ワインは非常に面白いお酒です。時間が経つごとに味わいが変わっていくものなのですが、「時間が経ったワイン=おいしい」とも言えず、また「時間が経っていないワイン=おいしい」とも言えないものです。
今回は「時間とワイン」に焦点をあて、長い間熟成させたワインを1本取り上げてその味わいをレビューしていこうと思います。
目次
ワインと熟成
ワインは、時間を置くことで味わいが変わっていきます。
しばしば、「古いワイン=良いもの、高級なもの」と誤解されますが、実はこれは正しくありません。すぐに飲んだ方がおいしいワインもあれば、ある程度の熟成期間を経てから飲んだ方がおいしいものもあります。このため、「そのワインができてから今までの年月」と「おいしさ」は決してイコールにはなりません。
熟成を経たワインは、「おいしくなる」のではなく、「味わいが変わる」のだと考えておいてください。その味わいの変化が好ましい方向に行くものであるならば、そのワインは「熟成に向くワイン」だといえます。
好みもありますしワインによって違いもありますが、一般的に、熟成に向くワインは、極めて甘口のものかタンニンが強いものだといわれています。
ワインは熟成を経ていくと、下記のような味わいの変化が起きます。
【白ワイン】
1.色は、レモンイエローから金色に変わっていきます。さらに時間が経つと琥珀色に変化していきます。
2.香りは、かんきつ系の香りだったのがアプリコットのような熟した香りに変化します。トーストのような香りをまとうこともあります。
3.味わいからは、フレッシュで新鮮な印象が消えていくことになります。まろやかでボリュームがある味わいに変化することが多いといえます。
【赤ワイン】
1.若いワインは紫色のエッジを持ちますが、橙色へと変化していきます。またレンガのような褐色系の色へと変わっていきます。
2.赤くフレッシュな果実味を持った香りをまとったものであっても、時間が経つと乾燥イチジクのような香りをまとうようになります。また、なめした皮のような獣っぽい香りに変化していきます。
3.「熟成したワインは、渋い」と思っている人もいるかもしれません。しかし熟成を経ることで、タンニンはまろやかになり、渋みはむしろ減じます。若いころには飲むのも難しかったようなワインであっても、熟成を経ると柔らかい味わいになります。
実際に飲んでみよう!ボルドーの「シャトー・フレーレ2006」
ここからは、実際に10年以上の年月を経たボルドーワインを取り上げ、そのレビューをしていきましょう。
今回取り上げるのは、「シャトー・フレーレ2006」です。表記からもわかるように、2006年のものです。
2006年のワインですが、価格は1400円〜1600円程度と非常にリーズナブルです。また、供給が安定していることもシャトー・フレーレ2006の大きな特徴で、さまざまな店がこれを取り扱っています。「買いやすいワインであること」は、ワインにとって大きなメリットだといえます。また、情報も豊富にあり、あらゆる意味で「とっつきやすい」ワインといえるでしょう。熟成ワインの入門編としても使えるワインです。
さて、この シャトー・フレーレ2006は、60パーセント、カベルネ・ソーヴィニヨン30パーセント、カベルネ・フラン10パーセントから成り立っています。
おそらくはメルロー由来だと思われる、濃いベリーの味がします。ラズベリーというには少し濃すぎる味わいで、非常に熟しきったイチゴのような風合いを持ちます。この果実の香りが支配的ではありますが、それを支えるウッディな香りもあるため、果実一辺倒な味には仕上がっていません。
タンニンはなめらかです。ひっかかりは感じないでしょう。しかし、なめらかではあるもののしっかりとタンニンを感じることができるため、ボディはそれほど軽くはありません。食中酒に使うにふさわしいボリューム感もあります。
シャトー・フレーレ2006を飲むと、このシャトー・フレーレ2006というワインが、「良い方向に年を重ねた」ワインであることがわかるでしょう。年月を経ることでなめらかになったタンニンと、鼻孔をくすぐる香りは、おそらく若かったころにはなかったであろう特徴と思われます。
シャトー・フレーレ2006は軽過ぎないワインであり、なめらかながらもタンニンはある程度感じられるワインです。そのため、牛肉と合わせると楽しみやすいかと思われます。ただ、重すぎるステーキにあわせるよりは、ローストビーフなどの方があわせやすいかもしれません。お互いがお互いを引き立てあい、よく楽しめる組み合わせになるでしょう。
「古いワインは、高いもの」。そんな固定概念を覆してくれるシャトー・フレーレ2006は、きっと熟成ワインを楽しむための足がかりになってくれるはずです。