青森県は太平洋、日本海、津軽海峡と三方を海で囲まれており、この3つの海が青森の日本酒に「多様さ」「透明感」「食中酒としての完成度」を与えています。地域ごとに水・米・気候が違うので、味わいにも個性があるのです。各地域で変わり種の日本酒も紹介していますのでぜひ最後まで読んでみてください。
目次
南部地方のおすすめのお酒と酒蔵紹介
まずは南部地方のおすすめのお酒と酒蔵をご紹介します。
おすすめのお酒:陸奥八仙(八戸酒造/八戸市)

画像引用:八戸酒造株式会社
陸奥八仙は八戸酒造(青森県八戸市)が造る、「香り・味・飲みやすさのバランス」を徹底的に磨いた日本酒です。“今この瞬間に美味しいと感じさせる設計力”が突出しています。
こだわりポイントは「香りをコントロールする」低温発酵であることです。陸奥八仙の最大の特徴は香りを出しすぎず、狙った位置に置く技術です。
低温でじっくり発酵させ、温度変化を細かく管理し酵母の暴れを抑えます。結果としてフルーティ、でも軽すぎない、飲み疲れしないのです。
また、“若さ・フレッシュさ”を活かす搾りと瓶詰めにもこだわっています。陸奥八仙は搾った後寝かせすぎず、フレッシュな段階で出荷します。熟成より「今いちばん美味しい瞬間」を優先します。さらに、生酒・火入れの使い分けが的確です。
生酒は瑞々しさ・香りが重視されます。火入れをすると安定感・料理対応力が向上します。
派手=生酒」ではなく、火入れでも“八仙らしさ”を失わないのが強みです。日本酒初心者やフルーティー系が好きな人にピッタリです。
酒蔵紹介:八戸酒造/八戸市


画像引用:八戸酒造株式会社
この蔵は1775年創業(約250年の歴史)で、江戸時代から続く老舗です。
建物そのものにも歴史があり、観光地としても価値があります。蔵の倉庫や木造・土蔵の建物(大正〜昭和初期に建てられたもの)が、国の登録有形文化財および地域の重要景観建造物に指定されています。
伝統を守りつつ、1990年代後半以降にブランド「Mutsu Hassen」を確立。フルーティーで軽快、かつキレのある「南部らしい酒」を現代に蘇らせました。
蔵見学や試飲が可能です。「昔ながらの造り」と「現代の味わいの両立」「地元素材へのこだわり」「歴史と建築としての価値」を兼ね備えた、南部地方を代表する名蔵です。
変わり種のお酒:陸奥八仙 限定 芳醇超辛 火入れ(むつはっせん)

八仙といえば「華やかでフルーティ」な香りが象徴ですが、この “芳醇超辛” は八仙の中でも異色の存在。
辛口、キレ重視、食中酒タイプ、芳醇で旨味の厚みもあるという、“八仙の香り系 × 辛口キレ系”を融合させた一本です。まさに名前の通り、“芳醇なのに辛い”矛盾を成立させたバランス系日本酒です。
八仙は麹づくりが緻密で、香りよりも味の厚みを意識しており、“芳醇”を作る麹の作り込みが特徴です。麹菌をしっかり米の中心まで食い込ませ旨味の核を作ります。
これにより、辛いのに旨味がしっかり残る“芳醇超辛”となります。また火入れならではの“落ち着いた味わい”も特徴的です。
生酒のようなパーンとした華やかさは控えめであり、若干の丸みが出ることで“芳醇”感が増します。食中向けに味が整えられた印象があります。
淡麗すぎるお酒が苦手な人に最適で、辛口が好きだけど“旨味も欲しい”人に好まれます。また、「八仙の派手さ × 辛口のキレ」を両立した一本なので、フルーティな八仙も好きだけど、食中酒もほしい人におすすめです。
このお酒を飲んで「日本酒に目覚めた」という人もいます。
津軽地方のおすすめのお酒と酒蔵紹介
続いては太宰治とゆかりのある弘前市がある津軽地方のおすすめのお酒と酒蔵紹介です。
おすすめのお酒:豊盃(ほうはい)(三浦酒造/弘前市)

