“淡麗辛口”、“濃醇旨口”など日本酒の味わいを表す言葉はいくつかあります。基本的なところでは辛口と甘口。どのように判断すればよいのでしょうか。日本酒のボトルに表示されている、いくつかのキーワードを見ていきましょう。
目次
日本酒度
日本酒の甘辛を判断する指標として、よく「日本酒度」が用いられます。
「日本酒度+10」「日本酒度-2」の様に、プラス・マイナスで表され、プラスが辛め、マイナスが甘めとされていますが、果たしてこれは正しいのでしょうか。
日本酒度とは、水と比べてお酒の中にどれだけの糖分などが入っているかを表したものになります。量が同じだとすると、純粋なアルコールは水に比べて比重が軽くなります。そして日本酒には様々な成分が含まれていて、なかでも特に多い糖分がたくさん含まれていると、そのお酒は重くなります。
4℃の水と同じ比重を日本酒度0として、それより重い、すなわち糖分がたくさん含まれるとマイナス、逆に糖分が少なく軽い状態をプラスと表現しています。この部分ちょっとややこしいですね。糖分がたくさん入っているからプラスではないのですね。
さてそれでは糖分があまり含まれていないプラスのお酒が辛口、そして糖分がより含まれているマイナスのお酒を甘口と考えてよいのでしょうか。
日本酒の中に含まれているものとして、特に多いのは糖分と書きましたが、これが違う成分であった場合、例えばにごり酒など明らかに水より重い成分が入っていたりすると、たとえ糖分がそれほど含まれていなくても、それだけで日本酒の比重は水より重く、すなわちマイナスになります。
アルコール度数とも密接な関係があります。日本酒の度数は通常16~17度、原酒だと20度以上、最近はアルコール控えめの物も出てきています。アルコールは水より軽いという話をしましたが、ということはアルコール度数が高ければ高いほど比重が軽くなるということです。すなわち同じ日本酒度で比べた場合、度数が高いお酒の方がより糖分が含まれている可能性があるということです。
結論として、日本酒度は甘辛を判断するひとつの目安にはなり得ますが、それを確実に表す指標ではないということは知っておきましょう。
実際には、他の味の要素とのバランスによって、味の感じ方は変わります。
酸度
これは名前の通り、どのくらいの酸味を持つかということを表しています。
日本酒に含まれる酸は主にコハク酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸です。コハク酸は貝類などに含まれる旨味成分、クエン酸やリンゴ酸は果物の酸味、乳酸は穏やかな柔らかい酸味。リンゴ酸や乳酸はワインに含まれる酸味としても知られています。
酸味が苦手な方は酸があるお酒を敬遠したりしますが、一方で酸をほぼ感じないお酒は、甘みもベタっとフラットに感じ、退屈な酒質になります。適度な酸は、日本酒にしっかりした骨格を与えます。
アミノ酸度
言葉としてもよく知られていますが、アミノ酸はコハク酸と同じく旨味成分の一種です。
日本酒にどれだけのアミノ酸が含まれているかで、そのお酒の旨味の感じ方が変わります。
辛いお酒とは
上記したいくつかの要素のバランスにより、日本酒は淡麗なのか濃醇なのか、辛口なのか甘口なのかに分けられます。
しかしそもそも、辛口の日本酒ってどういうお酒でしょう。
日本酒は米から来る特有の甘みを備えており、日本酒度+12、超辛口などと書かれていても、相当な甘みを感じるお酒もあります。
辛口というとドライ・ビールの様なピリッとした辛さや、辛口の白ワインの様に、甘みが抑えられたスッキリした辛さをイメージします。日本酒の場合はどちらかというと、酸味や苦み、アルコールのボリューム感などの要素によって、甘みの感じ方が抑えられたお酒を指すのではないでしょうか。少なくとも甘さが全くないということではなさそうですね。