前回の記事でも秋の季節酒(ひやおろし)について触れたが、今回(執筆時は10月上旬)も秋について触れていきたい。
私自身が10月生まれの散歩好き、ということでこの季節が一番好きなわけだが、もちろん「食欲の秋」も大好き。食べ物が美味しいのは言うまでもなく、常温じゃなくて燗で飲む機会が増えてくるので、飲み方にも幅が出る。
そんな魅力満載の秋、とてもお気に入りのボトルを見つけたので、今回はそのデザインを愛でていこうと思う。
目次
【1杯目】
京都 招徳酒造 「招徳 純米吟醸 秋の酒」
創業1645年、370年営業という驚くほど古くからある伏見の酒造。昔から「純米酒こそは清酒本来の姿」と考え、1960年代から純米酒の製造販売に取り組みつつ、純米日本酒協会を発足して純米酒の普及に取り組むなど、歴史を持つ企業としての牽引役を果たしている。
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なお、伏見といえば昔から日本酒の名所として有名で、「伏見の女酒」という言葉があるくらいだ。
その特徴は水。伏見の酒造りで使用される主な水は、「御香水」と呼ばれる名水。軟水でミネラル分が比較的少ないため、時間をかけて発酵させる必要がある。ゆっくりと発酵させていく中で酒の荒々しさがとれ、酸の少ない味わいに仕上り、丸みを帯びたやさしい味となるため「女酒」と呼ばれている。
ちなみに、よく対比されるのが「灘の男酒」 灘の日本酒に使われる「宮水」と呼ばれる水は、リンやカルシウム、カリウムなどのミネラルを多く含む硬水で、発酵が活発に行われるため、コクとキレのある酒となる。
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今回の季節ボトルは240mlという1合ちょっとの量で、1人でも飲みやすいのが嬉しい。(肴は自家製のカマ焼き)
そして何より、デザインが素晴らしい。個人的に選んでいる、ボトルデザイン・オブ・ザ・イヤーの候補に入っている。真っ赤に染まった紅葉と、悠然と泳ぐ鯉。ボトル全体が青みがかっていることで、水のイメージがしっかりと出ていて、秋なのに涼やかな印象も持たせる。残暑が続き本格的な秋を待ちわびる9月、10月にはピッタリのデザインかもしれない。空いたボトルで思わず花の一輪挿しでもしたくなってしまう。
そして飲んでみると、ふくよかな香りの中にしっかりとしたアルコール感を感じられる。苦味や酸味はほぼなく、濃密な米の甘みが口の中を満たしていく。見た目の爽やかさとは裏腹に、どっしりした味わいというのもまた面白い。
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今年の残暑は息が長い。ゲームで言えば攻撃力は高くないが生命力が抜群に高い敵キャラのようだ。お気に入りのデザインのボトルで涼を取りつつ、気温の下がった本物の秋を待ちわびる。