コルク栓を抜かずにワインが注げる画期的な器具、コラヴァンをご存じでしょうか。
このコラムでは、長期にわたりそのコラヴァンを使用してみた感想を、レポートいたします。
目次
コラヴァン(CORAVIN)とは
2013年にアメリカで発売されたワイン保存用器具です。開発したのは、医療機器の開発に携わっていたグレッグ・ラブレヒト氏。針をコルクに刺してワインを抽出するあたり、医療機器開発の経験がうかがえます。
かの有名なワイン評論家のロバート・パーカーも、“この35年間で最も画期的な発明”と大絶賛の器具です。
仕組みと使い方
ボトルネックを挟み込むクリップのついた本体部分とそれに装着されたニードル(針)、ガスカートリッジという構成になります。
まず本体をワインボトルにクリップで固定し、針をコルクに挿入。本体上部のトリガーを引くとガスがボトル内部に入り、その分のワインが注がれる仕組みです。針を抜いた後は、コルクの圧力で自然に針穴がふさがるので、再度ワインセラーに寝かした状態で保存できます。実際、逆さにしてもワインは出てきません。
コルクに針を刺すのはキャップシールの上からでOK。ただし、使えるコルクは天然の無垢コルクのみです。圧縮コルクにも使えないことはないですが、あまり向いていません。樹脂コルクは、針などを破損する恐れがあるので、やめた方が良いでしょう。
ちなみにガスに関して、オリジナルはアルゴンガス使用ですが、2017年の日本導入時には食品衛生法により、日本でアルゴンが認められていなかったため、日本仕様として窒素ガスが使用されていました。その後2019年の法改正により日本でもアルゴンが認められたため、現在はオリジナル同様アルゴンガスとなっています。
使用してみて
利用環境としては、職場のワインバーにて、高価格帯のワインをグラスでサーブするために、コラヴァン・モデル2を導入。価格はガスカートリッジも含め7万円ちょっとでした。2018年の秋に導入したので、すでに2年以上は使っています。
良い点としては、やはり酸化はかなり抑えられます。そのために開発されたものなので、これに尽きるのではないでしょうか。問題はどのくらい抑えられるのかということですよね。
1年くらいは持つとどちらかで目にしたことがありますが、私的にはワインにもよりますが3か月くらいが限度の様な気がします。ワインの圧力でコルクがふさがるといっても、やはり厳密にいえば微細な穴は通っているわけですし、空気やガスの出入りはあるため、徐々に酸化は進んでいると思われます。通常なら抜栓後、3~4日で酸化する過程を3か月くらいかけてゆっくり行われる感じでしょうか。もちろんその間は楽しめますので、充分でしょう。ワインによっては閉じていたものがゆっくり開いていく感じも楽しめます。これにより料飲店ではサーブできるグラスワインのラインアップが広がり、個人の使用でもいろいろなワインを一度に少しずつ頂けるので、ここもメリットの一つでしょう。
さてあまり見かけないデメリットです。あくまで個人的な感想です。
まず注ぐ姿が美しくない!慣れればある程度美しい所作に近づくことも出来ますが、やはり普通にボトルからサーブする姿に比べ違和感はあります。そして極細い針からある程度の勢いでワインが出てくるため、グラスの中でワインが散らばりグラスの内側を汚してしまうのも難点。
次にこれは業務用として頻繁に使っているせいもあるかもしれませんが、コルクのカスがしばしば液面に落ちてしまいます。お客様には嫌われるので、その分ロスになったりします。個人使用ならそのまま飲んでしまえばよいですけどね。
もっともこの部分については、コルクカスや澱が入らないようにする対策ニードルも発売されています。コルクによっては結構固いものもあるので、気を付けていてもだんだんニードルが曲がってきます。これも業務量によるものでしょう。基本的にはニードルは表面のフッ素コーティングがはがれ、滑りが悪くなるまでは交換の必要はないです。
いま一番気になっているのが、ランニングコストです。ガスカートリッジ1本につき、当初はボトル7杯取り換算で20杯ちょっと注げていましたが、今は12~13杯くらいしかとれません。これは経年劣化ともとれますが、いずれにせよガスカートリッジ1本1500円もするので、この悪化はかなり大きいです。これについては今後も原因を追及予定です。
利用価値アリ
今ではラインナップも増え、3万円台の物から電動の10万円越えのものもある様です。ニードルも前述の対策ニードルや、ヴィンテージワイン用など用途別製品も販売されています。それらも含めて価格が少々張りますが、使用機会や用途をしぼれば、結構利用価値があるのではないでしょうか。いま気になっているのは、以前は無かったスクリューキャップ向けの対策キャップです。
これからも改良が進み、使い勝手はどんどん向上していくでしょう。