ベランディング鳥幸をご存じでしょうか? 「高級焼き鳥×ワイン」をコンセプトに、首都圏やニューヨークで店舗を展開する『鳥幸』が、コロナ禍でスーパーなどには流通しない銘柄鶏を出荷できなくなった地鶏生産者を助けるための手段として始めた、新しい食体験をお届けするプロジェクトです。自宅で手軽に『鳥幸』の味が再現できるとあって、新聞やTVなど多くのメディアにも取り上げられています。
今回は特別に『鳥幸』の焼師・小林弘尚さんに焼きのレクチャーの受けながら自分で焼き鳥を焼き、ワインとのマリアージュを教えていただきました。
目次
塩焼きの串には仏・ソーヴィニオン
用意された焼き鳥串はいずれも国内生産量の1-2%、一般の流通にはのらないため、消費者は簡単に購入することのできない希少な銘柄地鶏です。まず最初は、博多地鶏の希少部位「砂肝」、「せせり」、「ぼんじり」の3本を塩焼きにしていただきました。
合わせたのは「シャトー レイノン」のソーヴィニオンブラン2017。フランス・ボルドーにしては珍しく単一品種の白ワインです。
フレッシュなグリーンというより、藁のような深みのある香りとしっかりとした酸が感じられるワインで、ボリューム感のある味わい。シュール・リーに由来すると思われる苦みも感じられ、焼き鳥の塩味とみごとにバランスします。
特に「ぼんじり」という部位は、お尻の上のお肉で脂分が多いのですが、じっくりと時間をかけて焼き上げであるので、お肉の油がきれいに切れていて、かつジューシーな食感で、合わせた白ワインの豊かな複雑な味わいときれいに融合していました。
タレ焼きの串にはボリューム感のあるシラーを
続いて伊達鶏のもも肉をいただきました。伊達鶏は身の締まりがあり、強い食感が特徴の銘柄鶏です。さらに、銘柄鶏3種の食べ比べで、川俣シャモ、比内地鶏、ハチキンシャモをのもも肉を同じタレ焼きにして、それぞれのお肉の食感や味わいの違いを楽しみました。
合わせたのは仏・ラングドックの「ヴィラ・ブランシュ シラー 2018」。ラングドック地方はフランス最大の生産量を誇る産地で、コストパフォーマンスに優れた良質なワインを多く生産している地域です。また、作り手のカルメル&ジョセフは、化学物質を一切使用していない有機農法で作られたブドウを使用した自然派ワインを手掛ける生産者だそうです。ブラックチェリーのような黒っぽいフルーツの甘い香りがあり、ヴォリューム感がありながらもなめらかな飲み口で、甘目のタレ焼き串の味わいを引き立ててくれるようなワインでした。
なぜ、ワインと焼き鳥がマリアージュするのか
焼き鳥に合わせるお酒といえば、焼酎や日本酒など、日本が生み出したお酒がすぐに思い浮かびます。しかし今回、白ワイン、赤ワインを合わせながら焼き鳥をいただき、焼酎や日本酒以上に、銘柄鶏そのものの味わいや生産地によって変化する肉質の違いなどを感じることができました。
小林さんによると、銘柄鶏は1平方メートルあたりで飼育できる数が厳密に決められていて十分な運動ができる環境で、生産者がこだわりぬいた飼料を与えられて育てられているそうです。また運動量が豊富になることから、山の斜面で昼夜の寒暖差がある場所が、銘柄鶏をおいしく育てるのに絶好の環境だということでした。昼夜の寒暖差がある斜面の土地は、ブドウの生育にも適した土地だといえます。近しい環境で育てられていることが、両者の相性を引き立てている理由かもしれません。
なお、鳥幸が八ヶ岳地鶏の生産者と協業してオリジナルの銘柄鶏として生産している「八ヶ岳鳥幸地鶏」は、飼料のなかにワインの搾りかすを混ぜて育成しているそうです。銘柄鶏もワインも、生産者の方々の情熱と愛情にささえられていることを知り、ますます焼き鳥とワインのおいしい組み合わせを追及したくなりました。
ベランディング鳥幸とは
鳥幸が普段から店舗で扱っている“伊達鶏”や“八ヶ岳鳥幸地鶏”などの銘柄鶏は、スーパーでは販売していないため、コロナ禍による緊急事態宣言のなか、成長した銘柄鶏は行き場を失いました。
以前のように外食を楽しむ習慣がいつ戻ってくるのか先行きが見えないなか、鳥幸は銘柄鳥とその生産者を守るために、自宅で本格的な高級焼鳥が楽しめる「焼鳥ミールキット」を開発し、銘柄鶏の消費を少しでも促進したいと考え、べランディング鳥幸のプロジェクトをスタートしました。
オンラインストアから注文すると、銘柄鳥とトリュフ塩、黒七味などのこだわりの調味料がセットになった「焼き鳥ミールキット」と、このために開発された専用の焼き台が一緒に届きます。そしてYoutubeに公開されている「べランディング鳥幸チンャネル」では、焼師・小林さん直伝による、部位別の焼き方動画が公開されていてるので、日本全国どこにいても手軽にご自宅で鳥幸の味が楽しめます。
ちなみにべランディングという名称ですが、お部屋のなかで焼き鳥を焼いても煙はほとんど出ません。「ホットプレートなどで焼くと、お肉から落ちた油が鉄板で熱せられて煙が出ますが、専用の焼き台を使えば下部の水を張った部分に油が落ちるので、ほとんど煙は出ないんです(焼師・小林さん談)」
一度専用の焼き台をゲットしてしまえば、あとはさまざまな銘柄鶏のミールキットを取り寄せるだけでOK。おうち飲みの時間が、いっそう楽しくなることは間違いありません。
べランディング鳥幸 https://fanfuntoriko.thebase.in/
<取材協力>
東京レストランツファクトリー株式会社 http://www.tokyo-rf.com/