3月5日(水)に、カリフォルニアワイン協会(CWI)が開催したテイスティングイベントに参加してきました。今年のテーマ産地であるサンタ・バーバラの生産者9名と歓談しながら、20本のワインとHAL YAMASHITAの新和食を楽しむ内容です。
目次
ワイン産地、サンタ・バーバラとは
サンタ・バーバラは南カリフォルニアに位置しており、映画『サイドウェイ』の舞台となった場所です。カリフォルニア州のほかのエリアは、山脈は海と並行して連なっていますが、サンタ・バーバラでは映画のタイトル通り、山脈が横向き(サイドウェイ)になっています。そのため、海からの風が山脈に遮られにくいのが特徴です。昼はたっぷりと日差しが当たって気温が上がり、午後になると海からの冷たい風が流れ込んで気温が大きく下がります。日中と夜間の気温差が大きいというのは、ワイン用のぶどうにとっては最適な環境です。また、海洋性由来の土壌にはミネラルがたっぷりと含まれており、海の影響が感じられるワインができます。
冷涼な気候を生かしたシャルドネとピノ・ノワールが有名ですが、栽培されているブドウ品種は70種類を超えます。この日もサンタ・バーバラの多様性を実感できるワインが並んでいました。
9名の生産者が参加
写真後列左からネイティブナインのジェームス・オンティヴロスさん、プレスキィールのトニー・チャさん、フェス・パーカーのスペンサー・シュールさん、サンタ・バーバラワイン生産者協会のアリソン・ラスレットさん、クラウン・ポイントのエージェー・フェアバンクスさん、ブリュワー・クリフトンのグレッグ・ブリュワーさん、ロンゴリアのブルック・クリスチャンさん、ディアバーグ・ヴィンヤードとスターレーン・ヴィンヤードのタイラー・トーマスさん、マージェラムのダグ・マージェラムさん。前列左からサンタ・バーバラワイン生産者協会のフィル・カーペンターさん、オー・ボン・クリマのイザベル・クレンデネンさんです。もう1人、ラバージというワイナリーの方も参加予定でしたが、直前に来日できなくなってしまったとのことで、ワインだけの参加となりました。
青いドレスが目を引くオー・ボン・クリマのイザベル・クレンデネンさんは、サンタ・バーバラを語るのに欠かせないワインメーカーであるジム・クレンデネンさんの長女です。ジムさんが亡くなった後、弟のノックスさんとともにワイナリーとレガシーを引き継いでいます。日本語が堪能なこともあり、彼女の周りからは人が絶えませんでした。
ペアリングを堪能
サンタ・バーバラのワインは食事との相性の良さを大切にしており、和食にもよく合います。会場となったHAL YAMASHITAは、カリフォルニア州のナパ・ヴァレーにも店舗があり、シェフの山下春幸さんは、日頃からサンタ・バーバラのワインと和食の相性の良さを実感されているそうです。提供された食事はこんな感じです。
(カリフォルニアワイン協会の公式写真より)
白身魚のカルパッチョ(上記写真右下)とのペアリングで驚いたのが、「ディアバーグ・ヴィンヤード シャルドネ ドラムキャニオン・ヴィンヤード2019」です。果実の実力が伝わる凝縮感、そしてミネラル感のあるワインで、きれいな酸は長く余韻まで残り、日本酒のキレを思わせます。和食との相性の良さを実感するワインでした。
エビチリ(上記写真中央左)は、出汁入りで和風に仕上げています。日本では中華のイメージが強いエビチリですが、海外では和食としてとらえられているそうです。こちらは、「マージェラム エム・ファイブ ホワイト2023」と合わせました。ローヌ系品種を使った濃密さとまろやかさのあるワインです。もうひとつ「オー・ボン・クリマ ヒルデガード ホワイト・ワイン2021」とも合わせました。こちらはリッチさと美しさを感じるワインです。どちらもミネラル感と味わいが重なり合うような複雑さがあり、山下シェフの繊細なエビチリにぴったりでした。
サンタ・バーバラのレシピを参考にしてアレンジしたという牛肉と味噌を使ったサーモンのステーキ(上記写真中央右)は、まずは「プレスキィール ピノ・ノワール 2022(日本未輸入)」と。軽めだけれど複雑さがあるワインで、味噌にもサーモンにもよく合いました。「オー・ボン・クリマ イザベル2021」は、ジム・クレンデネンさんが長女の名前を付けたピノ・ノワールワインです。チャーミングさの中にスパイス感とほどよいタンニン、きれいな酸があるワインで、ステーキだけではなく幅広い食事と合わせたいと感じられました。
