「日本酒の香り」と聞いて、どんなイメージをされますか?
花の香り、果実の香り、米の香り、または熟成された香り。
いろんな香りを想像されることでしょう。
今回は、日本酒の香り成分に注目すると共に、日本酒では新しい香り成分「4MMP」について、また奈良県の倉本酒造による新スタンダードとして提案されるお酒、”KURAMOTO”についてご紹介いたします。
目次
日本酒の香り成分
日本酒の香り成分は、「吟醸香」「原料香」「熟成香」に分けられます。
それぞれを、少しわかりやすくみていきます。
吟醸香
果実や花に例えられる香りは、主に酵母がアルコール発酵される過程で作られます。主な成分としては、「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」があげられます。
・カプロン酸エチル
カプロン酸エチルは、吟醸香の主成分であり、リンゴや洋梨など、みずみずしい甘味と酸味をもった果実に例えられます。近年の酵母としては、カプロン酸エチルが多く生成されるよう開発された「協会酵母1801号」や「M310酵母」が代表的です。
なお、吟醸香は、タンパク質が少ない米や高精白米を使った場合の他、低温で発酵させた場合にも生じやすくなります。
また、最近では、吟醸香高いお酒がブームであり、鑑評会でカプロン酸エチルを多く含むお酒が多く出品されています。
・酢酸イソアミル
酢酸イソアミルは、バナナやメロン等、濃厚な甘味をもった果実に例えられる香り成分です。代表的な酵母としては、協会酵母9号や14号があげられます。
原料香
日本酒の原料となる、米、米麹に由来し、香りの核となる要素になります。米麹に由来する香りは麹の割合が多いほど麹香が出やすくなる他、新酒の時にも感じやすくなります。
精白度が低い方が、この香りは感じやすい傾向にあるでしょう。
熟成香
時間の経過で生じる熟成香の主な成分は、褐変反応(メイラード反応とも呼ばれる)によりアミノ酸が分解して作られる「ソトロン」になります。
わかりやすい例でいうと、長期熟成された日本酒はもちろん、シェリー、紹興酒からも、キャラメル、黒糖のような甘い香り、また濃い場合はスパイス様の香りが立ち、これがソトロンの香りの特徴になります。
「4MMP」
日本酒ではまだ新しい香り成分「4MMP」。
化学式では「4-メルカプト-4-メチル-2ペンタノン」と表されます。
わかりやすい例でいうと、白ワインのソーヴィニヨンブランやクラフト系の一部のビールに含まれる、いわゆる「アロマ成分」の香りで、爽やかなマスカットを思い浮かべるような香りです。
日本酒ではグルテリン(消化されやすいタンパク質)の含有率が低い、低グルテリン米で仕込むとこの香りが出やすい傾向にあり、酵母が含まれる物質を分解することで4MMPの香りが出ると言われています。
4MMPは、今後、日本酒でもスタンダードな香りになると言われており、この成分の生成のコントロールができるようになれば、日本酒の香りの幅が一層広がりそうです。
上記であげたマスカットの香りの他、青りんごの香りや桃の香りなど、様々な香りと複雑に混ざりあうことで、更に幅広い果実様の香りが生み出されます。
“KURAMOTO”
いつもユニークで斬新な日本酒を手掛ける、奈良県 倉本酒造。
当蔵より、「4MMP」が含まれる”KURAMOTO”が発売されました。
まず最初に、ユニークなラベルに目を引きます。
このラベルが作られたエピソードによると、当蔵で代々受け継がれ管理している裏山、そしてその裏山の地層にて濾過された水があり、それらが当蔵の日本酒の源になっているそうで、このラベルが意味するのは、まさしく、「山」、「水の波紋」を表しているとのこと。
また、新酒の完成を伝える杉玉、試飲等に使われる蛇目猪口のように見えたり等、お酒にまつわる複数のイメージを含んでいるように見えます。
テイスティング
お勧めの酒器はワイングラスです。
お酒を5~15℃に冷やし、ワイングラスに注いだ後、目を閉じてゆっくりお酒を感じてみてください。
「これは、ワインなのか?日本酒なのか?」
そう思われるかもしれません。
香りとしては、マスカット、ライチ、青リンゴ、グレープフルーツを思わせるような、爽やかな果実香があります。
飲み口は、爽やかな酸味とバランスのよい甘さが口の中に広がります。アフターフレーバーは最初に感じた同様の果実香を感じ、飲んだ後はスッとしたキレがあります。
商品情報
商品名:KURAMOTO
製造者:倉本酒造株式会社 (奈良県奈良市)
使用米:非公開
精米歩合:64%
日本酒度:-2
酸度:2.5
Alc度:14度
日本酒にはいろいろな香り成分があります。ぜひ、いろいろな日本酒にトライし、ご自身のお好みの香りを見つけ、更に日本酒の幅を広げて楽しんでみてください!