・ワインみたいな感じでしょうか。
味わい・飲み方
濃い茶褐色の色調で、スッキリとしていながらもしっかりとしたコクと旨味を持っています。日本酒ほど甘みも強くなく酸味も支えてくれるので、食事には合わせやすいのではないでしょうか。アルコール度数的にもワインや日本酒と同じ感覚で飲めます。
甘み渋みの出方は熟成の度合いによって違ってくるようです。3年あたりだと渋みがちょっと固い気がしますので、5年あるいは8年くらいのものが値段的にも気軽に飲めてバランスが良い気がします。10年、12年やそれ以上の熟成を経て、よりソフトに深いコクが楽しめるようになっていきます。
飲み方ですが、筆者が紹興酒にハマったきっかけになった餃子店の中国人店主は、本国では常温でストレートが普通と教えてくれました。紹興酒そのものの風味をダイレクトに味わうにはやはりストレートがおすすめ。もちろんロックや日本酒の様にお燗にしても美味。昔はザラメや氷砂糖を入れて飲むのが、日本では一般的でした。本国でも一部地域にある飲み方の様ですが、他説によると日本に紹介され始めた当初は、品質のバラつきがあるものも多く、それを中和するために砂糖を入れる飲み方が広まったとも言われています。
昔と違い、様々な方法で良質な紹興酒が手に入る時代になりました。皆さんも楽しんでみてはいかがでしょうか。