2021年のトレンド予測にシードルがランキングされたことはご存知でしょうか?シードルとはリンゴを使った醸造酒です。簡単に言えばワインのリンゴバージョンという事ですね。作り方もワインとほとんど一緒。日本では、ワイナリーでシードルを作っている所もあるくらいです。今、日本ではシードルが非常に注目されてきています。今回は、シードルについての基礎知識について書いていこうと思います。
目次
シードルとは何か
シードルとは、前述したようにリンゴから作るお酒です。原料はリンゴのみで、酸化防止剤以外には何も入っていません。絞ったリンゴの果汁のみを発酵させて作るため、日本では酒税法上果実酒に分類されます。これはワインと全く同じですね。シードル1ボトル(750ml)に対し、リンゴが4~5個使われています。
アルコール度数はワインや梅酒など他の果実酒に比べて低く(ワインが約12%に対し、シードルは約3%~5%で高くても7%程度)、アルコールが苦手な方や女性にも飲みやすく非常に人気があります。
世界各国で呼び方が違う!?
日本ではシードルという呼び方が一般的ですが、世界各国で呼び方が変わってきます。シードルとはフランス語(Cidre)で、イギリスやアイルランドではサイダー(Cider)、スペインではシードラ(Sidra)、ドイツではアッフェルヴァイン(Apfelwein)、イタリアではシドロ(Sidro)、アメリカではハードサイダー(Hard Cider)という名称で飲まれています。日本でサイダーというと、某企業が発売している某炭酸飲料を思い浮かべますね。
シードルの歴史
シードルの起源については様々な説が検証されていますが、最も有力な説は紀元前1世紀頃の古代ケルト人の時代まで遡ります。
それ以前の紀元前4000年、世界最初の文明と言われているメソポタミア文明が栄えていた頃、メソポタミアの遺跡から果実の汁を絞るための石臼が発見されました。しかし、この頃はブドウの栽培が主であり、リンゴ栽培に関する記述は発見されていません。同じく紀元前3000年頃のエジプト王朝期でも、ブドウを潰してワイン造りをしている様子を描いた壁画が発見されましたが、やはりここにもリンゴに関する絵は発見されませんでした。
そして時代が流れ古代ケルト人の頃。カエサル率いるローマ軍の『ガリア征服』の記録書に、古代ケルト民族が野生のリンゴを使ってシードルのような飲み物を造っていたことが記されています。この頃がシードル造りの起源ではないかと言われています。つまり、シードルはワインよりは歴史が浅いですが、それでも2000年以上の歴史を持つ伝統的な飲み物なのです。
その後、ローマ帝国が誕生するとリンゴ栽培とシードル造りの技術がローマ帝国にもたらされましたが、当初はそこまで盛んにシードル造りは行われていませんでした。地中海を中心として栄えていたローマ帝国ではオリーブの栽培が盛んで、大量のオリーブの実を潰すために圧搾機が出現しました。この圧搾機はリンゴにも使われるようになり、それまで石臼や手作業で潰していたリンゴも簡単に潰せるようになったため、シードル造りも盛んになりました。ローマ帝国はその後ヨーロッパ各地を次々と侵攻・支配したため、現在のスペイン・フランス・イギリスなどの各地にもリンゴ栽培やシードル造りが広まっていったと推測されています。この時代に作られた果実酒は総称してシセラ(Cicera)と呼ばれており、これがシードルの語源になったのではないかと言われています。
シードルの産地
シードルの伝統的な3大産地と言えば、イギリス・フランス・スペインです。世界のシードルの生産量のうちヨーロッパが約7割を占めており、特にイギリスはヨーロッパ全体の約半分の生産量を誇っており、生産量だけでなく消費量に関しても世界一です。リンゴの栽培には冷涼な気候が適しており、イギリスはリンゴ栽培に理想的な気候風土であったためリンゴ栽培とシードルの生産が盛んになりました。
日本でも増加中
ワインを造っている所をワイナリーと呼ぶように、シードルを作るところをシードルリー(イギリスではサイダリーやブルワリー)と呼びます。シードルのみを醸造している所もあれば、ワイナリーや日本酒の蔵元などでシードルを作っている所もあります。シードルを醸造・販売している生産者は、2017年には62箇所でしたが、2020年には177箇所とわずか3年で著しく増加しています。(2020年、きた産業株式会社調べ)。国内でシードル造りが特に盛んなのは、青森県と長野県です。
青森県は言わずと知れたリンゴ栽培の名産地で、リンゴ農家がそのままシードルを醸造している所も多くあります。青森県のリンゴは、代表品種『ふじ』に代表されるように味わいのクオリティが非常に高く、その味わいを活かしたシードルは世界でも高く評価されています。
一方長野県は、山梨県と並びワイン造りで有名な県ではありますが、ワインに匹敵するほどシードル造りが盛んで、醸造所や銘柄数では日本一を誇ります。そして、国内では唯一原産地呼称管理制度を導入しており、ブランドの信頼力と味のクオリティの保持に力を入れています。長野県は前述したようにワイナリーの数も多く、長野県産シードルの多くがワイナリーで造られています。
今後シードルは益々注目されるでしょう。この機会に、皆さんもシードルを試してみては如何でしょうか。