アメリカにおけるワインの銘醸地といえば、西海岸・カリフォルニア州を思い浮かべる方が多いと思います。ワインの生産量はアメリカ全体の80%を占めていて、日本でも大変人気のあるワイン産地です。さらに近年では、隣接するオレゴン州やワシントン州でもワイン造りが精力的に行われているように、現在、アメリカのほとんどの州でワインが造られていて、市場の成長とともにその生産量も大きく増えているそうです。
そのなかでも今回ご紹介したい注目の産地は東海岸・ニューヨーク州。なんと、カリフォルニア州、ワシントン州についで全米第三位の生産量を誇ります。私の脳内イメージではニューヨーク=マンハッタンで、初めてニューヨークワインという言葉を聞いた時は「そんな大都会にワイナリーがあるの?」となりました。しかし、ニューヨーク州は九州と北海道を合わせたくらいの広さがあり、豊かな自然にあふれているところなのです。また、西側は五大湖、東側は大西洋に面していることで、優良産地では夏の暑さと冬の厳しい寒さの影響が緩和され、ブドウつくりに恵まれた場所であることを知りました。
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ニューヨークワインの歴史
マンハッタン島にはじめてブドウが植えられたのは17世紀中ごろのことです。ところがワイン用のブドウ品種の生育は思わしくなく、長い間、この地で生産されるブドウ品種はデラウェアやコンコードなどの生食用の品種が主力でした。
1950年代にウクライナ出身のブドウ栽培研究家であるコンスタンティン・フランク博士が、カナダとの国境に位置するオンタリオ湖に近いフィンガーレイクス地区でワイン用ブドウ品種の栽培に取り組み、以降ニューヨーク州で本格的なワインづくりがスタートしました。フランク博士はまさに「ニューヨークワインの生みの親」なのです。(写真は在りし日のフランクリン博士)
さらに、1976年には小数単位でのワイン製造・販売を可能にする法律も制定され、2018年現在、実に470軒ものワイナリーがニューヨーク州内に存在しています。
注目の生産地その1:フィンガーレイクス
ここからは、ニューヨークワインの生産地を見ていきます。はじめはフィンガーレイクスです。カナダとの国境近くにあり、ニューヨーク州最大の生産地です。マンハッタンからの距離は車で約4-5時間、日本に置き換えるとだいたい東京~名古屋間の同じくらいです。マンハッタンから小旅行でワイナリー見学を楽しむ愛好家も多いそうです。
ここはヨーロッパの産地で例えるならば、ドイツのような冷涼な気候のため、エレガントで高品質なワインの生産拠点となっています。特に白ブドウ品種のリースリングに定評があり、フィンガーレイクスを代表する品種のひとつです。
写真は、フランクリン博士が創設したワイナリー、ドクター・コンスタンティン・クランクリンのドライ・リースリング。フルーツの甘い香りと豊かな酸味のバランスが素晴らしく、きれいな味わいのワインです。
ドクター コンスタンティン フランク サーモンラン ピノノワール[2017] [ ワイン 赤ワイン ニューヨークワイン フィンガーレイクス ]
注目の産地その2:ロングアイランド
ロングアイランドはマンハッタンから東に延びている島の先端部に位置しています。大西洋に面した海洋性気候で、ブドウ栽培に恵まれたエリアです。マンハッタンからの距離は東京と山梨県甲府市くらい。車で2時間くらいなので日帰りも可能な生産地です。ここはニューヨーカーにとっては身近なリゾート地であり、特にセレブリティが避暑に集まる高級別荘地として知られるハンプトンズを擁しています。本格的なワイン造りは1970年代からと比較的新しい産地ですが、地産地消意識の高まりとあいまって、消費意欲旺盛なニューヨーカーが、ニューヨークワインの品質向上に大きく寄与しているようです。押さえておくべきブドウ品種は、近年高い評価を獲得している黒ブドウ品種のメルロとカベルネ・フランだということです。
ブルックリン ワイナリー ノース フォーク ブレンド[2015] [ ワイン 赤ワイン ニューヨークワイン ロングアイランド ]
ニューヨークワインが飲みなくなったら「New York Winesday」
東京近郊にお住まいの方で「ニューヨークワインを試してみたい」という方には、青山一丁目駅に直結するNYスタイルのサステイナブルグリルレストラン『The Burn』にて毎月の開催が予定されている「New York Winesday」をお勧めします。
これは、ニューヨークワインのインポーターとニューヨークで活躍した『The Burn』のシェフが、ニューヨーク好きな人、ワイン好きな人たちとの時間を楽しむために開催しているイベント。ニューヨーク、ワイン、水曜日がキーワードでWine(ワイン) + Wednesday (水曜日) = Winesday(ワインズデー)。毎月第一水曜日の開催を予定しているそうです。毎回6-8種類のニューヨークワインをグラスで楽しむことができます。
今は以前のように気軽に海外に出かけることが難しい状況ですが、ニューヨークワインを通じて少しでも現地の気分を味わってみてはいかがでしょうか。
The Burn http://salt-group.jp/shop/theburn/
<取材協力>
GO-TO WINE http://gotowine.jp/