かつてブルゴーニュの主要品種だったアリゴテは、酸っぱくて青臭いブドウと呼ばれ、次第にシャルドネに改植されていきました。
そんなアリゴテは、実は造り方次第で、素晴らしいワインができるブドウです。
最近は、アリゴテの個性と可能性を信じ、注目する栽培者が増えてきました。
それに、近年の実験により、シャルドネよりも、熟成させた際のポテンシャルが高いことも判明しました。
今回は、高品質な注目すべき、アリゴテワインを紹介します。
目次
アリゴテとは?
アリゴテは、フランスのブルゴーニュ地方を中心に栽培されている白ブドウ品種です。
ブルゴーニュでは、シャルドネの次に栽培されている白ブドウ品種で、フランスの他には、耐寒性があるため、ブルガリア、ルーマニア、ロシア、モルドヴァや、カリフォルニアなどでも栽培されています。
早熟でシャルドネよりも早くに収穫期を迎えます。
病害虫にも強く栽培しやすい特徴があります。
樹勢が強く、房が大きく、密集していて、粒が大きく水分が多く、酸度の高いブドウです。
手入れを怠ると水っぽいワインになってしまいます。
アリゴテは、遺伝子的にピノ・ノワールとグーエ・ブランという古代品種の交配種です。
アリゴテ・ヴェール、アリゴテ・ドレという厳密には異なる2種をアリゴテと総称しています。
前者の方が粒がやや大きく酸味の溌剌とした味わいで、後者の方が粒が小ぶりで成熟すると黄金色になりリッチな味わいです。
基本的なアリゴテの香りは、フレッシュな青リンゴ、ライム、レモンといったフルーツの香り、熟度の高いものだと洋梨やリンゴの香りがします。
味わいは、溌剌とした酸味、キリッとしたキレのある味わいが特徴ですが、樽熟成をしたものや、シュールリーをしたものなどは、より味わい深いものになります。
近年の実験で10年から20年熟成させたアリゴテとシャルドネを比べた際に、アリゴテの方が酸が高いので、同じ熟成年数でも、若々しさを保っていたという結果が出ました。
アリゴテにも、造り方次第で、長期熟成のポテンシャルがあるということがわかりました。
ブルゴーニュでは17世紀頃から、その名が知られていて、
フィロキセラ禍までは、ブルゴーニュの主要品種として植えられていましたが、改植が進みほとんどがシャルドネに変わりました。
アリゴテは、取引価格が安いので採算が取れないため、畑の隅っこに追いやられ、水っぽくて青臭いブドウと拍車をかけ、不名誉なレッテルを貼られました。
そこで、アリゴテを語る上で、最も重要な人物オベール・ド・ヴィレーヌが、アリゴテの可能性を信じ、高品質なアリゴテのワインを世に発信し続けました。
そして、大きな反響があり、1998年にはアリゴテを使った白ワインAOC ブーズロンが認定されました。
この頃に一気に注目を浴び、現在は数々の生産者が高品質なアリゴテのワインを造っています。
ブルゴーニュ・アリゴテ / ドメーヌ・ルーロ
1830年から続くムルソーを代表するドメーヌ・ルーロ。
生産量はあまり多くなく、日本の市場ではあまり出回りませんが、非常に評価の高い造り手です。
ルーロのワインは下のレンジのワインのレベルが、他と比べてすごく高いように感じます。
フレッシュな青リンゴや、グレープフルーツのみずみずしい香り、カモミール、火打ち石のニュアンス、なめらかな口当たりに、コクのある果実味、フレッシュな酸とグレープフルーツの果皮のような心地よい苦味。
相性料理は、バンバンジー、鶏肉とカシューナッツの炒め物など中華とも相性抜群。
ブルゴーニュ・アリゴテ / コシュ・デュリ
1920年設立のムルソーを代表するドメーヌ。ノンフィルターで、長期熟成型の白ワインは、大人気で、高額ながらも争奪戦が繰り返されています。
最も人気の高いアリゴテと言っても過言ではないコシュデュリのアリゴテは、早飲みするにはあまりにも勿体ない素晴らしい出来栄えです。抜栓二日目が特に美味しかったです。
