雪が積もる3月中旬、弘前市内にある2軒の酒蔵の直売所に立ち寄ってきました。今回はそのうちの1軒、国内外で数々の受賞歴を誇る松緑酒造のレポートをお送りします。
目次
松緑酒造とは
醸造アルコールを一切使用しない純米蔵である松緑酒造の歴史は、江戸時代にさかのぼります。当時は酒母造りを生業としていたそうです。酒母とは、酒米をアルコール発酵させるのに必要なもので、日本酒の土台となります。1904年から日本酒造りをスタートし、1959年からは株式会社齋藤酒造として日本酒造りを続けていました。
2016年には職人の高齢化や後継ぎ不足により経営が危ぶまれましたが、「日本のお酒やワイン、ウイスキーなどはもっと世界的に評価されるべき」という外資系企業の「チャータードグループ」のオーナーから資本提携を受けて蔵を存続させたそうです。
オーナーと知り合ったきっかけは、ユダヤ教の食事規定に従っていることを示すコーシャ認証(KJマーク)を取得したことです。コーシャ認定は、厳格な衛生基準や品質管理のもとで造られていることの証明であり、安心できる高品質な食品の基準でもあります。120年の歴史がある酒蔵ですが、柔軟な姿勢で時代に向き合っていることが伝わるエピソードです。
2019年には社名を「株式会社松緑酒造」に変更。人・水・米を大切に、伝統を守りながら革新を進めていくそうです。
▲仕込み水は白神水系岩木山の伏流水を使用(写真は弘前公園で撮影)
*参考:ハンズオンSAKE「第44回オンライン酒蔵留学【青森県・松緑酒造】 」
*参考:松緑酒造公式ホームページ
松緑酒造への行き方
私は弘前城からタクシーで行ったのですが、弘前駅から松緑酒造へは、弘前駅前のバスターミナルから出ている弘南バスで行けます。
乗り場は7番線乗り場。いくつかの路線が乗り合わせていますが、駒越線(城西大橋経由)に乗車すれば、最寄りのバス停「駒越」は酒蔵の目の前です。帰りはバスを利用しました。
松緑酒造直売所
住所:〒036-8366 青森県弘前市大字駒越町58番地
営業時間: 10:00~16:00
定休日:土日祝
レンガの煙突が印象的です。写真の左側に続く塀の奥には見事な松がそびえていたらしいのですが、見落としてしまいました。次回訪れる時の楽しみにとっておきたいと思います。
弘南バスは前乗り前降りの後払いシステムです。現金払いなら乗る時に整理券を取り、交通系カードを使う場合には入り口でピッ!として乗り込みます。運賃は一律ではなく、距離に応じて変わります。駒越から弘前駅までの乗車時間は約15分、片道の運賃は340円でした。
慣れない土地でバスに乗るのは緊張しますが、車内表示もわかりやすくて安心して乗れました。
こちらで紹介した行き方は、2025年3月13日時点のものです。詳しくは弘南バスのホームページ にてご確認ください。
松緑酒造での有料試飲
店内に入ると、左手には暖炉があり縁側はカフェスペースになっていました。
雪囲いと雪でほとんど窓が閉ざされていますが、その向こうには素敵な中庭が広がっているそうです。この時は、暖炉にリンゴの木をくべており、ほんのりと甘い香りが漂っていました。
こちらでは、有料試飲を楽しめます。お土産の利猪口がついて1100円(税込)です。
試飲した日本酒は以下の5種類です。写真の左からご紹介します。
六根 純米吟醸 華さやか
アルコール度数を下げ、甘やかに仕上げたというお酒です。湧き上がってくるようなフルーティーさと「澄み切った」との表現がぴったりな余韻の長い酸があり、暑い日にしっかり冷やして楽しみたいと感じられました。
タイプ:純米吟醸
使用米:青森県産華さやか (100%)
精米歩合:60%
アルコール分:13度
販売価格: 720ml 2,200円(税込)
六根 サファイア
【受賞歴】
・Kura Master 2024 純米酒部門:プラチナ
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019・2024 プレミアム純米の部:金賞
・Oriental Sake Awards 2022:チャンピオンメダル受賞
・IWC 2019 Sake:金賞
日本酒らしい濃厚さとキレがあり、お刺身から西京味噌のような強い味まで、どんな料理にも寄り添ってくれる1本です。
タイプ:純米吟醸
使用米:青森県産華想い100%
精米歩合:55%
アルコール分:16度
販売価格: 720ml 2,530円(税込)
1.8L 4,400円(税込)
六根 タイガーアイ
【受賞歴】
2019年度全米日本酒歓評会:金賞
Kura Master 日本酒コンクール 2019:金賞
2018年度全米日本酒歓評会:銀賞
OFF TOKYO 2017 酒類コンクール:金賞
辛口さと日本酒の旨味を併せ持った1本。酸があるので幅広い料理に合うのですが、特に秋の味覚と合わせたいと感じました。
タイプ:純米吟醸
使用米:青森県産華吹雪100%
精米歩合:60%
アルコール分:16度
販売価格: 720ml 2,200円(税込)
1.8L 3,960円(税込)
六根 ルビー
【受賞歴】
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード2018:最高金賞受賞
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019・2020・2025:金賞
ここまでの日本酒はリンゴのような酸味でしたが、こちらはベリー系を思わせる酸味です。甘やかさが最初に感じられるのですが、余韻に残る酸味がすっきりとした印象を与えます。「ワイングラスでおいしい」のも納得。日本酒を飲みなれていない人にもおすすめしやすい1本です。
タイプ:純米吟醸
使用米:秋田酒こまち100%
精米歩合:60%
アルコール分:16度
販売価格: 720ml 2,420円(税込)
1.8L 4,180円(税込)
六根 純米吟醸 吟烏帽子
【受賞歴】
・Singapore sake Challenge 2023:純米吟醸の部:銀賞
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード2023 プレミアム純米の部:最高金賞
・IWC 2022 Sake 純米吟醸の部:銀賞
酒米の吟烏帽子は、青森県で開発された新品種とのことで、青森県内の酒蔵ではこのお米を使って、いかに蔵の特徴が感じられるお酒を生みだすかを工夫しているそうです。松緑酒造さんでは、県酵母を使用して華やかという表現がぴったりのお酒に仕上げています。口の中で旨味が滑らかに広がり、今回テイスティングしたお酒の中でも圧倒的な余韻の長さが感じられました。
タイプ:純米吟醸
使用米:青森県産吟烏帽子 (100%)
精米歩合:50%
アルコール分:16度
販売価格: 720ml 2,310円
1.8L 4,290円(税込)
素敵な雰囲気の女性が対応してくださったのですが、後で社長の千田祐理子さんだと知りました! 10人ほどの小さな酒蔵とのことですが、こだわりと遊び心、そして熱量を持って酒造りをしている蔵だと伝わってきて、すっかり松緑酒造のファンになってしまいました。さらに、どの日本酒もコストパフォーマンスが最強です。
この日は2本のお酒と、板粕を購入して帰宅。松緑酒造はオンラインショップもあるので、ぜひ活用したいと思いました。お花見などで弘前に行く予定がある方に、ぜひ立ち寄って欲しいと思える酒蔵です。