近年、世界的な流行が続いているロゼワイン。ロゼの一大産地、フランスでは既に白ワインより消費されているそうです。筆者が勤務しているワインバーでも、海外からのお客様がロゼをご所望される率は実感として高く、そのことからも人気のほどが裏付けられます。海外のレストランで見た、マダムたちがロゼを片手にランチをしている光景は、ロゼワインの色も相まってなんとも優雅でしたね。
しかしなぜか日本では人気が伸びません。日本ではどうやらロゼ=甘口ととらえられているようです。推測するに、これまで長らく日本で出回っていたロゼワインは、甘みを持ったものが多かったのではないかと思われます。
もちろん造りの良い甘口ロゼもありますが、現在の主流はやはり辛口で、食事にもしっかり合わせられます。
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なぜ今ロゼなのか?
ロゼが流行っている理由はいくつか考えられますが、よく言われているのは“食のライト化”でしょう。重めの料理のイメージがあるヨーロッパ各地やアメリカなどで、ボリューム的にヘルシーなイメージのある日本食が好まれていたり、和食の素材や技法を積極的に取り入れている現地フレンチレストランも出てきていると聞きます。有名なカルパッチョは本来、牛肉を使用し、マヨネーズ様のソースをかけた北イタリアの料理ですが、日本からの逆輸入の形で現地イタリアでも魚を使用して作る店が出てきたというのも、ひとつの例かもしれません。
そうなってくると、赤ワインより断然ロゼの方が合わせやすい状況が増えてくるのではないでしょうか。もとよりロゼは守備範囲が広く、さまざまな料理に気軽に合わせることができます。
もちろん日本がロゼワインブームを作り出していると言うつもりはありません。世界的な健康志向の高まりによって、皆おのずと求めるものが定まってきているのかもしれませんね。インターネットの普及によるボーダーレスな情報化社会により指向が多様化し、現実社会においても人やモノが移動しやすくなっているというのも、一因かもしれません。
ロゼワインは赤と白を混ぜている?
答えは一部例外がありますが“No”です。これはロゼの作り方を聞かれるときに、必ずと言っていいほど聞くフレーズです。
ロゼの作り方で最も一般的なのが“セニエ法”です。赤ワインの原料である“黒ブドウ”を使い、途中までは“皮ごと発酵”という赤ワインの製造工程をたどります。黒ブドウの果皮から徐々に色素が抽出され、ロゼ色になったところで圧搾し、果皮を取り除きます。そこからは“搾った後の液体だけ発酵”させる、白ワインの醸造工程になります。
こうして赤の複雑さと白の軽快さが備わったロゼワインが生まれます。
赤と白の出来上がったワインを混ぜるというのは、EU諸国においては法で禁止されています。唯一の例外がフランスのロゼ・シャンパーニュです。シャンパーニュのロゼは、上記のセニエ法などの他に、赤白のワインを混ぜて造ることも許可しています。ドイツのロートリングという種類のロゼも赤白を混ぜてつくるものですが、厳密にはワインを混ぜるのではなく、発酵前の段階で混ぜられます。
直接圧搾法というのもあります。黒ブドウを皮ごと搾り、ほのかに色づいた果汁を白ワインの様に醸造するものです。アメリカなどでは“ブラッシュワイン”と呼ばれているものですね。
料理と共に…。
前述したようにロゼは守備範囲が広い万能選手です。細かい事を考えなければ、大体ロゼでいけてしまうのではないでしょうか。そういう気軽さもロゼにはあります。
特に和食や日本人好みの中華、コリアン他、アジアの料理には広く合わせられそうです。
色々な食材が入る鍋にも良いですね。鍋の味にもよりますが、昆布だしの持つヨード由来のニュアンスに、サッパリしていながらも少し複雑みを持つロゼがマッチすると思います。
個人的な見解としてロゼは、白の爽快感に赤の奥行きを与えた感覚です。そう考えると、白ブドウを原料に赤ワインの様に果皮ごと漬けて作る、最近流行りの“オレンジワイン”や、うっすらピンク色の“グリぶどう”(ピノ・グリ、ゲビュルツトラミネルなど)の色を残す作り方のワインも、白ワインをベースに複雑さを与えるということで、ロゼの範疇かもしれません。
イタリアではロザートという他に“キアレット”や“チェラスオーロ”という名前で呼ぶ地方があるのも覚えておきたいところ。
前述したセニエ法の由来は、赤ワインの醸造工程から生まれたと言われていますが、いまやロゼは単なる赤ワインの副産物ではなく、バラエティも豊かになってきています。
皆さんも積極的にロゼワインを選んでみませんか?