溢れんばかりのパイナップル、リコリスの甘やかな香りに、蜂蜜や、澄ましバター、ノワゼットのニュアンス。
豊潤な果実味にミネラル感、とてもコクの豊かなアリゴテで、酸はしなやかに広がっていきます。
相性料理は、とろりとした口どけを合わせて、熟成したモンドールに少し蜂蜜を滴らして。
ブルゴーニュ・アリゴテ / ピエール・イヴ・コラン・モレ
2005年に、マルク・コランの長男であるピエール・イヴがシャサーニュ・モンラッシェに立ち上げたドメーヌ。
ドメーヌとネゴスどちらもしていますが、ネゴスでもドメーヌのスタッフが選別や収穫を行うこだわりがあります。ワイン造りに関しては、プレモックスを避けるために、バトナージュを行わないのにも関わらず、彼のワインには、リッチなコクがあります。特徴的な蝋封も酸化を避けてのことです。
どのキュヴェも、完熟したブドウから齎される豊かなコクとテロワールからのミネラル感のバランスが素晴らしく、アリゴテも例外ではありません。
レモンキャンディ、洋梨、ヘーゼルナッツ、火打ち石、澄ましバターの香りに、濃厚な果実味、豊かだが穏やかな酸が余韻へと長く続く。とてもコクのあるアリゴテワインです。
相性料理は、オマールエビのソテー、ホタテのポワレなど旨味の強い魚介料理と。
ブーズロン / ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ
DRCの共同経営者であり、アリゴテ種の魅力を世に広めたドメーヌ・ド・ヴィレーヌは、オーベル・ド・ヴィレーヌによって1971年に設立されました。
アリゴテの素晴らしいワインを造り続け、1979年に地域AOCとして、ブルゴーニュ・アリゴテ・ブーズロンが認定され、1998年には村名AOCに昇格認定されました。
オーベル・ド・ヴィレーヌなしでは成し得なかった偉業です。
畑は、ブーズロン最北の日当たりのいい斜面にあります。
ブーズロンのアリゴテは、樹勢が低く、果皮が薄く小粒で、収穫期には黄金色に色付くので、「Aligoté d’Or黄金のアリゴテ」と呼ばれています。
グレープフルーツのコンフィ、アンズ、スイカズラ、蜜っぽさを感じる香りに、少しヴァニラのニュアンス、厚みのある果実味に、柑橘の果皮のような苦味があり、下支えのしっかりした酸がエレガントに広がる。
相性料理は、お寿司。特に鯖寿司は抜群の相性です。
モレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ・クロ・ド・モン・リュイザン・トレ・ヴィエイユ・ヴィーニュ / ドメーヌ・ポンソ
ブルゴーニュを代表するドメーヌ・ポンソは、1872年から続くモレ・サン・ドニのドメーヌです。
1932年からドメーヌ元詰めをブルゴーニュでいち早く始めた先駆け的存在で知られ、
クロ・ド・ラ・ロッシュの高品質なピノ・ノワールが、ディジョン・クローン113、114、115、667などブルゴーニュで栽培される80%以上のピノ・ノワールの起源です。
コート・ドール唯一のアリゴテを使用できる単独所有のプルミエ・クリュのモン・リュイザンでは、100年を超える古樹のアリゴテから、ワインを造っています。
レモンキャンディ、パッションフルーツ、塩気を感じるミネラル、アーモンドのような香りで、温度が上がるにつれて、クレーム・ブリュレのようなコクの豊かな香りがします。
果実味も豊かで旨味が濃く、酸味も豊か、塩気を含んだミネラルが旨味を伴って余韻まで長く続きます。
相性料理は、サーモンのミキュイ、ジロール茸とリードヴォーのフリカッセなど。
昔は軽視されていたアリゴテですが、今は見直されて、様々な国で造られ、有名ドメーヌの造るアリゴテは高値で取引されています。
高品質のアリゴテのワインを飲んだことのない方は、ぜひ試してみてください。