スペインのブドウ畑は、広大な平野に株仕立ての苗がどこまでも続く、といった光景が有名ですが、実はそんな産地ばかりではありません。まるでドイツのような川の流れに沿った山の斜面のブドウ畑の産地をご紹介します。
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川のほとりの急斜面!聖なる流域のワイン産地
その産地はDO(原産地呼称)リベイラ・サクラ。スペイン北西部ガリシア地方の山間部にあります。リベイラ・サクラは、ラテン語の“聖なる流域”が由来の名前だと言われています。それは中世の時代から修道院がたくさんあったからだとか。地方シル川の渓谷を見下ろす絶景が素晴らしい地方です。私は2007年頃に、書籍の取材でこの地方のワイナリーを訪れました。車1台がギリギリ通れる舗装されていない道をクネクネと車で上って行った先に小さなワイナリーがありました。
聞くところによるとこの地方のワイナリーはどこも小さな規模の家族経営のもののようでした。それでも原産地呼称委員会に登録しているワイナリーは93と少なくないです。私が訪れた“ぺニャ・ダス・ドナス”というワイナリーは年配のご夫婦二人がオーナーで醸造家一人が働くワイナリーでした。
わずか3haのブドウ畑がシル川を見下ろす急斜面にありました。川まで滑り落ちてしまいそうで怖い!苗木の間隔はとても狭く、とてもじゃないけど車は入れません。まさに命がけの収穫です。訪れたワイナリーでは収穫の時期は家族や親戚が集まってみんなで収穫するそうです。一体どうやってワイナリーまでブドウを運ぶかというと、斜面に沿ってはしごのようなものがあり、そこに台車を置いて収穫用のケースを重ね、自動で引き上げ、そこから車の荷台に積みます。また、川まで下ろして船で運ぶワイナリーもあります。
土着品種“メンシア”からできるエレガントで洗練された風味のワイン
さて、そんなリベイラ・サクラではメンシア種の赤ワインが生産されています。メンシア種はガリシア州やカスティーリャ・イ・レオン州の北西部で栽培される品種。スモモやラズベリー、野イチゴのような風味の奥にかすかな土の香りがします。ライト~ミディアムボディのエレガントなワインで、私もとても好きです。インポーターさんが言うには、同じような畑の状態のドイツのワインは1万円くらいで販売されているそうですが、リベイラ・サクラのものはもっと安い!命がけで造られるワイン、ぜひ1度試してみてください。