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寿司とワイン
一昔前は、寿司屋に置いてあるワインといえばシャブリくらいでした。
昨今は、かなり贅沢な愉しみ方ではありますが、寿司屋でネタ別に、ワインペアリングができる世の中になってきました。
日本酒を合わせるよりも、立体的な味わいが楽しめるのがワインと寿司を合わせる大きな魅力です。
私が特に好きな江戸前のお寿司は、発酵させた調味料を使用するので、ワインとの架け橋になり相性が更に良く合わせる幅も広がります。
そして寿司は生魚なので、ワインと合わせるのが難しいと思われがちですが、
実は、様々な郷土料理で、生魚に合うワインが存在し、勿論お寿司にも相性がいいです。
しかしながら、生の魚介類と酸の低いワインを合わせると、生臭みがでてしまうことがあるので注意が必要です。
お店だけでは無く、出前で寿司をとり、家族と共にワインペアリングを愉しむのも素敵です。それでは、寿司のネタ別に相性の良いワインを紹介します。
鮪
鮪の鉄分に、旨味、滑らかな質感を考慮して、石灰質や、酸化鉄土壌などの、ミネラルの豊かなピノ・ノワールと良く合います。
江戸前の赤シャリだと更に、ピノ・ノワールが合います。
サンセール・ルージュ / ドメーヌ・ヴァンサン・ピナール
フランスのサンセールにある14村の一つビュエ村の生産者で、世界的に高い評価を受けている作り手のワインです。
ビュエ村のペルリーヌとがレンヌと呼ばれる区画の粘土石灰質土壌で、樹齢30年の有機栽培されたピノ・ノワールを元に、天然酵母による発酵と、コールドマセラシオンを経て造られた優れたミネラルをもつミディアムボディの赤ワインです。
フレッシュなイチゴ、サクランボ、スイカ、菫の砂糖漬け、カシスの芽のエレガントな香り、滑らかな質感に、軽快でチャーミングな果実味、フレッシュな酸、ミネラルが豊かで、きめ細やかなタンニンと相まって繊細な印象を与えます。
鮪の滑らかな食感に、ワインの質感が合い、鮪特有の鉄分と、きめ細やかなタンニンとミネラルが同調して、とても纏まりがよく、ワインの爽やかさが余韻に鼻から抜けます。ネギトロの軍艦も相性抜群です。
穴子
甘香ばしいツメの味わい、柔らかくふっくらとした身の味わいを引き立てる、優しい甘さのある樽熟成のマスカット・ベリーAがおすすめです。
岩の原葡萄園 有機栽培ぶどう マスカット・ベーリーA / 岩の原葡萄園
新潟県上越市にある岩の原葡萄園は、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーンなど、22品種ものぶどうを世に送り出したことで知られています。マスカット・ベーリーAは、ベーリーとマスカット・ハンブルグの交配品種で、2013年にOIVに品種登録されました。
冷却設備の無い時代から、発酵温度や、熟成庫の温度管理を、冬場に積もった雪を利用して行なっています。
このワインは、有機栽培で、ブドウに付着した野生酵母で醸造した自然派ワインです。
香り豊かで、樽熟成させた複雑性のあるミディアムボディの赤ワインです。
甘香ばしいツメの味わいを引き立てるベリーAの甘さと、樽熟成による樽の風味が醤油の風味をマッチします。
干瓢巻き
甘辛く煮た干瓢の味わいにマッチする甘みのある白ワインがポイントです。
レチョート・ディ・ガンベッラーラ / ラ・ビアンカーラ
生産者のアンジョリーノ・マウレは、ブドウ品種ガルガーネガの可能性を信じ、1989年よりワイン造りを始め、現在ではビオディナミで、野生酵母のみを使用して醗酵させ、醗酵・熟成には酸化防止剤の添加を一切行わないスタイルでワイン造りを行っています。
ガンベッラーラはソアーヴェの隣に位置する小さなD.O.C地区です。
南向き斜面で育った熟度の高いガルガーネガ種を使ったレチョートは、珍しいです。熟したキャラメリゼした洋ナシや、パイナップルのような香り、甘さは強いですが、ガルガーネガらしく酸が豊かで、自然派ワインなので飲み疲れずにスイスイ飲めてしまいます。
干瓢巻きの甘さと同調し、風味を引き立てます。干瓢巻きに山葵を入れた鉄砲巻きとも良く合うのは、ガルガーネガの余韻のエアリーさのお陰です。
イカ
ねっとりとした質感に、上品なイカ本来の甘さを引き立てる残糖感と、塩味がかったミネラルのある白ワインがおすすめです。
白メルロ / 奥尻ワイナリー
奥尻島は、北海道南西部の日本海に浮かぶ周囲約84kmの小さな島です。対馬暖流の影響で北海道の本島に比べて温暖です。
1999年設立の奥尻ワイナリーのワインに、ミネラル分が多く含まれているのは、潮風が海の恵みを運んでくれたからです。余韻の潮の香りから、奥尻島のテロワールが感じられます。
このワインは、通常は赤ワインになる黒ブドウ品種メルロから造られた珍しい白ワインです。
グレープフルーツや白桃、さくらんぼの香り、とてもフルーティーで、優しい甘さと、フレッシュな酸と、塩味のあるミネラルがしっかりと感じられるやや辛口の白ワインです。
このワインの自然な甘さが、イカのねっとりした甘さを倍増させ、ワインの仄かな塩味が味わいを引き締めます。
雲丹
甘くとろける濃厚な味わいの雲丹は、ゲヴェルツ・トラミネールのワインと驚くほど相性がいいです。
マヒ・ツイン・ヴァレー・ゲヴェルツ・トラミネール / マヒ
世界的なワインメーカーのブライアン・ビックネルが、ニュージーランドのマール・ボロに設立したワイナリー。
マール・ボロのワインは、他の地域のものとブレンドされることも多く、個性が失われてきていることを問題視し、マヒでは、マール・ボロで有機栽培した単一畑のブドウを、野生酵母で発酵をさせてワイン造りを行っています。
このワインは、ライチ、パッションフルーツのトロピカルな香り、オレンジの果皮や、スパイシーなニュアンス、豊かな果実味にオイリーなニュアンス、フレッシュな酸のある辛口の白ワインです。
辛口ながらもゲヴェルツらしい果実の甘やかさが雲丹の甘さと合い、フレッシュでオイリーな質感もマッチします。マール・ボロの海の雰囲気があり、海産物の雲丹との相性は抜群です。
イクラ
プチプチと弾ける食感に、海の味わいを感じさせる味わいは、プロヴァンスロゼと相性がいいです。
ミラヴァル・ロゼ / ミラヴァル
アンジェリーナ・ジョリーとブラット・ピットが所有するワイナリー。
2012年よりローヌにて屈指のワインを生み出すペラン・ファミリーに委託し、素晴らしいワインを生産しています。畑は100%オーガニックのこだわりがあり、如何なる化学薬品も使用していません。
ミラヴァル・ロゼは、自社畑の中でも特にいい区画のブドウを使用しています。標高が高いため、豊かな酸を携えています。フレッシュストロベリー、白い花、潮風の香り、クリスピーな酸があり、爽やかな果実味と、繊細で軽快なミネラルを感じさせる辛口ロゼワインです。
イクラのプチプチ弾ける質感と、クリスピーな酸が良く合い、海を感じさせる味わいに、ロゼのミネラル感が良く合います。
贅沢な寿司の愉しみ。ネタ別ワインペアリング【下編】に続きます。