セブンプレミアムの《ヴィノセント・テンプラニーリョ》。スペインの有機栽培のぶどうにこだわる、ボデガス・ラトゥエが手がけます。その魅力は、なんといってもジューシーな果実味。もぎたてのぶどうを頬ばったかのように、のどを潤わせてくれます。ただひとつ惜しむらくは、その甘味に〝しまり〟がない点。それゆえどうしても、全体的に〝もっちゃり〟とした印象がぬぐえません。たとえば、甘口が主流の江戸前鮨の玉子。ひとつまみの塩をくわえることで甘さがひきしまり、タネの旨味が際立ちます。このワインに期待する味の〝ひきしめ役〟は、ずばりスパイス香。くちに含んだあと、黒コショウがほのかに香るだけで、その印象は大きく変化するはず。テンプラニーリョ特有のふくよかな果実味が、濃厚かつすっきりとした甘味に感じられます。
そんな《ヴィノセント・テンプラニーリョ》なら、通常、白や泡を合わせる「鮨」とも調和。なかでも「穴子」は最たる例。濃厚なタレとワインの果実味が折り重なるように融合し、上品な穴子の旨味を包み込むように引き立てるのです。
ほんのわずかなスパイス香で、マリアージュの幅がぐっと広がる。そんな可能性を秘めた一本です。