2025年3月、カリフォルニアワイン協会(CWI)は、東京・丸の内のパレスホテル東京と大阪・ヒルトン大阪にて、「カリフォルニアワインAliveテイスティング2025」を開催。セミナー「サンタバーバラ・カウンティ 〜2000万年の時が織りなすワイン産地〜」では、南カリフォルニアのサンタバーバラAVAに焦点が当てられました。
これまでフェス・パーカー、オー・ボン・クリマ、ブリュワー・クリフトンのパートを紹介してきましたが、今回はクラウン・ポイントの内容をご紹介します。登壇したのは、クラウン・ポイントのエステートディレクター、AJ・フェアバンクス氏。畑の管理から醸造、施設運営、顧客体験までを一貫して担う人物です。
目次
クラウン・ポイントとは
クラウン・ポイントは、サンタバーバラ郡の一番東にあるハッピー・キャニオン・オブ・サンタバーバラAVA(2009年認定)に位置するワイナリー。冷涼な海から最も離れた場所にあり、山々が海風を遮ることで温暖な気候が保たれています。この環境は、カベルネ・ソーヴィニヨンを中心とした、カベルネ・フラン、メルローなどのボルドー品種の栽培に理想的です。
畑は標高230〜290mの急斜面(傾斜30度)に広がり、土壌は海岸由来の堆積物からなる「サンタ・イネス・ローム土壌」。水はけが良いのが特徴です。南向きの立地によって豊富な日照を浴びてブドウは育ちます。フェアバンクス氏はこうした環境について、「海から18〜20km離れていても、海の影響を感じる美しいカベルネ・ソーヴィニヨンが生み出せるのです」と語ります。
沿岸性のカベルネ・ソーヴィニヨンとは
今回のテイスティングでは、「クラウン・ポイント カベルネ・ソーヴィニヨン2021」が紹介されました。
Crown Point Cabernet Sauvignon 2021
産地:ハッピー・キャニオン・オブ・サンタバーバラ
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン97%、プティ・ヴェルド3%
アルコール度数:14.5%
価格:オープン価格
自社畑のブドウのみを使用し、約15ヘクタールの斜面に広がる畑では、浅い表土の下にブドウが根を伸ばすと、古い火山性土壌が広がっています。この地質が収量を抑え、沿岸性の個性豊かなカベルネ・ソーヴィニヨンを育てる鍵となっています。
2021年ヴィンテージの特徴
2021年のカベルネ・ソーヴィニヨンは、「火山性土壌由来の力強さと、樽によって表現したきめ細かいタンニンが見事に調和した一本」とフェアバンクス氏は表現。フレンチオーク樽(新樽率50%)での22ヶ月の樽熟成と瓶内熟成を経て、若々しさと複雑さを兼ね備えた味わいに仕上がっています。
フェアバンクス氏は「このきめ細かいテクスチャーこそが沿岸性カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴であり、2021年を選んだ理由です」と語ります。
現在は、主に2016~2019年ヴィンテージが流通しているので、2021年は若いヴィンテージとなります。試飲してみると、甘やかさと厚みとともに、きめ細やかなタンニンが確かに感じられました。
著名なワイン評論家ジェブ・ダナック氏は、このワインに98ポイントを付け、「ほぼ完璧といえる仕上がりで、おそらくサンタバーバラ郡で味わった最高のボルドーブレンド」と評しています。
ブレンドのバランス
ハッピー・キャニオンでは、カベルネ・ソーヴィニヨン主体のワイン造りが主流です。補助品種としてメルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドなどが加えられますが、その役割はヴィンテージやワイナリーごとに異なります。
例えば、2019年は、カベルネ・ソーヴィニヨンが80%、カベルネ・フランが20%という構成でした。一方、2021年はカベルネ・ソーヴィニヨンが97%、プティ・ヴェルドが3%という構成です。決まったレシピはなく、その年の畑の表情に応じて柔軟にブレンドが調整されています。
この2021年ヴィンテージには、世界的なワインコンサルタント、ミシェル・ロラン氏の助言が反映されています。彼は「ブレンドマスター」とも称され、世界中で数々の名醸造を手がけてきました。
ローラン氏はこれまで、プティ・ヴェルドの使用比率を徐々に高める傾向にあり、10〜15%まで引き上げることもありました。しかし、2021年に関しては「今後はルールを定める。プティ・ヴェルドは3%以上絶対に使わないように」と明言しました。その背景にあったのは、プティ・ヴェルドの強い個性が、主体品種よりも際立ってしまうことへの懸念です。
ブレンドの試行錯誤からもわかるように、クラウン・ポイントは常に進化しています。「沿岸のカベルネ・ソーヴィニヨンの新たな基準を確立する」というヴィジョンのもと、土地の個性と品種の魅力を最大限に引き出す造り手として、これからも注目すべき存在であると感じました。
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