チリやスペインなどと並んで、日本でも比較的低価格帯のワインが人気のオーストラリア。カンガルーのラベルの「イエローテイル」は、スーパーマーケットでもよく見かけるアイテムです。
もちろん、プレミアムなワインもたくさん産出している魅力的なワイン産地です。
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ニューワールドを代表する国、オーストラリア
世界で一番小さい“大陸”とも評されるオーストラリア。国の面積としては世界で6番目、国別ワイン生産量でも2018年の時点では8位ですが、15年ほど前は6位と、大体同じような位置を占めています。
大きな土地に多様な気候と地質を備えていますが、過酷な自然環境から大陸の40%が非居住地域になっており、ぶどう栽培がおこなわれているのは主に南緯30度以南の比較的冷涼な地域に集中しています。
商業ワイン生産は19世紀にイギリスからの入植者の手により始められました。ワインの一大消費地であったイギリスの人々は、ワイン造りをしようにも本国にはぶどうを栽培するのに適した土地があまりなかったので、このオーストラリアで絶好の機会を得たわけです。以来、ぶどう栽培やワイン醸造の知識を持つ、他のヨーロッパ各国からの移民や、様々な新技術の開発・導入などにより、ワイン生産国としては後発のこの国のワイン産業はまたたくまに発展し、国際舞台での評価も高まっていきました。
1990年代、イエローテイルに代表される低価格帯ワインによる北米市場などの開拓を行い、市場占有率や認知度向上などの面においてかなりの成功を収めましたが、その後はより安価なチリワインの台頭により、その優位性は徐々に失われてゆきます。「果実味にあふれる口当たりの良いテーブルワイン」というオーストラリアワインのステレオタイプは、この頃に出来上がったものと思われます。
カスクワイン(ボックスワイン)を始めて実用化した国でもあり、国内での消費もカスクワインが約1/3を占めます。2000年代には国内でのもっとも販売額の大きいワインが、お隣のニュージーランド産になり、そのニュージーランドにてスーパーに並ぶ最も安いワインはオーストラリア産などという皮肉な現象も起こっています。
一方で、専門家も高く評価する高級ワインも数々産出されており、今後は先のイメージを払拭していくマーケティングが課題になると思われます。
オーストラリアの代表品種、シラーズ
固有品種を持たないオーストラリアは、19世紀初頭に様々な品種がヨーロッパより持ち込まれました。その中でこの国を代表する品種と言えば、なんといってもシラーズShirazでしょう。元の名をシラーSyrahというこの南フランス原産のぶどうを主品種として取り入れたのはこの国が最初であり、この国の気候にマッチし見事な成功を収めたシラーズは、オーストラリアを代表する品種と言えるでしょう。今では世界中の生産者が、シラーズの名前を使うようになりました。
国内のワイン産地
南オーストラリア州
全生産量の半分近くを占め、栽培や醸造に関する主要な研究機関も擁するオーストラリアワインの中心地。バロッサ・ヴァレー、クナワラなどの生産地域があります。
ニュー・サウス・ウェールズ州
オーストラリアワインの歴史は、シドニーを州都とするこの州からはじまりました。中でもハンター・ヴァレーは、その起源の生産地として有名です。
ヴィクトリア州
州都はメルボルンで1860年代に英国向けの輸出量が最大を誇り、「英国民のぶどう畑」と呼ばれた州。ヤラ・ヴァレーは最高級のピノ・ノワールの産地として有名。
西オーストラリア州
オーストラリア西側にあり州都はパース。高品質ワインを生み出すマーガレット・リヴァーや、南オーストラリア州より栽培の歴史が古いスワン・ディストリクトなどの地域があります。
他には冷涼な気候で高品質のピノ・ノワールやリースリングの産地であるタスマニア州や、国内でもっとも北部にあり、産地として急成長しているクイーンズランド州があります。
日本でも手に入れやすいオーストラリアワイン。ハレの日からデイリーまで様々なシチュエーションに合わせることが出来そうです。