ヴァルポリチェッラというワインをご存知でしょうか。北イタリアはヴェネト州で造られ、世界中で親しまれているチャーミングな赤ワインです。値段的にもお手頃なので、日本でもかなり出回っている、イタリアワインですね。
ところで、ヴァルポリチェッラと名前の付くものにはいくつかあります。どう違うのでしょうか。
目次
ヴァルポリチェッラとは
ヴァルポリチェッラ(Valpolicella)とは、先にも書いた通り北部イタリアのヴェネト州ヴェローナ近郊で産出される赤ワイン。ヴェネト州の州都は、州の東側にあり水の都として知られるヴェネツィア。ヴェローナはその反対の西側にあり、ロミオとジュリエットの舞台としても知られています。そしてここは“イタリアワインの首都”とも呼ばれ、毎年「ヴィニタリー(Vinitaly)」という、国際ワイン見本市が開かれる場所です。ヴァルポリチェッラはその近郊にある村の名前。ここで生産されるD.O.C.(統制原産地呼称)ワインです。
付近にはバルドリーノ(Bardolino)や、ソアヴェ(Soave)といった、やはり世界的に親しまれているイタリアワインの生産地域があります。
数えきれないほどの固有品種からワインを造るイタリア。この付近でも伝統的に使われる品種があり、赤ワインにはヴァルポリチェッラ・ブレンドとでも呼びたくなる、コルヴィーナ、ロンディネッラ、モリナーラという品種をブレンドして造られます。
誤解の無いように記しておきますと、D.O.C.法的にこの3品種が使われていなければならないのはバルドリーノで、ヴァルポリチェッラにはモリナーラは入っていなくても良いのですが、おおむね使われている様ですね。そしてこの3品種以外にも使われるぶどうはあります。ヴァルポリチェッラD.O.C.としては、コルヴィーナ主体で次にロンディネッラ、そしてその他のぶどうという成り立ちになります。
ワインの特徴としては軽めから中程度のボディ、赤いベリー系の果実味と香ばしいアロマ、軽快なタンニンを備えた、チャーミングな赤ワインとなります。
幅広い食事に合わせられ、デイリーワインとしても重宝する存在です。
アマローネとレチョート
イタリアの高級赤ワインと言えばバローロやブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、タウラージなど、そうそうたる顔ぶれが浮かびますが、アマローネもそのひとつに数えられます。
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Amarone della Valpolicella)。ヴァルポリチェッラのアマローネということです。
このワインに使われる品種は先のヴァルポリチェッラと同じですが、収穫後に陰干しを行い30~40%ほど水分を落としたぶどうを使って造られます。この醸造方法をイタリアでは「アパッシメント」と呼び、造られるワインを「パッシート」と言いますが、この辺りで造られたワインのみアマローネと呼ばれます。凝縮したエキス分から醸される旨味と、独特の甘苦みを持つ、フルボディタイプの辛口ワインに仕立てられます。
そしてこの甘口タイプがレチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)で、発酵を途中で止め、ぶどうの甘みを残しています。伝統的に甘口のレチョートが造られていましたが、あるとき間違えて発酵させきってしまい、辛口のアマローネが造られるようになったということです。
リパッソ
そしてもう一つのヴァルポリチェッラ・リパッソ(Valpolicella Ripasso)も特徴的な醸造方法で造られます。アマローネとレチョートを造った陰干しぶどうの搾りかす(ヴィナッチャ)を、通常のヴァルポリチェッラ・ワインに加え、再発酵(リパッソ)させます。
こうして比較的シンプルなヴァルポリチェッラにアマローネのニュアンスを加え、より奥行きと複雑さをもつ、中くらいから少し重めのボディを持つワインに仕立てられます。
ほぼ同じぶどうから、4つのまったく違うスタイルのワインを生み出すヴァルポリチェッラのワイン。飲み比べも楽しいですよ。