明治神宮と言えば、浅草の浅草寺と1、2を争う東京の初詣スポットとして、毎年お正月には各地から参拝にくる大勢の人で賑わいます。場所が山手線原宿駅のすぐ脇という交通の便の良さも人気のひとつでしょう。
都内最古の寺である浅草寺と違って、名前からもわかるように明治神宮の歴史は比較的新しく、明治天皇と皇后の昭憲皇太后をお祀りする神社として、大正9年11月1日に創建されました。JR代々木駅南側からその次の駅である原宿駅わきまでの広大な敷地に、全国から10万本にも及ぶ献木により作られた人工林に囲まれた、さながら森の中の神社といった趣です。
最南端になる原宿駅側の鳥居をくぐり木々に囲まれた南参道を本殿の方に歩いていきます。
参道沿いの右手にはミュージアムがあり、左手の森の奥には水辺がみえます。
更に歩いていくとフォレストテラス明治神宮が右手に見えてきます。土産物屋やカフェ、レストラン、そして結婚式なども挙げられる多目的施設です。
そのフォレストテラスの入り口付近、参道の右手側に、様々な酒蔵から献納された日本酒樽が飾られています。
これらは明治神宮とご縁がある酒蔵や、全国各地の敬神の念厚き酒造家よりご奉献頂いたものということです。
酒蔵ごとにデザインされた菰樽(こもだる)は、カラフルなものもあり、なかなか見応えがあって、日本酒好きには楽しめるのではないでしょうか。
日本の神社に奉られる日本酒樽、何の違和感もない光景ですね。
面白いのはその反対側、参道左側に日本酒樽と相対するように飾られている、たくさんの木樽。そう、これらはワインに使われるオーク樽です。その数ざっと60樽。
木々に囲まれた参道で目にするワインの木樽は、見事に周りの風景とも調和しているとも言えますが、さてこのワイン樽はどこから来て、なぜこの明治神宮に置かれているものなのでしょう。
実はこれらはフランス屈指の高級ワイン産地である、ブルゴーニュ地方の醸造元より献納されたワイン樽です。
案内板にはこうあります。
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奉献 葡萄酒樽について
明治天皇御製
よきをとりあしきをすてて外國に
おとらぬくにとなすよしもがな
「和魂洋才」を旨とし、わが国の伝統のこころを守りつつ、西洋の優れた文物を採り入れた明治時代。御在世中、まさに国民の模範となって近代化を推し進められた明治天皇は、断髪、洋装をはじめ、衣食住の様々な分野において西欧文化を積極的に採り入れられました。食文化においても率先して洋食をお召し上がりになり、西洋酒としては特に葡萄酒をお好みになられました。
ここに奉供されております葡萄酒樽は、ブルゴーニュ東京事務所代表でブルゴーニュ名誉市民、シャトー・ドゥ・シャイイホテル・オーナーでもある佐多保彦氏の呼びかけにより、葡萄酒産地として名高いフランス共和国ブルゴーニュ地方は醸造元各社より献納されたものであります。ご縁により遠く海を越えご奉献頂いた方々に衷心より感謝を申し上げますとともに、御祭神の世界友好への深い御心を戴き、わが国とフランスとの親交が一層深まりますよう祈念致します。
明治神宮
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動乱の幕末、明治維新を乗り越えた日本。「散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」、明治時代は西洋の物なら何でも良いという考えがあったほど、日本の制度や慣習、文化が大きく変わった時代です。様々な分野で今現在につながっている事柄も、かなりありますね。現代日本への道標となった時代ともいえるでしょう。
時の明治天皇も案内板の説明にある様に、日本の良きところを守りつつ、西欧の文化を自ら積極的に採り入れていくという考えのお人だったようで、日本酒と同様、ワインも好んで飲まれたということです。
そんな明治天皇を祀る明治神宮に、ブルゴーニュ名誉市民である佐多氏の呼びかけにより、ブルゴーニュの生産者からワイン樽が献納されることになったということでしょうか。
ひとつ一つの樽には、献納した生産者、生産地域や畑の名前も記されています。ロマネ・コンティやシャンベルタン、そしてルロワ、フェヴレ、ルフレーヴなど、ワインに興味がある方なら、ちょっと引き付けられるものがあるのではないでしょうか。
初詣や御朱印巡りで明治神宮を訪れた際には、ぜひご覧になってみてください。