こちらはスタンダードな豊盃とは違いますが、豊盃 ブルーラベルの写真です。
豊盃は津軽・弘前を代表する地酒であり、全国的な知名度がありながらも、小規模・職人型の酒造りを守る蔵として評価が高い銘柄です。派手さよりも「完成度の高さ」「飲み疲れしない美しさ」で支持されている、日本酒好きが最終的に戻ってくるタイプのお酒です。
豊盃最大の特徴は、酒米「豊盃米」そのものを蔵元が開発・栽培に関わったことです。地元農家と契約栽培し、香り・旨味・キレのバランスを最初から設計しました。つまり豊盃は「この蔵で、この酒を造るための米」から始まるお酒なのです。
また、仕込み水は岩木山系の柔らかくきれいな伏流水を使用しています。
津軽の厳しい寒さの中で発酵は自然にゆっくり進むと雑味が出にくいので味が細かく整います。香りが前に出すぎず、“静かで品のある味わい”が生まれます。
豊盃は日本酒が「好きになってきた」中級者以上の人に好まれます。初心者でも飲めますが、 “違いが分かり始めた頃”に真価が伝わるお酒です。
また、派手さより“完成度”を重視する人にもおすすめです。SNS映え・インパクトではなくバランス、飲み飽きのしなさ、精度の高さを評価する人に刺さります。
酒蔵紹介:三浦酒造/弘前市

画像引用:三浦酒造株式会社 豊盃 Hohai
三浦酒造は、昭和5年創業しました。現在は「三浦酒造株式会社」として運営されており、2020年11月にリニューアルしています。蔵は家族中心の小さな蔵で、「顔が見える酒造り」「少量丁寧仕込み」をモットーにしています。
大量生産ではなく、一本一本をきちんと造るスタイルです。「豊盃(ほうはい)」という銘柄名の由来には、かつて開発された酒米「豊盃米」と、津軽民謡のひとつ「ホーハイ節」からつきました。地域性・文化性を意識したネーミングです。
蔵の体制として、兄弟が自ら杜氏を務める「兄弟杜氏制」を採用しています。2000年代以降、蔵人を外部に頼むのではなく、自分たちで酒造りの質を追求する姿勢を貫いてきました。
毎年の味のブレが少なく、流行に振り回されない、「今年の豊盃も安心して飲める」と言われる理由がここにあります。「豊盃」は地酒ファンの間で評判が高く、品薄になりやすいこともあり、全国的に人気ですが、それでも量を絞って丁寧に造っているため、いわゆる“蔵の矜持”を感じる酒造元です。
津軽の中でも、「地域の米と水」「小仕込み」「造り手の顔が見える酒造り」を大事にしてきた蔵です。繊細さ・品質の高さで定評があります。
変わり種のお酒:豊盃 ん/”N”

画像引用:三浦酒造株式会社 豊盃
ラベルに大きく 「ん」。一見ネタのように見えますが、実際は豊盃の技術力と遊び心を試す“実験的・挑戦的ライン”として造られている、通好みの隠れ銘柄です。
定番の「豊盃=安定・王道」から一歩外れ、蔵の自由度が高い酒と言えます。名前のインパクトとは裏腹に、かなり“本気”の酒です。
制作過程の特徴は、あえて“豊盃米”を使わないことが多いです。通常の豊盃は「豊盃米」を軸にしていますが、「ん」は年によって華想い、他県産酒米などを使うことがあります。これは「米を変えたら、三浦酒造の味はどう変化するか」を探るためです。
また火入れ中心で、味の完成度を重視していることも特徴です。派手な生酒よりも、味のまとまり、余韻の美しさ、食中での安定感を優先しています。
飲み手の“舌”を信頼している酒です。豊盃が好きで「次の一歩」を探している人にピッタリです。定番を飲み尽くした人が「今日は“ん”にしようか」と選ぶ酒です。
また、日本酒の“設計思想”に興味がある人にもおすすめです。なぜこの米?なぜこの味?と考えながら飲むのが楽しいです。
下北地方のおすすめのお酒と酒蔵紹介
最後に下北地方のおすすめのお酒と酒蔵紹介です。
おすすめのお酒:関乃井(せきのい)(関乃井酒造/むつ市)

