アメリカにおける注目のワイン産地であるニューヨーク州。
カリフォルニア州、ワシントン州に次いで第3位の生産量を産出するワイン産地です。
先日都内で開催されたニューヨークワイン&グレープ財団主催のワインセミナーに参加し、ニューヨークワインの最新トレンドを伺ってきました。今回はその後編をレポートします。
目次
押さえておくべき産地/フィンガー・レイクス
概要
ここからは、ニューヨークワインの二大生産地をご紹介します。まずはNYCから約5時間、カナダとの国境にまたがるオンタリオ湖に近い、内陸に位置するフィンガー・レイクスAVAです。名称があらわすように、氷河期に削り取られた土地に水がたまって湖となった、細長い形状の11の湖があります。この湖水の効果で、冬場は極端な気温低下がおこらず、夏場には酷暑が和らげられ、ブドウの生育に良い影響をもたらしています。
ワイン用のブドウに限れば、ニューヨーク州最大の産地で、ニューヨークワインの約90%がこの地域で生産されています。また、栽培されているブドウ品種、ワインのスタイルともに幅が広いことが特長で、多様なワインが生産されるエリアです。
白ブドウ品種のリースリングがこの地域を代表する品種で、約70%を占めます。ほかにもシャルドネやゲベルツトライネールあり、黒ブドウ品種としてはカベルネ・フラン、ピノ・ノワールが栽培されていることから、似ている産地としてはドイツがあげられます。
フィンガー・レイクスは湖に囲まれた自然豊かな場所なので、ワインツーリズムのメッカであり、バカンスシーズンには全米からたくさんの観光客がワイナリーめぐりに訪れるそうです。
現地では土地の特性を活かしたワイン造りが盛んで、昨今では海外でブドウ栽培やワイン醸造を学んだ若い世代の生産者の台頭が著しく、ワインの品質向上に寄与しているといいます。
主な生産者
Dr. Konstantin Frank(ドクター・コンスタンティン・フランク)
ニューヨークワインの生みの親ともいうべき、コンスタンティン・フランク博士が1962年に設立したワイナリー。現在は3代目のフレッド・フランク氏が指揮をとります。フィンガー・レイクスのワインをカジュアルに楽しめる「サーモン・ラン・シリーズ」と樹齢の古い自社畑のブドウだけを使った「Dr.フランク・シリーズ」を展開しています。(参照元:GO-TO WINE http://gotowine.jp/ourwines/dkf.html)
Osmote Wine(オズモートワイン)
地元出身のベンジャミン・リカルディが設立した新進気鋭のワイナリーです。フランス、ニュージーランド、オーストラリアでワイン造りの修行後、マンハッタンの有名アーバンワイナリーであるシティ・ワイナリーで4年間アシスタント・ワインメーカーを務め、2014年から自身でワインづくりを始めました。リースリングに注力する生産者が多いなか、敢えてシャルドネを使ったワイン造りに挑戦しています。
(参照元:GO-TO WINE http://gotowine.jp/ourwines/osmote.html)
押さえておくべき産地/ロングアイランド
概要
もうひとつの主要産地は、大西洋岸のロングアイランドAVAです。マンハッタンから東に大きく延びる島で、NYCの人々の身近なリゾート地として人気のエリアです。特に島の東側にあるハンプトンズは富裕層の住宅や別荘が建ち並んでいます。
大西洋に流れ込む暖流のおかげで穏やかな海洋性気候で、ブドウの栽培条件は内陸部より恵まれているそうです。
フランス・ボルドーに似ている産地と評され、実際に主要品種はボルドー系品種である、黒ブドウのメルロ、カベルネ・フラン、白ブドウ品種のシャルドネなどが栽培されています。
NYCから車で2時間ほどの距離なので、年間を通じて週末にはワイナリー・ツアーに訪れる人たちでにぎわいを見せます。
ロングアイランドではすべてのワイナリーがロゼワインを作っていて、ニューヨークのロゼワイン人気をけん引。また、樽香をきかせずに仕上げた「アンオーク・シャルドネ」が最近のトレンドだということです。
主な生産者
Wölffer Estate(ウォルファー・エステート)
ニューヨーカーの高級避暑地として有名な「ハンプトン」に位置する、NYセレブ御用達ワイナリー。NYビジネス界で成功したクリスチャン・ウォルファーによって1988年に設立され、ドイツ出身の醸造家のローマン・ロスによるサステイナブルなブドウ栽培と最新鋭の醸造設備を融合したワイン造りに定評があります。競技馬場なども併設するワイナリーでは様々なイベントも催され、NY上流階級の社交場にもなっています。
特にロゼワインの人気は高く、アメリカのロゼワインブームの一因にもなったと言われるほどです。(参照元:GO-TO WINE http://gotowine.jp/ourwines/wollfer.html)
Shinn Estate Vineyards(シン・エステート・ヴィンヤーズ)
ニューヨークのワイン生産者として、ビオデナミ農法でワイン造りに挑戦する先駆者。米国東海岸での地産地消をテーマとしてレストランの先駆けであった「Home」をマンハッタンで経営していた、バーバラ&デヴィット・シン夫妻によって2000年に設立されました。自然の力を最大限に活かしたワインは、NYCのレストランからも絶大な信頼を誇り、ワイン造りのみならずロングアイランドのサステイナブル農法の礎造りにも大きく貢献しています。(参照元:GO-TO WINE http://gotowine.jp/ourwines/shinn.html)
セミナーではコンラッド東京 エグゼクティブソムリエの森 覚さんがテイスティングを担当され、冒頭「産地の知名度が高いニューヨークワインは、ポテンシャルが高く、お客様との会話も弾むので非常に扱いやすく注目している」とおっしゃっていました。
実際にニューヨークまで飛んで、ワイナリーを訪れたいところですが、それができるまでは国内でニューヨークワインを楽しみたいと思います。
取材協力
ニューヨークワイン&グレープ財団
GO-TO WINE http://gotowine.jp/