「ワインは長く熟成させることができるお酒」ということは、多くの人が知っている話です。
しかし、「どのようなワインであっても、長く熟成させることができる」と考えるのは誤りです。ワインには、熟成に向くものと向かないものがあるのです。
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高いワイン=熟成したワイン?
ワインのなかには、50年以上を経過したものもあります。自分の、あるいは大切な人の記念日に、その人が生まれた年のワインを開けるというのは、よく知られた話でもあります。
実際、長い時間を経過したワインであっても、熟成に適したワインでありかつきちんと保管していたものであるのならば、すばらしい芳香とすばらしい味を持って、飲む人の舌を包み込んでくれることでしょう。
しかし、「熟成されたワインが、良いワインである」とはいえません。
どのようなワインであっても「飲み頃」がありますし、たとえ高く品質もよいワインであっても、その「飲み頃」を逃してしまうとおいしく味わうのが難しくなってしまいます。
また、ワインは保管状況によって味が大きく左右されるものですから、長く保管できるワインであっても、きちんと保管ができていなければ味わいが大きくそがれてしまいます。
50年、100年経ったワインは、たしかに「現存する」という意味では貴重です。またワインは、単純に味だけを楽しむものではなく、そこに込められた思い出なども一緒に飲むものです。そのため、たとえ味わいが劣っていたとしても、「その年に作られたワイン」に格別の思い出があるのであれば、そのワインは「特別なもの」になるでしょう。
しかし、「今から熟成させて、ワインを育てたい」ということであれば、「熟成に適したワイン」を選んだ方が良いといえます。
熟成に適したワイン、選ぶキーワードは「個性派」
熟成に向くワインの特長の一つは、「際立った個性があるワイン」だといわれています。
白ワインならば酸味が強く出るもの、赤ワインならば渋みが強いものなどを選ぶと、時間の経過とともにその味わいがまとまってくると考えられています。貴腐ワインなどにも長い熟成期間に耐えられるものがあるといわれているのはそのためです。
また、熟成に向くワインには、ある程度の「品質」が求められます。たとえば、1000円〜2000円程度のワインの多くは、あまり熟成には向きません。
「どれくらいの値段からならば中~長期間の熟成に向くか?」というのは、専門家の間でも諸説があります。ただ、20000円以上が1つの基準となるでしょう。最低のラインは5000円程度だとされていますが、これらは20年を超えるような熟成には適さないと考えられています。
「熟成をさせるワイン」は、大切な人の生まれ年であったり、人生の転機となる年であったりするでしょう。そんな年に選ぶワインですから、ここは張り込んでも構わないと思われます。ソムリエにも、「熟成させたい」と話をして、それに向くワインを選ぶようにしてください。
ちなみに、「熟成に向くワインか否か」は、「どの地方で生まれたか」にはあまり左右されないとされています。ある程度は関係しますが、重要なのは「地方」よりも「ワインの品質」「ワインの味わい」です。可能ならば、候補となっているワインの現在の味わいを確認したうえで、「育てるワイン」を選ぶようにしてするとよいでしょう。
なお、このようなワインは、温度の変化などによって味わいが大きく異なります。特別な年に買った特別なワインを特別な日においしく味わうために、できればワインセラーを用意したいものです。
「育てるワイン」「熟成させるワイン」には、そのワインのためにワインセラーを購入する意義があります。