画像引用:有限会社 関乃井酒造
青森県むつ市下北半島唯一の酒蔵「関乃井酒造」が造る、“地元の暮らしとともにある日本酒”です。全国的な派手さやトレンド性よりも、「日々の食卓で、何杯でも飲めること」を最優先にしてきた、非常に実直な酒です。
下北半島は冬が長く厳寒で、海の幸(マグロ・イカ・ホタテ)が豊富です。関乃井は最初から「海の幸に負けない、でも主張しすぎない酒」として設計されており、下北という土地が酒質を決めているといっても過言ではありません。
制作過程のこだわりは、昔ながらの“手仕事”を重視していることです。手洗いに近い原料処理をしたり、人の感覚を頼りにした発酵管理をしていたりとオートメーション化を最小限に抑え、“人が酒を見て、触って、判断する”酒造りをしています。
また木槽(きぶね)搾りを使用しているのもこだわりの一つです。関乃井の象徴とも言えるのが、木製の槽(ふね)での搾りです。
圧力をかけすぎず時間をかけてじんわり搾ると雑味が出にくく、味が丸くなります。派手な香りは出ませんが、“角のない、落ち着いた旨味”が生まれます。燗酒が好き・これから試したい人におすすめです。
関乃井は燗で真価を発揮する酒が多いです。ぬる燗や上燗で旨味が自然に広がります。また、魚介中心の食生活の人にもピッタリです。
マグロ、イカ、ホタテ、塩辛、これらと合わせると、酒が「引き立て役」として完成します。
酒蔵紹介:関乃井酒造/むつ市

画像引用:有限会社 関乃井酒造
下北半島で唯一、そして本州最北端の造り酒屋です。
創業は明治24年(1891年ごろ)で、130年以上の歴史があります。蔵の酒造りは、今でも昔ながらの「木槽(きぶね)搾り」を行っており、ゆっくり丁寧に時間をかけてお酒を絞ります。
その分、香り・風味ともにしっかりした、地元向けの“本物の地酒”です。製品の多くは下北地域内で消費されるため、県外ではなかなか見かけない“地域密着型の隠れた逸品”。だからこそ、“地元の味”を守っている酒蔵とも言えます。
銘柄も比較的オーソドックス(普通酒〜純米吟醸〜大吟醸など幅広く)ですが、地酒らしい骨太な味わい、しっかりしたコクを特徴とします。 “下北の暮らしと食”に根付いた、地元のための蔵です。
大々的な宣伝や大量流通はせず、昔ながらの手法で丁寧に造られる「ローカルの味」が魅力です。
変わり種のお酒: 北勇(きたいさみ) 本醸造

画像引用:有限会社 関乃井酒造
北勇 本醸造は、関乃井酒造が長年培ってきた「地元で毎日飲まれる酒」 という思想を、最も分かりやすく体現した一本です。
吟醸のような華やかさも、純米の重厚さも主役ではありません。 “キレ・軽快さ・飲みやすさ”を重視した、実用性の高い酒それが「北勇 本醸造」です。
製造過程のこだわりは本醸造ならではの“設計されたキレ”です。北勇 本醸造は、米の旨味は控えめに、醸造アルコールを最小限・適切に添加し、後味は軽く、シャープです。
これにより飲み口が軽く、悪酔いしにくい酒質になります。また、火入れ前提で扱いやすさを優先している点も特徴です。
味の劣化が緩やかで、燗でも崩れにくく、家庭・居酒屋・宴席にピッタリ。晩酌量が多い人や、燗映えするので燗酒派・宴席派の人にもおすすめです。
北勇 本醸造はひとことで言うなら「下北の暮らしに溶け込む、最も実直な酒」です。記憶に残る感動はないかもしれませんが生活インフラのような一本です。
最後に
青森県の日本酒は、南部・津軽・下北という三つの地域の風土と食文化を反映した多様性が魅力です。
南部は海の幸に寄り添うキレのある食中酒、津軽は米と水を突き詰めた完成度の高い酒、下北は日々の暮らしに根ざした実直で燗映えする酒が育まれてきました。
同じ県内でも味わいも思想も異なり、土地を知ることで日本酒はさらに面白くなります。ぜひ近くに旅行に来た際には青森のお酒も楽しんでみてください。
