ワインを飲む人もそうでない人も、良く耳にする言葉があると思います。「赤ワインは体に良い」という言葉です。たしかに赤ワインにはポリフェノールが多く含まれており、ポリフェノールを摂取することは体に良いなどという話を聞きます。そもそもポリフェノールとは一体何でしょうか?
ポリフェノールとは、植物が光合成によって生成する色素や苦みの成分で、活性酸素による酸化から体を守る抗酸化物質のことです。活性酸素が体内で必要以上に生成されてしまうと、その酸化・殺菌力によって正常な細胞を傷つけてしまい、様々な病気の要因となります。
ポリフェノールには活性酵素の活動を抑制し、活性酵素の働きに起因する病気から体を保護するといった働きがあるのです。植物や果物が、自らを守るために作り出した成分なので、基本的に植物や果物ならポリフェノールを含んでいます。
つまり果物であるブドウ、特にブドウの果皮や種子にもポリフェノールが多く含まれているという事です。
ポリフェノールには多くの種類があり、その内赤ワインに含まれるものは「アントシアニン」「リスベラトロール」「タンニン」です。
この中でも特に「リスベラトロール」が昨今大いに注目されています。このポリフェノールの種類は、脳の機能を円滑にし、記憶力の回復やアルツハイマー病(認知症)を予防する効果があるというのです。
そのメカニズムは
1.リスベラトロールが胃を刺激する
2.知覚神経を刺激する
3.海馬の神経細胞を再生させ、認知機能を向上させる物質(インスリン様 成長因子-I)増加
4.神経細胞が活性化、再生
5.認知機能が改善する
というものです。
1997年にフランスボルドー大学中央病院の研究チームは、65歳以上の3777名に対して、死亡率、認知症、アルツハイマー症のリスクと、飲酒量の関係を3年間にわたり調査した。ワインを毎日3~4杯(375~500ml)飲んでいる人は、飲んでいない人に比べ、認知症の発症リスクが約5分の1、アルツハイマー症の発症リスクが4分の1、死亡率が約30%低下していたと発表しました。
また、1999年には、イタリアミラノ大学の研究チームが、「毎日グラス1杯半のワインを飲み続けると、記憶力の回復に効果があり、アルツハイマー病などの神経細胞の変性が原因とされる病気にかかりにくくなる可能性がある」と発表しました。
これは、リスベラトロールが外界刺激を伝達する酵素「MAPキナーゼ」を7倍活性化し、脳の細胞同士を結び付ける作用をするためです。
しかし一方で、赤ワインの摂取と認知症予防に因果関係はないといった研究結果もあります。寧ろ、ワインの摂取で認知症発症率が増加したという研究データもあります。(スイス・チューリッヒ大学のKarina Fischer氏らの研究。Nutrients誌2018年6月号に掲載)
ではなぜ、赤ワインが認知症予防に効果的であるといった考えが出るようになったのでしょうか?たしかにワインを飲み、ポリフェノールの効果で認知症予防になっている人もいるかと思います。
しかし、認知症にならない一番の要因は
「ワインを含むアルコールを適度に楽しむような生活習慣こそ、認知症のリスクを減らす最も効果な事である。」
と考えることも出来ます。
つまりワインを常飲する人というのは、単にワインを飲むだけではなく、サラダやチーズ、オリーブオイルを使用した料理といった体に良いとされる食品をつまみに、家族や友人とゆっくり会話を楽しむといったライフスタイルを取り入れることが多いということです。認知症の原因の一つに生活習慣の乱れが挙げられます。
生活習慣の悪化が原因で起こる糖尿病患者が認知症を発症するリスクは、糖尿病でない人と比べると4.6倍も高くなると言われています。
規則正しい食生活と家族や友人との会話を楽しむという事が、ひいては脳を活性化させ認知症予防につながっているのではないでしょうか。