これを書いている一月下旬現在、相変わらず行きつけに行っては日本酒を飲んでいるが、特にこの時期は新酒を飲むことが多い。
新しい年に新しい日本酒を。特に印象に残っているお酒を紹介する。
目次
【1杯目】島根 板倉酒造 「天穏 新酒 しぼりたて純米」
板倉酒造は、島根の出雲に蔵をかまえている。日本酒発祥の地と言われることもあるほど、古くから酒造りが行われてきたこの町で、明治4年創業のこの酒造は150年に渡って日本酒を醸し続けている。
そんな板倉酒造の「天穏」の新酒。たとえるならメロンような甘い香りに、「水のよう」という比喩がぴったりのするする飲めるのどごし。米の甘みはもちろん、ミネラルっぽさを感じながら、後味はキレがよく、すぐに二口目を誘う。いつもの天穏とは異なる、新酒らしい軽快な味わいだ。
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ここで解説。日本酒の「新酒」とは、基本的な定義を言えば、「新しく造られたお酒」である。つまり、酒造年度と呼ばれる、7月1日から翌年の6月30日までに造られて出荷された日本酒を意味し、原料米が新米かどうかは問われない。
ただし、一般的に新酒と呼ばれるものはこの定義とは異なる。秋に収穫された新米を使って醸造したお酒のうち、「初めに搾ったもの」や「翌年の春までに出荷したもの」を新酒と呼ぶことが多い。この意味では、秋に穫れた新米を仕込み、11月くらいから翌年3月くらいまでの間に出荷されるものが当てはまるので、この時期はまさに新酒ラッシュだ。
日本酒は、熟成させて初めて、甘味・酸味・苦味が一体感を帯び、コクや深みが生まれる。新酒の味わいは、それらのお酒とは対照的。甘味・酸味・苦味がそれぞれ主張するフレッシュな味は「若々しさ」や「勢い」といった言葉がぴったり当てはまる。
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【2杯目】群馬 永井酒造 「水芭蕉 純米大吟醸 干支ボトル 巳」
尾瀬の天然水に恵まれた永井酒造は、群馬の人気酒蔵。最近は、瓶内二次発酵製法によるスパークリング日本酒や、10年以上寝かせたヴィンテージの日本酒、さらにデザート酒と呼ばれる貴醸酒など、次々と新しい商品を出しているのも人気の秘訣だ。
そんな永井酒造の人気商品「水芭蕉」の新酒は、令和7年、巳年の年明けに相応しい、ヘビがプリントされたボトル。水引がついているのも正月らしさを感じる。
グラスから立つ香りは白桃っぽい甘さ。米の由来の甘みが存分に出ている。
口に含むと、微かに甘酸っぱさを感じる、フルーティな風味が広がっていく。発泡感はなく滑らかな喉越しで、最後に軽い苦味が残っていく。
飲みごたえも感じつつ、すっきりした酸味のおかげで、むしろさっぱりした印象を持つ。単体でも飲めるし、食中酒にも最適。甘みがあるので、薄い味わいの肴だけでなく、中華系の濃いアテにも合うだろう。
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フレッシュな酒を飲むと、年明けから仕事に囲まれてやや疲労しはじめた精神が回復する。年明けに立てた目標などを思い出し、自身も少しだけフレッシュに戻る。今年も、自分もこれを読んでいる皆さんも、やりたいことを削ぎ落さずに活動できる、良い年になりますように。