サントリーから新しいノンアルコールビールが発売されました。
【ザ・ベゼルズ(以下ベゼルズ)】です。
サントリーのノンアルコール飲料といえば、ビールテイストの「オールフリー」やサワーテイストの「のんある酒場」シリーズ、「ワインの休日」シリーズなどがあります。
今回発売された「ベゼルズ」はビールテイストの飲料ですが、既存商品の「オールフリー」とは、どう違うのでしょう。
目次
脱アルコールスピリッツによる可能性
オールフリーとベゼルズは両者とも、ビールの原料である麦芽やホップを使っており、また製法に関しても発酵過程を除いてビールと同じような工程で設計されています。
そのため原料由来のビールらしい味わいを感じることができます。
決定的な違いはベゼルズに使用されている「脱アルコールスピリッツ原酒」です。
アルコール分を抜いたスピリッツを添加することで、ノンアルコール飲料にありがちな、味わいや香りのフラット感を軽減していると思われます。
スピリッツは発酵と蒸留の過程を経ているため、さまざまな香気成分が含まれています。
アルコールの分子は、揮発性のある香気成分を溶かし込む溶媒であり、その分子を鼻の受容体に届ける役割を担っています。
そのアルコールを脱しているためウイスキーやラムのようなスピリッツが持つ香りや味わいの広がり方はありませんが、香気成分は残っているため、ベゼルズの味わいの厚み、複層化に一役買っているというわけですね。
熟成による可能性
ビールは「ラガーリング」や「寝かせる」と呼ばれたりもしますが、いわゆる貯酒工程があります。
低温で熟成させることで、酵母やタンパク質が沈澱し、雑味が減ったり、炭酸ガスの自然溶解により飲み口が整うという効果が得られます。
ベゼルズもビールの貯酒工程・熟成に着想を得て旨みを引き出しているそうです。
ビールと全く同じ工程ではないと思われますが、低温で一定期間寝かせることで、香味成分のバランスを整え、副原料由来の味わいの違和感を和らげる効果が得られるのではないでしょうか。
また熟成させることでしか得られない香味や、工程の中で自然に得られる炭酸ガスのきめ細かさを得る狙いもありそうです。
以上のように「脱アルコールスピリッツの添加」と「ビールを模倣した熟成工程」により、オールフリーとの味わいの差別化を図っているのですね。
味わいの特徴─オールフリーとの違い─
実際にベゼルズをグラスに注いでみると、まず泡立ちからオールフリーとの違いを感じられます。
一般的なビールと遜色ない泡立ちで、見た目から期待が高まります。
オールフリーを含む、ノンアルコールビールの草分け的な商品は、サイダーのような比較的大きな泡で、ビールのような泡立ちはあまり起きません。
もちろん温度や注ぎ方なども影響しますし、改良も重ねられているようで、登場した時よりもかなりビールライクな見た目と味わいが感じられるようになったと、個人的には思います。
グラスに顔を近づけると、麦芽の香ばしさとホップの爽やかなアロマが立ち上がります。従来のノンアルコールビールにありがちな「人工的な香り」や「甘ったるいシロップ感」は控えめで、第一印象から好感が持てます。
口に含むと、炭酸の刺激は比較的穏やかで、きめ細かい泡とともに麦芽の旨みがじんわり広がります。苦味はオールフリーよりやや強めで、後口にわずかな渋みとエグみが残るのが気になるところですが、それが逆に「飲んだ感」を演出しているようにも思えます。
特に注目したいのは、飲み込んだ後の余韻。オールフリーはすっと消えてしまう印象がありますが、ベゼルズは香りの層がいくつか残り、ビールらしい“余白”を感じさせます。これは脱アルコールスピリッツ由来の成分や、模倣的な熟成工程の効果が効いている部分でしょう。
良い点と気になる点
まず良い点から。
泡立ちや見た目の完成度が高く、ビールとしての期待感を満たしてくれます。
また脱アルコールスピリッツの効果で、香りや味わいに奥行きがあり、ノンアルビール特有の軽さが抑えられているからか、ビールらしい飲みごたえを感じられるのが良いですね。
次に気になる点。
後味のやや不自然な渋みやエグみが気になります。
原料の苦味量の影響か、苦味の質がビールと完全に一致しているわけではなく、独自のクセがありますね。
まとめ
ベゼルズは、オールフリーに比べて「見た目」「香り」「余韻」においてワンランク上の完成度を感じさせるノンアルコールビールです。一方で、まだビール本来の奥深さには及ばず、あくまで“ビールの代替”という立ち位置に留まっているともいえます。
ただ、日常の食事や休肝日の選択肢として考えれば、十分に「飲む楽しさ」を与えてくれる一本です。既存のノンアルビールに物足りなさを感じていた人には、一度試してみる価値があるでしょう。
皆さんもぜひ試してみてください。