国土が大きな二つの島から成り立っているニュージーランド。その北島中部の東側に広がるホークス・ベイは、ワイン生産量でニュージーランド第2位の生産地域です。豊富な日照量などの恵まれた気候条件や土壌の多様性により、様々な品種のぶどうからワインが造られています。
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アールデコの街
ホークス・ベイにはネイピア(Napier)とヘイスティングス(Hastings)という隣り合った二つの中心都市があり、「双子の都市」とも呼ばれています。ネイピアのダウンタウンはアールデコ様式のカラフルな街並み。1931年この地を襲った大地震により壊滅的な被害を受けた市街地の復興に、当時流行していたアールデコ様式の建築を取り入れ、街のイメージが統一されました。現在では世界有数の「アールデコ建築が残る街」として有名です。
もうひとつ、ネイピアは日本とも深いつながりがあります。林業も盛んなこの都市で、日本の王子製紙が紙パルプ事業を行っていたことから、同社は製品に「ネピア」と名付けました。我々にとってすごく身近な商品名の由来になった街なんですね。
赤ワインが有名な産地
ニュージーランドで最も古いワイン生産地域とも言われるホークス・ベイ。どちらかと言えば赤ワインが有名な産地ですが、育てられている品種は様々。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの品種のブレンドから造られる「ボルドー・ブレンド」や、シラーから造られる赤ワインはこの地域のアイコン。標高の高い少し冷涼な地域からは、優れたピノ・ノワールも造られています。白は国内の30%ほどの生産量を占めるシャルドネや、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブランが有名。そのほか、ゲビュルツトラミナー、ヴィオニエ、グリューナー・フェルトリーナー、ヴェルデホ、アルネイス、モンテプルチアーノ、テンプラニーリョなど多彩なぶどうが造られています。
またこの生産地域にはギムレット・グラヴェルズ(Gimblett gravels)という、特徴的なサブリージョンがあり、日本での知名度はまだまだ低いですが、この地域のぶどうから造られたワインは、国際的にも高い評価を得ています。
天災によって作り出されたこのエリア、ぶどう栽培以外の用途が決まっていた土地に、ぶどうを植えてみたら非常に良い産地だったというのは他にもある話ですが、この地も同様。今ではギムレット・グラヴェルズの生産者団体が、この名前をブランドとして積極的に世界に発信しています。
クラッギー・レンジ・ワイナリー(Craggy Range)
1998年設立の比較的新しいワイナリー。ぶどう栽培とワイン醸造の責任者は最難関のマスター・オブ・ワインの資格を持つスティーブ氏。単一畑からつくるワインに強いこだわりを持ち、高品質なワインを生み出しています。
綺麗な広々としたワイナリーはロケーションも最高。醸造タンクや熟成樽が並ぶ趣のあるセラードアーで、ゆったりとテイスティングを楽しめます。
ストーン・クロフト・ワイナリー(Stone Croft)
ギムレット・グラヴェルズにあるブティック・ワイナリー。比較的冷涼なニュージーランドではシラーの栽培が出来ないと言われていた時代に、オーストラリアからリサーチのために輸入されたシラーを栽培して以来、この地でシラーに力を入れてきたパイオニア的ワイナリー。すべてのぶどうはオーガニックで育てられ、収穫も手作業。ギムレット・グラヴェルズに抱かれた、小ぢんまりとしたセラードアーで、心ゆくまでテイスティングを楽しめます。
ホークス・ベイへはニュージーランドの中心都市オークランドから約400km、車で5時間強という道のりですが、曲がりくねった山道もなくドライブは比較的楽です。もっとも国内線旅客機では1時間ほど。現地ではワイナリー・ツアーもあります。海に面したダウンタウンには、オーシャン・ビューのリーズナブルなホテルもたくさんありますよ!