山下シェフの代表料理のひとつである「厳選黒毛和牛の雲丹巻きスモークアブリューガキャビア添え」(上記写真左下)は、ウニが好きだというクラウン・ポイントのAJ・フェアバンクスさんにおすすめのペアリングをうかがいました。
おすすめされたのは、「ネイティブナイン ランチョ・ヴィネードシャルドネ2020」です。とろみを感じるようなシャルドネで、ほどよい潮っぽさがあり、ウニの旨味に寄り添って引き立ててくれるようなワインでした。
お互いのリスペクトが伝わる空間
(カリフォルニアワイン協会の公式写真より)
この日は各生産者さんが2本ずつ、合計20本のワインがサービスされていたので、少しずつすべてのワインを堪能しました。すべてのワインに共通して、きれいな酸とミネラル感があったという印象です。
最後はコレ! と決めていたのが、クラウン・ポイントの「カベルネ・ソーヴィニヨン2017」と「カベルネ・ソーヴィニヨン2021」です。丸みのある果実味ときめの細かいタンニン、きれいな酸で食事とともにもリラックスタイムにも楽しみたいと思えるワインです。長い余韻が心地よく、最後に取っておいてよかったと感じられました。
生産者さんとお話をして感じたのは、スタイルの違うワインを手掛けていても、お互いを理解しており、リスペクトし合っているということです。会場はアットホームな雰囲気に包まれていて、ぜひ現地を訪れたいと思える時間でした。
次回以降の記事では、今回参加されていた生産者さんのうち、フェス・パーカー、ブリュワー・クリフトン、オー・ボン・クリマ、クラウン・ポイントについて、前日のALIVEテイスティング2025で開催されたセミナーの内容をご紹介します。あわせて楽しんでいただけるとうれしいです。
今回取り上げたワインの詳細
*写真はいずれもカリフォルニアワイン協会の公式写真より
「ディアバーグ・ヴィンヤード シャルドネ ドラムキャニオン・ヴィンヤード2019」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):サンタ・リタ・ヒルズ
品種:シャルドネ100%
参考小売価格:1万円(税別)
輸入元:モトックス
「マージェラム エム・ファイブ ホワイト2023」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域): ロス・オリヴォス
品種:グルナッシュ・ブラン44%、マルサネ28%など
参考小売価格:オープン価格
輸入元:ワイン・トゥ・スタイル
「オー・ボン・クリマ ヒルデガード ホワイト・ワイン 2021」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):サンタ・マリア・ヴァレー
品種:ピノ・ブラン、ピノ・グリ、アリゴテ
参考小売価格:オープン価格
輸入元:中川ワイン
「プレスキィール ピノ・ノワール2022」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):サンタ・マリア・ヴァレー
品種:ピノ・ノワール100%
参考小売価格:未輸入
輸入元:未輸入
「オー・ボン・クリマ イザベル2021」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):カリフォルニア
品種:ピノ・ノワール100%
参考小売価格:オープン価格
輸入元:中川ワイン
「ネイティブナイン ランチョ・ヴィネード シャルドネ2020」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):サンタ・マリア・ヴァレー
品種:シャルドネ100%
参考小売価格:9,400円(税別)
輸入元:アイコニック ワイン・ジャパン
クラウン・ポイント カベルネ・ソーヴィニヨン2017」
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ
品種:カベルネ・ソーヴィニョン95%、プティ・ヴェルド5%
参考小売価格:3万円(税別)
輸入元:ファインズ
クラウン・ポイント カベルネ・ソーヴィニヨン2021
AVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域):ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ
品種:カベルネ・ソーヴィニョン97%、プティ・ヴェルド3%
参考小売価格:オープン価格
輸入元:ファインズ