南国・沖縄の島酒と言えば泡盛。ご存知の方も多いでしょう。沖縄以外で造られていた歴史もあるため、特に沖縄産のものは「琉球泡盛」と言って区別されています。
熊本が故郷の球磨焼酎(米焼酎)と同じく、米を原料とした蒸留酒ですが、どういった違いがあるのでしょうか。
沖縄県那覇市、かつての琉球王朝時代の城跡、首里城のすぐおひざ元にある、瑞泉酒造を訪ねてみました。
沖縄には、宮古、石垣、久米など周辺の離島も含めて、50軒近い酒造所があります。
もともと泡盛造りは、琉球王国時代に王府の銘を受け、製造を許可された首里三箇と呼ばれる、現在の那覇市首里周辺の三つの町で行われていました。
こちらの瑞泉酒造は、その首里三箇をルーツとする蔵元で、移転してしまった酒蔵もある中、現在も当時の場所で泡盛造りを行っている蔵のひとつです。
シーサーが迎えてくれる門を入り社屋へ。こちらでは泡盛の直売もしてくれます。
その社屋の奥で実際に泡盛造りが行われています。この日は蒸留器が稼働していました。
担当の方にひと通り、酒造りに使う機械の案内をしていただいた後、泡盛の歴史や造りなどをまとめたビデオを見せていただきました。
通常の米焼酎と異なる部分、まず原料です。泡盛造りに使われるお米は、基本的にタイ米です。主に東南アジア諸国で造られている長粒米ですね。規定では日本の酒造米も使用することができ、実際に使っている蔵元もあるようですが、瑞泉酒造ではタイ米しか使っていません。硬質米であるタイ米の特性が、黒麹菌の繁殖を容易にするそうです。
そして麹。日本酒は黄麹、焼酎は主に白麹ですが、泡盛は伝統的に黒麹が使われています。
これも一つの特徴で、現在では一部の焼酎も黒麹を使って製造されていますが、酒造りの歴史において、黒麹のみを使い酒造を行っているのは、世界的に見ても珍しいことだそうです。
温暖多湿の沖縄での酒造りにおいて、黒麹菌は他の麹菌に比べ、大量のクエン酸を生成し、雑菌による腐敗を防いでくれるという特性があるそうです。
更に製造行程において、通常の焼酎は発酵を二段階に分けていますが、泡盛はすべてを一度に行う全麹仕込み。こうした特徴の一つ一つが、泡盛独特の風味を作り出すのに一役買っているわけです。
もう一つ、泡盛と言えば「古酒」。甕や瓶、タンクでの熟成を経て、泡盛はより芳醇さとまろやかさを増します。興味深かったのが甕での熟成方法。「仕次ぎ」と呼ばれるもので、年代物の古酒に少し若い古酒を注ぎ足すことで、酒質を損なわずに更なる熟成を促すというもの。一番甕から最上の古酒を汲み出したら、二番目から減った分を足し、さらに二番目には三番目からという風に繰り返します。これ、スペインのシェリー酒の熟成方法であるソレラシステムを思い起こさせます。国は違えど志が同じなら、おのずと酒造りも似てくるものなんでしょうか。
見学の最後には試飲もさせていただきました。タンク仕込み、甕仕込み、熟成の長さ、そしてスパークリングから梅酒まで、さまざまな泡盛を造っています。前出の仕次ぎによる熟成を経た甕仕込み古酒は、酒蔵での限定販売。ロットごとに見事に風味が違うそうです。
そして冷凍庫に入れていた53度の原酒を、ショットで呑ませていただきました。
高いアルコール度数のため凍らず、ちょっとトロトロになった泡盛。原酒の濃厚な風味と、濃度のある舌触りが最高。これ、ジンなどでも出来る、夏場にはお勧めの飲み方ですよ。
瑞泉酒造へは、那覇空港から出ているモノレール「ゆいレール」に乗り首里駅下車、徒歩10分ちょっと。首里城を望む城下町の住宅街の一画にあります。
見学はひとりからでも受け付けてくれます。事前に予約をしておいた方が良いでしょう。
余談ですが、沖縄の某大手コンビニエンスストアにて面白いものを見つけました。
さすが沖縄、いろんな泡盛が売っています。手軽に飲めるカップや紙パック製品などなど。
その中になんと「コーヒー泡盛」なる紙コップ商品が!なるほど、イタリアではエスプレッソにグラッパを入れて飲んだりしますが、それの泡盛版ということでしょうか、思わず買っちゃいました。他にもシークワーサー泡盛やアセロラ泡盛など、ご当地商品が色々。
沖縄泡盛旅お勧めです!