ニューヨークワインの最新トレンド:前編
アメリカにおける注目のワイン産地であるニューヨーク州。
カリフォルニア州、ワシントン州に次いで第3位の生産量を産出するワイン産地です。
また、世界中でもっともワインを消費する国はアメリカであり、ニューヨーク州は世界屈指の大都会であるニューヨークシティ(NYC)を中心に、世界最大級のワイン市場を内包しています。生産地と消費地の物理的な近さがニューヨークワインの最大のアドバンテージであり、ワインの品質向上に大きく寄与しているのです。
これまで州内で消費されることが多かったニューヨークワインですが、その人気の高まりに比例して、国外への輸出量も増えているそうです。先日都内で開催されたニューヨークワイン&グレープ財団主催のワインセミナーに参加し、ニューヨークワインの最新トレンドを伺ってきました。
目次
ニューヨークワインの概要
ニューヨーク州のワイン産地は北緯41~43°。これは北海道・札幌市と同等の緯度で、ニューヨーク州が冷涼なワイン産地だということがイメージしていただけると思います。かつては生食・ジュース用のブドウ品種の栽培が盛んなニューヨーク州でしたが、近年はワイン用ブドウの割合が急速に増加しています。
ワイン産地は7つの生産地域に分けられ、11のAVA(American Viticultural Areas:米国政府認定ブドウ栽培地域)で構成されています。ワイナリー数は2020年現在471軒で、いずれも家族経営の小規模ワイナリーがほとんどです。
注目すべき産地は、カナダとの国境近くのフィンガー・レイクスAVAと大西洋岸にあるロングアイランドAVA。内陸に位置するフィンガー・レイクスは、より冷涼で冬の寒さが厳しいエリアですが、大きな湖の近辺はやや寒さがやわらげられています。一方、ロングアイランドは大西洋に面した半島に位置し、大西洋に流れ込む暖流がブドウ栽培に良い影響がもたらしています。
主要品種は、フィンガー・レイクスでは白ワイン品種であるリースリングが生産量の70%を占め、ロングアイランドではメルロ、カベルネ・フランなどのボルドー系の赤ワイン品種が主力となっています。
なぜ、ニューヨークワインが急成長しているのか?
ニューヨークワインは、冷涼な産地で作られるため、繊細でエレガントな味わいが魅力のひとつです。少し前までは、赤ワイン・白ワインを問わず、しっかりボディのきいた重めの印象のワインが人気の傾向にありました。しかしながら近年は、食事の味わいがライトで繊細なものが好まれるようになるにつれ、ワインもエレガントで洗練された味わいを求めるトレンドが顕著になっています。この傾向はニューヨークワインの評価を高めることにつながりました。
また、「地産地消」という価値観が東海岸にも浸透し、ローカル食材が注目されるようになるなか、NYCの最高級レストランでも地元のワインを取り扱うようになり、ワイン愛好家の間で冷涼な産地の特性を活かした高品質のワイン産地として人気を集めました。レストランやワインバーにワイン醸造施設を併設し、周辺のワイン産地からブドウを調達してワインを作る“アーバンワイナリー”と呼ばれる小規模生産者も増えていて、新しいものを好むニューヨーカーに人気を博しています。
NYCで人気のアーバンワイナリーのひとつBrooklyn Winery
さらに、他人の評価軸ではなく、自分が良いと思うものを愛用するミレニアム世代の台頭も、このトレンドを後押ししているようです。
ニューヨークワインの最新動向
セミナーでは、ニューヨークワインの最新動向もご紹介いただきました。
高級レストランでニューヨークワイン
NYCの高級レストランやシックなバーにおいても、ワインリストにはたくさんの種類のニューヨークワインがオンリストしています。ニューヨークワインのエレガントで澄んだテイストは、さまざまなジャンルの料理とも合いやすいのです。
ロゼワイン人気の定着
ニューヨーク州におけるロゼワインの人気はもはや定着化していて、ロゼワインは「夏の海辺で楽しむもの」から、年間を通じて販売され、消費されるものになりました。カジュアルに飲むイメージが先行しがちなロゼワインですが、温度の変化を楽しみながら前菜からメイン料理まで通して味わえるクオリティのものもあり、さまざまな生活シーンを彩るワインとしてニューヨーカーたちに愛されています。
注目の品種:カベルネ・フランが人気上昇中
赤ワイン品種であるカベルネ・フランは、フランスなどの生産国では、ほかの品種とブレンドすることが一般的です。しかし、ニューヨークではカベルネ・フラン単一品種でワイン生産され、華やかな香りの印象となめらかタンニンと緻密な酸のバランスで「薄うまワイン」の筆頭として注目されています。特にフィンガー・レイクスのカベルネ・フランは年々人気が高まっているそうです。
次回は、ニューヨークワインの二大産地について取り上げます。
取材協力
ニューヨークワイン&グレープ財団
GO-TO WINE http://gotowine.jp/