ビール売り場に行くと、様々な商品が売られていますね。それらは大手ビール各社が発売している、ビール、発泡酒、そしていわゆる第三のビール。それぞれに数多くのラインナップがあります。結構な品揃えですが、皆さんはどれがどの種類なのかわかりますか?そしてビール、発泡酒、第三のビールの違いがわかりますでしょうか。
目次
“とりあえずビール”から。
ビールについて今さら説明が必要かどうかわかりませんが、ちょっとだけおさらいしましょう。
ビールの原料ですが、水、ビール酵母、ホップなどの香味料、それにデンプン源となっています。原料として有名な麦芽はこのデンプン源にあたります。ということは、麦芽以外にもデンプン源として使われているものがあるということですね。多くの場合は大麦の麦芽を主原料として、副原料にトウモロコシや米が使われます。これらは麦芽100%じゃないビールの原料として、日本でもおなじみですね。その他、世界には色々なデンプン源がある様で、ジャガイモやアワ、タピオカでおなじみのキャッサバの根、そしてテキーラの原料として知られるリュウゼツランなどが使われるそうです。どんな味がするのでしょうか。
しかしやはり、大部分のビールには麦芽が用いられるようで、なかでも大麦の麦芽はデンプン源として非常に優れているのです。
ここまで書いてきたのは大まかにビールとはどういうものかということで、日本のビールの定義はこれとはちょっと違います。
酒税法によって定められた日本のビールは、麦芽・ホップ・水を原料とし発酵させたもので、米・トウモロコシ・澱粉なども麦芽の1/2以下で使用できるというもの。税金と麦芽の使用比率、これがひとつのミソになります。
ともあれビールは各国の法律でそれぞれ定められており、中には日本ではビールでも、ある国に行くとビールを名乗ることが出来なかったり、その逆もまたあるわけです。
そして発泡酒
1990年代、価格の半分近くを税金が占めるビールも、ディスカウントストアなどでの価格競争にさらされることになりました。価格の安い輸入ビールに対抗するために、ビール大手は麦芽の使用比率を抑え、低税率を適用させた発泡酒を発売、若干の味の物足りなさはあったものの、価格が安いことで瞬く間にマーケットに受け入れられた訳です。
発泡酒の一般的な麦芽使用比率は25%。それでも原料に麦芽を使用しているということで、ビールに近い気はしますね。
ビールの高い税率や低価格競争に打ち勝つため、時代の寵児として生まれ市場を席巻するまでに至った発泡酒ですが、2000年代半ばに転機が訪れます。とれるところから取るのが税金。酒税法の改正により、好調の発泡酒は増税となりました。これにより大手各社は更なる対策を講じることになります。
第三のビール登場
酒税法とのイタチごっこの末、新ジャンルと称され登場した新商品群は、発泡酒に続くビール・テイスト飲料ということで、「第三のビール」と呼ばれるようになりました。
実はこのカテゴリーには2種類の製法があります。まずは最初に発売された、麦芽以外の穀物(主に豆類)を原料として造られたもの。これは「その他の醸造酒(発泡性)①」という区分になります。このコラムの冒頭部分に書いたビールの概念からすれば、これは大枠でビールと言ってもよさそうなものですね。しかしながら、我々が親しんできたビールとは似て異なるものだということも事実です。
そしてもう一つは、発泡酒に麦由来のスピリッツや焼酎を混ぜたものです。これは「リキュール(発泡性)①」に区分されています。ふたつの区分が混在していることから、後者を「第四のビール」と呼ぶ向きもあります。これは原料に麦由来の物を使ってはいますが、やはりビールではないですね。区分からしてもどちらかというと、缶チューハイなどと同様のものです。
実際、メーカーもビールとは決して謳っていません。商品名や、缶のデザインを限りなくビール風にして、なんとなく勘違いさせているだけです。
しかしながら、メーカーの努力には恐れ入ります。味のクオリティも上がってきていますね。
さてビール・テイスト飲料について書いてきましたが、すでに新たな酒税法改定の動きがあり、2026年を目途にビール系飲料の税率は一本化される見込みです。それに先立ち2023年に第三のビールは発泡酒と統合される様です。
ビール業界は、これからも酒税法に翻弄され続けるのでしょうか。